ワインを楽しむうえで重要なポイントのひとつが、ブドウ品種。
自分の好みのタイプを知ったり、お店でワインを選ぶ際の基準になるからです。
数多くあるブドウ品種の中でも、まず最初に知っておきたいのが「シャルドネ」です。
もっとも有名な品種のひとつで、みなさんの中にも一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
シャルドネは世界中で栽培されており、気軽に楽しめるデイリーワインから、1本100万円を超えるような超高級ワインにまで使用されています。
しかし、国や地域、造られる方法によって、その味わいに大きな違いが出てくるのが、このシャルドネ。
面白い反面、なかなか捉えどころのない品種と言えます。
そこでこの記事では、シャルドがどのようなブドウ品種なのか、その特徴やできるワインのタイプ、合わせる料理について解説。
そして、ソムリエの視点から、ぜひ試していただきたいワインを、シャルドネの5つの主要な生産国からピックアップしました。
価格や味わいも含めて、各国から初級・中級・上級を各1本ずつ、計15本をご紹介いたします。
少し専門的な内容も含まれますが、一通り読めばシャルドネというブドウ品種が理解でき、ワイン好きなら知っておきたい生産者も押さえられますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
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★【産地別/初級~上級】ソムリエが選ぶおすすめワイン15選はこちら
※掲載されている価格は2022年06月07日時点のものです。
ワインの神様に祝福されたグレートヴィンテージ生まれ。
ミシュラン星付きフレンチ、ワインインポーターを経て、Oh my Wine!のライターに。
特にブルゴーニュとシャンパーニュの古酒を好むが、自分の生まれ年は高くてなかなか手が出ないのが悩ましいところ。
趣味は、ワイン売り場のパトロールをしながらのデパ地下巡り。
シャルドネとは?
シャルドネ(Chardonnay)とは、白ブドウ(=白ワイン用のブドウ)の中でももっとも有名で、「白ワインの女王」とも呼ばれるブドウ品種。
辛口ワインの代名詞であるシャブリや、時には100万円を超える価格で取引されるモンラッシェという高級ワインもシャルドネから造られています。
また、きめ細かな泡立ちが美しいシャンパーニュにとっても主要なブドウ品種であり、活躍の場の広い万能選手です。
その高い知名度にたがわず、シャルドネの栽培面積は世界第5位、白ワイン用品種としては世界第2位を誇り、アメリカ、オーストラリア、チリ、そして日本をはじめ、世界41ヶ国で幅広く栽培されています。
(※2017 OIVより)
シャルドネの原産地は、フランスの銘醸地であるブルゴーニュと言われており、そのルーツは、赤ワイン用のブドウ品種として有名なピノ・ノワールとグーエ・ブラン(かなりマイナーな品種)との自然交配ということが判明しています。
【産地の個性を反映する】
シャルドネの特徴は?
多くの国や地域で栽培されており、シャブリなど、みなさんが耳にしたことのあるワインにも使用されているシャルドネ。
しかし、シャルドネという品種自体の香りや味わいの特徴は実はあまりなく、個性がないのが個性というのが正直なところです。
世界中で愛され、知名度ももっとも高いのに不思議ですね。
シャルドネが世界中に広まった背景には、このブドウ品種の持つ環境への適応力の高さにあります。
目立った特徴がない代わりに、温暖~冷涼な地域で幅広く栽培可能で、比較的病害にも強いのがシャルドネの強みです。
そして、ニュートラルな個性の分、栽培される土地の気候や土壌の特性を色濃く反映します。
これが、ブドウ品種としてのシャルドネの最大の「特徴」と言えるでしょう。
温暖な気候の元では、完熟した桃やパイナップル、バナナなどのトロピカルフルーツのアロマが豊かに。
冷涼な地域では、青りんごや柑橘系の果物、白い花のニュアンスを感じることができます。
そしてざっくりとですが、気候で下記のようにタイプ分けできるので、覚えておくと便利です。
★冷涼な気候 ≓ フレッシュ&エレガントなタイプ
★温暖な気候 ≓ ボリューム/コクのあるリッチなタイプ
また、土壌もワインの味わいに重要な役割を果たしますが、少しイメージしづらいかもしれません。
