多くのワイン愛好家を魅了するピノ・ノワール。
他のブドウ品種にはない気品溢れる香りと味わいで、非常に高い人気を誇ります。
少しでもワインに興味を持っている方なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
フランスのブルゴーニュを代表するブドウ品種ですが、他の国や地域でも栽培されており、さまざまなスタイルのワインを生み出しています。
この記事では、ピノ・ノワールの基本や特徴にはじまり、ソムリエから見て「これはおすすめ」、「これは知っておきたい」と思える銘柄や生産者のものを24本チョイス。
一通り読めば主要なピノ・ノワールのワインを網羅できるので、あなたも「ワイン通」の第1歩を踏み出したことになりますよ。
少し長いですが、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
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※掲載されている価格は2022年06月15日時点のものです。
ワインの神様に祝福されたグレートヴィンテージ生まれ。
ミシュラン星付きフレンチ、ワインインポーターを経て、Oh my Wine!のライターに。
特にブルゴーニュとシャンパーニュの古酒を好むが、自分の生まれ年は高くてなかなか手が出ないのが悩ましいところ。
趣味は、ワイン売り場のパトロールをしながらのデパ地下巡り。
【高貴なブドウ品種】
ピノ・ノワールとは?
ピノ・ノワール(Pinot Noir)とは、フランスの銘醸地であるブルゴーニュを主要な産地とするブドウ品種。
数ある主要な黒ブドウ(赤ワイン用のブドウ)の中でも高貴な品種として有名で、世界一高価とされるブルゴーニュのロマネ・コンティ(1本が300万円を超えることも!)も、このピノ・ノワールから造られているのです。
また、シャルドネと並ぶシャンパーニュの主要なブドウ品種のひとつでもあります。
多くのワイン愛好家が最後に行き着くのはブルゴーニュワイン(=ピノ・ノワール)と言われますが、その理由は、ピノ・ノワール持つ気品ある香りと味わい。
「官能的」、「妖艶」とも表現されるその香りには、イチゴやチェリーなどのみずみずしい果実、スミレやバラといった花の香りに加え、野性的なスパイスのニュアンスも感じられます。
また、熟成するにしたがって、シャンピニョン(キノコ)やトリュフ、なめし革といった香りも混ざり合い、深い複雑味を帯びることに。
そして、繊細でエレガントな果実味と酸、そしてしなやかなタンニン(渋み)がその香りと相まって、えもいわれぬ味わいを生み出すのです。
しかし、美人薄命というか、ピノ・ノワールは栽培が難しいことでも有名。
冷涼な気候を好む非常に繊細な品種で、またブドウの果皮が薄いことから病害に弱く、気難しい品種と言われることも。
その一方で、栽培される土地のテロワール(個性)や造り手の哲学を反映しやすい品種でもあるので、多くのワイン愛好家たちを魅了するワインが、ピノ・ノワールから生まれているのもうなずけます。
ピノノワールの歴史は古く、4世紀ごろからすでに栽培されており、シャルドネやシラーなどの有名品種の祖先ということが判明しています。
また、突然変異しやすく、ピノ・ブラン(Pinot Blanc)やピノ・グリ(Pinot Gris)もピノ・ノワールから派生したブドウ品種です。
栽培される国や地域によって、ピノ・ノワールには異なる呼び名(シノニム)があり、下記に代表例を挙げておきます。
※ソムリエやワインエキスパートの試験を検討されている方には必須の知識です。
★イタリア:ピノ・ネロ(Pinot Nero)
★ドイツ:シュペートブルグンダー(Spätburgunder)
★オーストリア:ブラウブルグンダー(Blauburgunder)
【ソムリエ・チョイス】
おすすめ&押さえておきたいワイン24選
ここからは、本題のソムリエが選ぶおすすめのピノ・ノワールを24本ご紹介いたします。
価格や入手しやすさに加えて、ワイン好きならぜひ押さえておきたい銘柄や生産者を、下記の主要な生産国からピックアップ。
主要なアイテムを一通り網羅しているので、全部読めばあなたも「ワイン通」の道を歩み始めたことに。
もちろん興味のある所だけ読んでいただいても構いませんので、まずはワインのラベルを眺めながら気楽にお読みください。
【ピノ・ノワールの聖地】
フランス・ブルゴーニュ
ピノ・ノワールを代表する産地であり、「ピノ・ノワールの聖地」とも呼ばれるフランスのブルゴーニュ。
名だたる銘醸ワインが生まれ、世界中のワイン愛好家たちの熱い視線を集めています。
ご説明した通り、栽培が難しいピノ・ノワール。
冷涼な気候と石灰質や粘土石灰質の土壌を好みますが、ブルゴーニュはこれらの条件を見事に満たしている地域なのです。
また、ブルゴーニュの特徴として、畑や区画が細かく分けられていることが挙げられます。
それぞれに異なる個性を持ち、ワインの味わいに違いをもたらすのです。
同じピノ・ノワールから造られたワインでも、畑や生産者によってさまざまな表情を見せ、飲み手の心を揺さぶります。
【まず初めに試したいピノのお手本】
ルイ・ジャド
ブルゴーニュ ピノ・ノワール
【力強さが魅力の”王のワイン”】
ドルーアン・ラローズ
ジュヴレ・シャンベルタン
【”神に愛された村”の至高のワイン】
ミッシェル・グロ
ヴォーヌ・ロマネ
【世界トップレベルのピノ一大産地】
アメリカ・カリフォルニア
温暖な気候のカリフォルニアでは、繊細なピノ・ノワールの栽培は難しいのでは?