そこで登場するのが、辛口白ワインの代名詞であるシャブリです。
シャブリが造られる地域の土壌は、約1億5千万千前に堆積した牡蠣の貝殻の化石が多く含まれている石灰質で、その味わいはとてもミネラリーなものになり、香りには火打石のような鉱物のニュアンスが見つかります。
このように、栽培される国や地域によってさまざまな表情を見せるシャルドネは、ワイン造りにおけるもっとも重要な要素のひとつであるテロワールを見事に表現してくれる、大切な代弁者と言えるでしょう。
※テロワールとは、ブドウ畑を取り巻く気候、土壌や地勢などのすべての自然的要因。
【スタイルはさまざま】
造り方でも変わる香り・味わい
ここからはワイン造りに関する、少しテクニカルな内容を解説。
気候や土壌の特徴が、香りと味わいに現れるとご説明しましたが、造り方(醸造方法)によっても、できるワインのスタイルはさまざまです。
まずは、発酵や熟成について。
ワインができるまでに、果汁をアルコール発酵させて、できたワインを熟成させるプロセスがあります。
この発酵/熟成の時にステンレスタンクを使うか、樽を使うかで、できるワインのスタイルに大きな違いが生まれることに。
まず、ステンレスタンクを使用する場合は、フレッシュで果実味と酸が豊かなスタイル。
また、樽を使用すれば、樽由来のバニラや香ばしいトーストの香りがする、リッチでコクのあるしっかりとしたワインに仕上がります。
【さらに進んだ知識】
マロラクティック発酵
もうひとつ、ソムリエレベルの話になりますが、醸造のプロセスの中に、マロラクティック発酵(MLF : malolactic fermentation)という工程があります。
この工程を行うか行わないかは生産者によって分かれますが、やはり味わいに決定的な違いが現れるもののひとつです。
マロラクティック発酵とは、ワインの酸味を穏やかにし、香りや味わいをリッチでまろやかにする技術のこと。
”発酵”と名がついているので、菌が登場することになりますが、このマロラクティック発酵では、みなさんもよくご存じの乳酸菌が活躍します。
ワインの酸味のもとである、ブドウ果汁に含まれるリンゴ酸に、乳酸菌を作用させることによって、乳酸と炭酸ガスに分解(※)。
これにより酸はやわらぎ、新たに生まれた乳酸によって、ワインにはヨーグルトやバターといった乳製品のようなまろやかなニュアンスが付与されます。
また、MLFは樽熟成との相性がよく、セットで用いられることが多い醸造技術です。
※参考:COOH-CH2-CHOH-COOH → CH3-CHOH-COOH + CO2
【タイプ別に解説】
シャルドネに合わせたい料理
美味しいワインには、やはり美味しい料理を合わせたくなるもの。
ご説明した通り、シャルドネのスタイルは実にさまざまなので、何を基準に料理をチョイスしたらよいかわからないという方も多いはず。
ポイントは、下記の2つのタイプに分けて大まかなイメージを頭に入れておくこと。
★フレッシュでエレガントなスタイル
前菜全般やメインの魚料理(ソテーやムニエルなど)
★樽使用のボリューム感のあるリッチなスタイル
バターやクリーム系のコクのあるソースを使用した魚料理、鶏や豚といった白身の肉料理
もし、レストランやワインショップで迷ったときには、ソムリエに相談するのが一番。
好みのタイプと予算を伝えれば、ソムリエが渾身の1本をチョイスしてくれるはずです。
また、だんだんと知識や経験が増えてくれば、ソムリエとあれこれ相談しながら選べるようになりますし、そうした時間もワイン愉しみのひとつになるでしょう。
【産地別/初級~上級】
ソムリエが選ぶおすすめワイン15選
シャルドネについて一通りご説明してまいりましたが、ここから本題のソムリエ・チョイスのおすすめ15本をご紹介いたします。
バラエティーの豊富さもシャルドネの魅力のひとつですが、幅広い生産国や価格帯を考えると、ちょっと絞り切れないですよね。
そこで、主要なシャルドネの生産国であるフランス、アメリカ、オーストラリア、チリ、そして日本の5ヶ国をピックアップ。
価格や味わい、入手のしやすさも含めて、各国から初級・中級・上級の3本、合計15本をチョイスいたしました。
各ワイナリーの情報や、合わせやすい料理も記載しておりますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
各国のリンクは下記をクリック!
【世界最高峰のシャルドネの産地】
フランス
ワイン大国フランスの中でも、シャルドネの聖地とも言われているのが、ブルゴーニュ地方。
冒頭で登場したシャブリやモンラッシェといった世界的に有名なワインが数多く生産されています。
フレッシュなタイプから重厚な味わいのものまで、造り手によってスタイルはさまざまですが、共通するのは、ブルゴーニュ地方の冷涼な気候がもたらすエレガントな酸。
この酸味を体験すれば、他の国で造られるシャルドネとの違いがよくわかりますので、ワインを勉強する上でのポイントにもなります。
こちらでは、ブルゴーニュのシャルドネはどのようなものか?という疑問に答えてくれる、著名生産者によるお手本のようなワインをピックアップしましたので、さっそく見ていきましょう。
【ブルゴーニュ入門に最適】
メゾン・ジョセフ・ドルーアン
ラフォーレ ブルゴーニュ・シャルドネ
1880年創業の老舗、ジョセフ・ドルーアン。
ドメーヌもの(自社畑)とメゾンもの(買いブドウ)を展開するブルゴーニュ大手のひとつながら、120年以上にわたり家族経営を続けてきた名門です。
こちらでご紹介するのは、ラインナップの中でももっともスタンダードなメゾンもの(買いブドウ)のシャルドネ。
さまざまな優良地区のブドウをブレンドし、シャルドネが表す”ブルゴーニュらしさ”を非常にリーズナブルに楽しめる1本。
フレッシュな果実のアロマと生き生きとした酸に、軽すぎないボディが、ブドウのポテンシャルを感じさせます。
フレンチやイタリアンの魚料理だけでなく、天ぷらをはじめとした和食との相性も抜群。
ブルゴーニュに興味はあるけど高そう…。
そう思っている方にぜひ飲んでいただきたい、ブルゴーニュ入門にぴったりのワインです。
【必ず飲んでおきたいシャブリの名門】
ドメーヌ・ウィリアム・フェーヴル
シャブリ
辛口白ワインの代表格、そしてもっとも知名度の高いワインであるシャブリ。
数多くの生産者がひしめいていますが、その中でも名門にして屈指の造り手である、ウィリアム・フェーヴル。
さまざまなスタイルのシャブリが生産されていますが、この造り手のものはまさにお手本と呼べる味わい。
こちらは、ドメーヌもの(自社畑)の基本となる1本。
フレッシュさとミネラル感を大切にするため、樽とステンレスタンクを併用しています。
輝きのあるやや薄いイエローの色調が美しく、レモンなどの柑橘類やピーチのアロマに加え、フローラルなニュアンスも。
シャープな酸味と、シャブリらしいミネラルがしっかりと感じられるレベルの高い1本です。
前菜から魚料理(特に酸味のあるソース)が好相性。
和食ではお造りなどにも合わせられる繊細さを併せ持っています。
【ブルゴーニュのエレガンスを体感】
オリヴィエ・ルフレーヴ
ピュリニー・モンラッシェ
ブルゴーニュでもトップクラスの白ワインとされる、ピュリニー・モンラッシェ。
同じエリアからは、冒頭でご紹介したモンラッシェ(100万円を超えることも!)も生み出されており、飲む前から心躍らされるワインです。
こちらでご紹介するオリヴィエ・ルフレーヴは、ワイン愛好家垂涎の生産者であるドメーヌ・ルフレーヴの当主だった故・ヴァンサン・ルフレーヴの甥にあたります。
ドメーヌ・ルフレーヴを思わせる彼のワインは、エレガントな酸と硬質なミネラルが特徴。
柑橘類のアロマに、抑制のきいた樽の香りが溶け合い気品漂うスタイルで、ブルゴーニュのエレガンスを体感したい方は、避けては通れない1本です。
魚料理全般、オマールエビなどの高級食材を使用したメインとぜひ組合わせたいワインと言えます。
【フランスに並ぶシャルドネ大国】
アメリカ
ワインの世界では、伝統的にワインを造ってきたフランスをはじめとするヨーロッパを「旧世界」、アメリカやオーストラリアなどの新興国を「新世界」と呼んでいます。
こちらでご紹介するアメリカは、白・赤ともに世界レベルのワインを多く生み出す「新世界」の筆頭に上がる国。
とりわけカリフォルニアのナパ・ヴァレーやソノマは、高品質なシャルドネの産地として有名で、プレミアムワインと呼ばれる高価なものも多く存在します。
カリフォルニアワインを一躍有名にしたエピソードに、1976年にフランスで開かれた「パリスの審判」と呼ばれる”事件”があります。