そう思われる方も多いかもしれませんが、カリフォルニアの中でもピノ・ノワールに適した地域があります。
主要な産地は、ソノマやサンタバーバラといった沿岸部のエリア。
カリフォルニアの海岸線は約1,300kmにもおよび、海からの冷たい風や霧が海沿いの畑の気温を下げてくれるのです。
フランスに肩を並べるトップクラスのピノ・ノワールを生み出し、コレクター垂涎の高価な希少ワインでも有名なカリフォルニア。
ひと昔前は、カリフォルニアの太陽をたっぷりと浴びて完熟した濃厚でボリューム感のあるピノ・ノワールが主流でしたが、現在は冷涼な気候を活かした、ブルゴーニュのような美しい酸のあるスタイルのワインも多く造られています。
【アメリカ・ピノのパイオニア】
カレラ
ピノ・ノワール セントラル・コースト
【ブルゴーニュに匹敵するエレガンス】
オー・ボン・クリマ
ピノ・ノワール イザベル
重厚なビンに三角形のラベルが印象的な、オー・ボン・クリマ。
創業者のジム・クレンデネンは、長髪をなびかせる身長190cmを超える大柄な男性ですが、その風貌とは裏腹に、造られるワインはカリフォルニア随一のエレガントなスタイル。
残念ながらジム・クレンデネンは、2021年に68歳の若さでこの世を去りましたが、彼の好んだスタイルはしっかりと引き継がれており、エレガントな酸と端正な果実味は健在です。
このワインの名前にもなっているイザベルは、実は長女の名前で、現在彼女は、セールスとして父の残したワイナリーを支えています。
ちなみに、長男の名前、ノックス・アレキサンダーを冠したワインもありますので、ご興味のある方はこちらから。
【全米で愛されるトップワイナリー】
ケンダル・ジャクソン
ヴィントナーズ・リザーヴ ピノ・ノワール
【冷涼な気候が生む繊細なピノ】
アメリカ・オレゴン
カリフォルニアのすぐ北に位置するオレゴン。
フランスのブルゴーニュとほぼ同じ緯度にあり、またカリフォルニアと同様、海からの冷たい風のおかげで冷涼な気候に。
現在では、栽培面積の約60%をピノ・ノワールが占める、世界でも有数の産地となっています。
また、ワイナリーの大半が年間生産量5,000ケース以下の小規模生産者。
そのぶん、丁寧なワイン造りが行えるので、より品質の高いワインを生み出しています。
【オレゴン・トップ生産者の入門編】
ドメーヌ・セリーヌ
ピノ・ノワール ヤムヒル キュヴェ
【オレゴンを表現する小規模生産者】
ケン・ライト・セラーズ
ピノ・ノワール ウィラメット・ヴァレー
【名門ルイ・ジャドの新たな挑戦】
レゾナンス・ヴィンヤード
ピノ・ノワール
【生き生きとした酸と果実味が魅力】
ニュージーランド
現在では、優れたピノ・ノワール(とソーヴィニョン・ブラン)の産地として有名なニュージーランドですが、注目が集まり始めたのは1980年代の後半になってからのことでした。
他の産地と同様、冷涼な気候のニュージーランドですが、特にマーティンボローというエリアの土壌と気候が、ブルゴーニュに似ていたことから、本格的なピノ・ノワールの栽培がスタート。
1990年代には、国際的にその品質の高さが知られるようになり、現在に至ります。
【NZのピノを知るならこの1本】
アタ・ランギ
クリムゾン ピノ・ノワール
【日本人夫婦が造る高評価ピノ】
キムラ・セラーズ
マールボロ ピノ・ノワール
【日本でも圧倒的人気を誇る】
シレーニ
セラー・セレクション
ピノ・ノワール
【濃厚なワインだけじゃない】
オーストラリア
広大な面積を誇るオーストラリアでは、温暖~冷涼な気候まで、エリアごとにさまざまなスタイルのワインが造られています。
カベルネ・ソーヴィニョンやシラーズなどの、しっかりしたボディの濃厚なワインが有名ですが、ピノ・ノワールも負けてはいません。
ヤラ・ヴァレーやタスマニアといった冷涼な地域で有名で、ハイレベルなピノ・ノワールが造られています。
近年は、高価なプレミアムワインも多く生産されるようになってきていますが、気軽に楽しめるデイリークラスのものもたくさん揃っており、総じてレベルが高いので、安心して購入できます。
【オーストラリアのロマネ・コンティ】
コールドストリーム・ヒルズ
ヤラ・ヴァレー ピノ・ノワール
【透明感のあるピュアな果実味が魅力】
デヴィルズ・コーナー
ピノ・ノワール
【納得の品質&価格がコンセプト】
ローガン・ワインズ
ウィマーラ ピノ・ノワール
【コストパフォーマンスでは無敵】
チリ
スーパーやコンビニで見かけることも多いチリのワイン。
手軽に試すことができる一方で、「安かろう悪かろう」とうイメージを持たれている方もいるかもしれません。