フランスVSカリフォルニアのブラインドテイスティング(銘柄を伏せた状態で試飲し評価すること)で、白、赤ともにカリフォルニアワインが、フランスのトップワインに勝利。
「フランスでしか高品質なワインは造れない」という、それまでのワイン業界の通説を覆したのでした。
カリフォルニアのシャルドネと言えば、一昔前はしっかりとしたボディでアルコール度数も高い、樽の効いたリッチなスタイルが目立ちましたが、近年はブルゴーニュのようなエレガントでフレッシュなタイプが多くなってきたように感じます。
【全米で愛されるお値打ちワイン】
ロバート・モンダヴィ
ウッドブリッジ シャルドネ
「カリフォルニアワインの父」と呼ばれる、ロバート・モンダヴィ。
1960年代前後、当時のカリフォルニアではクオリティの低いワインがほとんどでしたが、そこで立ち上がったのがモンダヴィ氏でした。
伝統的な手法に加え、最新の醸造技術や設備を導入し、高品質のワインを生み出すことに成功。
その後は、世界最高峰のボルドーワインであるシャトー・ムートン・ロートシルトとタッグを組み、これもまた世界的な人気を博す「オーパス・ワン」をいうワインをリリース。
カリフォルニアを代表する造り手として、世界にその名を知られることとなりました。
こちらのウッドブリッジ・シリーズのワインは、スーパーなどでも気軽に購入できるデイリーワイン。
税込1,000円前後のワインとは思えない完成度で、さすがはカリフォルニアNo.1のワイナリーだと納得です。
温暖なカリフォルニアの気候らしく、熟したリンゴやトロピカルフルーツのニュアンスが感じられ、ボリューム感のある味わいが特徴。
冷蔵庫で冷やした温度で前菜とスタートし、徐々に温度が上がったところでメインの魚料理やライトな味付けの豚や鶏に合わせれば、普段の食卓がグっと華やぎますよ。
【オバマ元大統領もお気に入り】
ケンダル・ジャクソン
ヴィントナーズ・リザーヴ・シャルドネ
1982年創業のケンダル・ジャクソン。
翌年には、今回ご紹介するヴィントナーズ・リザーヴ・シャルドネが初リリースで、いきなりワインコンクールのプラチナメダルを受賞。
これを皮切りに数々の賞を獲得し、1990年代にはワインコンクールで最多受領歴を誇るワイナリーへと成長。
現在はカリフォルニア最大規模のワイナリーを4つ所有し、世界60ヶ国に輸出するなど、躍進を続けています。
また、このワインは21年連続で全米売上No.1を誇り、さらにオバマ元大統領のお気に入りワインとしても有名。
雑誌の取材でオバマ元大統領の自宅を紹介した際に、キッチンに置かれていたのがこのシャルドネ。
一躍、「大統領御用達ワイン」として脚光を浴びたのでした。
さまざまなエリアの畑から集められたシャルドネからは、フレッシュな柑橘類とマンゴーをはじめとしたトロピカルなアロマが絶妙なバランスで感じられます。
樽を使用したしっかりとしたボディに、味わいもコクとボリューム感があるので、バターやクリームをたっぷりと使った魚料理や、白身の肉量と抜群の相性です。
【フランスに勝利した伝説の白】
シャトー・モンテレーナ
シャルドネ
この章の初めにご紹介した”事件”、「パリスの審判」。
誰もがフランスの勝利を信じて疑わなかったこの対決で、見事に白ワイン部門の第1位を獲得したのが、このシャトー・モンテレーナのシャルドネ。
これを機に、カリフォルニアワインが持つポテンシャルの高さに、世界の注目が集まりました。
シャトー・モンテレーナは、ナパ・ヴァレーの中でも冷涼なエリアのブドウを使用したエレガントなスタイル。
カリフォルニアで樽熟成した濃厚でリッチなタイプが圧倒的主流であった時でも、酸と果実味を大切にした繊細な味わいを守りました。
マロラクティック発酵はせず、ステンレスタンクでの発酵。
樽熟成も、香りが強く影響する新樽の使用率を押さえて、ブドウ本来の風味を重視しています。
こうしたブレないワイン造りの姿勢が、フランス勢を抑えて第1位を獲得した理由かもしれません。
前菜~魚のメインまで1本で通せる均整の取れたボディですが、やはり濃厚なものよりも繊細な味付けのものがよいでしょう。
【多種多様なスタイルが魅力】
オーストラリア
気候によってさまざまなスタイルになるシャルドネ。
広大な国土を持ち、冷涼~温暖な気候に恵まれるオーストラリアでは、ひとつの国の中でバラエティー豊かなワインが生産されています。
冷涼~温暖な気候の各エリアで非常に質の高いシャルドネが造られており、産地ごとの味わいの比較も面白いポイント。
また、近年人気の高い自然派ワインの生産も盛んで、多種多様なスタイルがオーストラリアのシャルドネの魅力と言えるでしょう。
一昔前のカリフォルニアのシャルドネと同様、オーストラリアでも樽の効いたリッチなスタイルが好まれた時代がありましたが、現在ではエレガントなスタイルへとシフトしています。
【オーストラリアNo.1の品質】
ジェイコブス・クリーク
シャルドネ
ジェイコブス・クリークの誕生は、19世紀の移民時代まで遡ります。
1846年、ドイツから移住してきたヨハン・グランプが、バロッサ・ヴァレーの中心部を流れるジェイコブス・クリーク沿いに土地を購入、翌年にブドウ畑を開墾し、歴史がスタートしました。
現在では、オーストラリアNo.1ワインブランドとして世界中で親しまれています。
こちらは、ジェイコブス・クリークのベーシックラインのシャルドネ。
多くのスーパーや酒販店でも購入でき、デイリーに楽しめる価格もうれしいところです。
レモンなどの柑橘類のフレッシュな香りに、ピーチやメロンといった甘いニュアンスが感じられます。
また、バランスのとれたミディアムボディで、ほんのりと樽のフレーバーもあり、リーズナブルな価格帯ながらしっかりした味付けの前菜~メインにも合わせられる味わいが魅力です。
【ブルゴーニュを思わせる繊細な酸味】
ペンフォールズ
BIN 311 シャルドネ
上記のジェイコブス・クリークと同様、南オーストラリアの移民時代にスタートした、ペンフォールズ。
1844年、イギリスから移り住んだ医師、クリストファー・ローソン・ペンフォールド博士が、医療用に酒精強化ワイン(※)を造り始めたのが、ワイナリーの始まりです。
オーストラリア国内の市場を拡大していき、その後「グランジ」と呼ばれるプレミアムワインを発表し、オーストラリアを代表するワイナリーへと発展を遂げました。
※酒精強化ワインとは、ワインを造る途中でアルコールを添加し、保存性を高めた高アルコール度数のワインのこと。
ペンフォールズでは、自分たちのスタイルにあうブドウにフォーカスし、エリアやブドウ品種に縛られないワイン造りをしています。
BIN 311 シャルドネは、淡いイエローでレモンやグレープフルーツの柑橘のアロマに、ほのかにピーチなどの甘いニュアンス。
シャープな酸とミネラルが特徴で、まるでブルゴーニュのシャルドネのような出来栄えです。
合わせる料理は、サーモンのムニエルなどの王道のフレンチがぴったりですが、和食だと塩やレモンでいただく天ぷらもおすすめです。
【米×豪が生んだプレミアムなシャルドネ】
ルーウィン・エステート
アートシリーズ・シャルドネ
オーストラリアを代表するプレミアムワインを生み出す、ルーウィン・エステート。
1973年に、デニス&トリシア・ホーガン夫妻によって設立されました。
アメリカの章でご紹介した「カリフォルニアワインの父」、ロバート・モンダヴィ氏がオーストラリアを訪れ、高級ワインに適した土地を求めていた時に見出したのが、ホーガン夫妻の所有する農地でした。
その後、モンダヴィ氏の指導の下、夫妻はブドウの植樹・栽培を始めることに。
そして、今回ご紹介するこのアートシリーズ・シャルドネの初ヴィンテージの1980年が、イギリスの権威あるワイン専門誌で「世界最高のシャルドネ」に選出され、一躍脚光を集めることとなったのです。
また、ルーウィン・エステートでは、ワインをアートとして捉え、このアートシリーズのラベルデザインを、毎年異なるオーストラリアの若手アーテイストらに依頼。
個性的なデザインも相まって、世界的な人気を集めています。
ライムやレモン、ピーチのアロマに、カルダモンなどのスパイスや樽由来の香ばしいアーモンドのニュアンス。
樽熟成によるしっかりとしたボディで、凝縮した果実味と豊富なミネラルが輪郭を造っています。
しっかりとしたソースの魚料理、重厚なボディなので鶏や豚全般にも合わせやすい1本です。