しかし、コストパフォーマンスはそのままに、品質は年々向上しています。
事実、2015年以降の日本への輸入量は、フランスを抜いてチリが第1位を獲得し続けており、そのクオリティの高さや安定感が支持されていると言えるでしょう。
近年は、フランスのブルゴーニュを思わせるエレガントなスタイルのワインも増えてきており、今までのイメージがひっくり返ってしまうかもしれません。
【プレミアム・チリの代名詞】
モンテス
アルファ ピノ・ノワール
【ちょっと贅沢したいときの1本に】
ヴィーニャ エラスリス
エステート ピノ・ノワール
【コスパ◎毎日飲みたい優しい味わい】
コノスル
オーガニック ピノ・ノワール
スーパーでもよく見かける、ラベルに描かれた自転車がトレードマークのコノスル。
いろいろな価格帯のワインをリリースしていますが、このワイナリーの真骨頂は、やはり低価格帯のもの。
とりわけ、ここでご紹介するオーガニックシリーズは、有機栽培ブドウ100%、フレンチオークの樽も使用した丁寧な造りにも拘わらず、税込み¥1,000前後で購入できるという驚異的なコストパフォーマンス。
完熟したブドウの果実味がしっかりと感じられる優しい味わいで、気づけばスルスルと1本飲んでしまうナチュラルさが魅力です。
また、コノスルからはさまざまなブドウ品種のワインも発売されており、テスティングの勉強をする際にも重宝しますよ。
【マイナーながら実は狙い目】
ドイツ
かつては、ブドウ栽培の北限と言われていたドイツ。
しかし、近年は温暖化の影響もあり、イギリスでもブドウ栽培が可能に。
その恩恵(?)や、栽培・醸造技術の進歩もあり、ドイツでも完熟したシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)ができ、繊細な酸と果実味豊かなワインが多く生産されるようになりました。
人気や需要の高さから、価格の高騰が続くブルゴーニュに比べ、ドイツは比較的リーズナブルな価格で高品質なワインを見つけられるので、狙い目の産地と言えます。
【ドイツ・ピノのトップ生産者】
フリードリッヒ・ベッカー
シュペートブルグンダー
【サントリーとタッグを組む名門】
ロバート ヴァイル ジュニア
シュペートブルグンダー
【800年以上の歴史を誇る老舗】
クロスター・エーバーバッハ
ラインガウ シュペートブルグンダー
【ポテンシャルは十分】
日本
日本ではほとんど栽培されていないピノ・ノワール。
しかし、その歴史は古く、1881年に初めてドイツからシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)が持ち込まれたと言われています。
栽培地の多くは長野県に集中していますが、新たな産地として北海道の余市が注目を集めています。
ジャパニーズ・ウィスキーで一躍有名になった余市ですが、フランスのブルゴーニュとほぼ同じ緯度に位置し、昼夜の寒暖差が大きく、夏に雨が少ない気候がブドウ栽培にマッチしているのです。
今はまだ発展途上ですが、高いポテンシャルを秘めていると言われており、今後が楽しみな産地と言えます。
【注目の産地・余市が生む高品質ピノ】
グランポレール
北海道余市 ピノ・ノワール
【極少量生産のプレミアムワイン】
高畠ワイン
ゾディアック ピノ・ノワール
【長野ワインのパイオニア】
ヴィラデスト・ワイナリー
ピノ・ノワール
エッセイストであり画像の玉村豊男氏が開いた、ヴィラデスト・ワイナリー。
近年、新興のワイナリーが数多く参入する長野県で、2003年からワイン造りを行ってきたこちらのワイナリーは、長野ワインの牽引してきたパイオニア的存在です。
この地の風土を最大限に引き出すワイン造りが特徴で、国内トップクラスのワインを生み出しています。
少量ながら2006年からリリースしているこのピノ・ノワールは、ワイン専門誌でも高い評価を獲得しており、この土地の風土を反映する繊細で美しいスタイルです。
赤いベリー系のアロマにエレガントな酸が寄り添い、心地よい味わいが楽しめます。
終わりに
ワイン愛好家の間でも、とりわけ人気の高いピノ・ノワール。
繊細で気難しいブドウ品種の特徴や魅力にはじまり、ワイン好きなら知っておきたい銘柄・生産者までを見てまいりました。
やはりブルゴーニュに関心が集まりますが、そのほかの国や地域でも、実に個性豊かなワインが造られています。
ぜひ、いろいろなスタイルのワインを試して、ご自分の好みをタイプを見つけて、より充実したワインライフを送っていただければと思います。
その際に、この記事が微力ながらお役に立てれば幸いです。