【高品質でコスパも最強】
チリ
スーパーやコンビニの店頭にも多く並ぶチリワイン。
とても身近なワインであり、2015年以降の日本への輸入量は、フランスを抜いてチリが第1位を獲得し続けています。
手軽に飲める一方で、「安いワイン」で「品質はそこそこ」といったイメージを持たれる方も多いかと思います。
実際クオリティ面で考えると、ピンからキリまでというのが正直なところなので、値段の高い安いにかかわらず、きちんと生産者を選ぶことが大切です。
近年は、高品質でフランスを彷彿とさせるエレガントなスタイルのワインが増え、改めてチリのポテンシャルの高さが見直されているので、これを機会にチリワインの本当の魅力を体験してみてはいかがでしょうか。
【デイリーながら味わいはお値段以上】
ヴィーニャ エラスリス
エステート シャルドネ
1870年創業と150年以上の長い歴史を誇るチリの名門、ヴィーニャ・エラスリス。
チリでもトップクラスの産地と知られる冷涼なアコンカグア・ヴァレーをほとんど所有しており、世界レベルのワインを数多く生み出しています。
とてもリーズナブルな価格のワインが目立つチリワインの中では、”ちょっといい”デイリークラスといったところの、このエステート シャルドネ。
しかし、その差は歴然で上品で活き活きとした酸と、パイナップルやパッションフルーツといった甘いニュアンスが溶け合います。
発酵ではステンレスタンクがメインですが、フレッシュ感にほのかに漂う樽のニュアンスが特徴で、価格以上の味わいが魅力です。
【果実味と樽のバランスが素晴らしい】
モンテス
アルファ シャルドネ
チリワインの中でもっともメジャーなワイナリーのひとつである、モンテス。
醸造家のアウレリオ・モンテス氏をはじめとしたワインビジネスのスペシャリスト4人が、1988年に立ち上げました。
4人全員がチリ人であり、チリが持つポテンシャルを追求し、世界中で愛されるワインを目指したのです。
モンテスの中核をなすアルファ・シリーズのこのシャルドネは、パイナップルやバナナの甘いアロマにはじまり、バターのようなリッチなニュアンスが魅力。
香ばしい樽の香りと共に、ボリューム感のある果実味と余韻が楽しめます。
バターやクリームをたっぷりしようした魚料理、しっかりした味付けの鶏や豚も好相性です。
ちなみに、モンテスの造るワインのすべてのラベルには天使が描かれていますが、創業者のひとりであるダグラス・ムライ氏が、交通事故から奇跡的に生還した時に、天使の存在を感じたというエピソードから。
【シャブリの名手が生むプレミアムチリ】
ビーニャ ウィリアム フェーヴル
チャカイ シャルドネ
フランスの章で、「シャブリの名門」としてご紹介したウィリアム・フェーヴル。
フェーヴル氏が、チリでブドウ栽培に理想的な土地を探す中、5年の歳月をかけてたどり着いたのがヴィクトール・ピノ氏の所有する畑でした。
そして1990年、この2人が手を組み生まれたのが、ビーニャ・ウィリアム・フェーヴルです。
ワイナリーの畑は、マイポ・ヴァレーの中でも、標高600~1000メートルのもっとも高いところに位置します。
このチャカイ シャルドネは、冷涼な気候を反映したエレガントな酸に、柑橘系や青リンゴの清涼感のある香りが特徴。
熟成には樽を使用し、しっかりとした骨格とともに、長い余韻が楽しめます。
ムニエルをはじめとした魚料理、濃厚過ぎない味付けやソースの鶏や豚がおすすめ。
かなり熟成感も出ていているので、少し高めの温度(12~14℃)だと最大限にこのワインの香りを楽しめます。
【品質向上がめざましい】
日本
締めくくりは、日本。
日本で有名なブドウ品種というと「甲州」が世界的な評価を得ていますが、近年は高品質なシャルドネにも注目が集まっています。
シャルドネは、1980年代から栽培されてきましたが、なかなか世界で戦える品質のもができませんでした。
というのも、日本ではブドウの生育期や収穫期に、梅雨や台風などが重なることが多いため、シャルドネなどのヨーロッパ系のブドウ品種の栽培が困難だったのです。
そこで、山梨や長野といった盆地など、降雨量が少なくて暑く乾燥したエリアや、水はけのよい土地に目が向けられました。
また、栽培技術の向上もあり、非常にレベルの高いシャルドネが生産されるようになってきたのです。
【和柑橘を感じる日本ワインの入門】
シャトー・メルシャン
萌黄(もえぎ)
シャトー・メルシャンは、1877年に創業した日本最古の民間ワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」を源流とするワイナリー。
革新的なワイン造りを続け、リーディングカンパニーとして常に日本ワイン界を牽引してきました。
特に、フラッグシップである「桔梗ヶ原メルロー シグナチャー」は初ヴィンテージの1985年以来、世界レベルのワインとして国内外で高い評価を受けています。
シャトー・メルシャンは、ブドウの品種と産地に注目し、全国から栽培地を選定。
現在は、山梨県、長野県、福島県、秋田県などに自社畑や契約農家を保有しています。
質のよい入門向けの日本ワインとして取り上げたいのが、こちらの萌黄(もえぎ)。
シャルドネ100%ではありませんが、福島県、長野県産のシャルドネをメインに、フレッシュな酸が特著の山梨県産の甲州をブレンド。
ユズやスダチなどの和柑橘の落ち着いた香りに、マンゴーのトロピカルなニュアンスも少し感じられます。
芳醇な果実味とシャープなミネラルがあり、ポン酢を使用した料理や鶏の水炊きなどと好相性。
フレンチ、イタリアンでは、マリネやカルパッチョなどさっぱりとした前菜がおすすめです。
【世界が注目するメルシャンの新星】
シャトー・メルシャン
椀子(まりこ)シャルドネ
上記の萌黄に続き、同じシャトー・メルシャンが造る椀子(まりこ)シャルドネ。
こちらのワインは、メルシャンの新たな挑戦から生まれました。
日本最高品質を目指し、2003年に長野県上田市丸子地区に自社管理畑「椀子(まりこ)ヴィンヤード」を展開し、ブドウ栽培を開始。
限られた生産本数ながら、リリース当初から高い評価を獲得し、2019年には、「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」としてオープンしました。
※椀子(まりこ)は、6世紀後半にこの一帯が欽明天皇の皇子「椀子(まりこ)皇子」の領地であったという伝説に由来しています。
2020年、世界最高峰のワイナリーを選出する「ワールド ベスト ヴィンヤード 2020」において、椀子ワイナリーが日本初となるトップ50に選ばれ、世界第30位という快挙を達成。
また、同年にフランスで開催されたワインコンクールでは、椀子シャルドネ 2018が金賞を受賞するなど、椀子ヴィンヤードのシャルドネが、名実ともに世界トップクラスであることが証明されたのでした。
マンゴーやパイナップルのアロマに、樽由来のヴァニラやアーモンドの香ばしい香り。
比較的ボディもしっかりしており、程よい酸味とミネラル感が全体を引き締めています。
サーモンのムニエルや、クリーム系のソースを使用した魚・肉料理との組み合わせがおすすめです。
【国内最高峰のシャルドネ|ギフトにも◎】
サントリー 登美(とみ)の丘ワイナリー
登美〈白〉
1909年に設立された「登美(とみ)農園」をルーツに持つ、サントリー 登美の丘ワイナリー。
100年以上の歴史を持つワイナリーとして、シャトー・メルシャンと共に、国内最高峰のワインを生み出し続けています。
隅々まで管理された畑で、収量を抑えて収穫されたシャルドネのみを贅沢に使用して造られた、登美〈白〉。
このエリアは、日本国内でも特に日照量の多く、登美〈白〉は洋ナシやパイナップルなどのトロピカルなアロマをたたえ、樽由来のローストしたアーモンドのニュアンスが感じられます。
滑らかな口当たりですが、凝縮した果実のボリューム感もしっかりとあり、長い余韻が楽しめます。
メインの魚料理をはじめ、ローストした鶏(焼き鳥も)や豚のロース(しゃぶしゃぶなら胡麻だれ)といったこってりしすぎない料理と合わせるとよいでしょう。
終わりに
世界でもっとも有名で人気のあるブドウ品種、シャルドネ。
その特徴にはじまり、産地や造り方で変化するスタイル、そして合わせたい料理やおすすめの15本までを見てまいりました。
さまざま表情を見せてくれるのがシャルドネの魅力。
みなさんがご自宅やレストランで楽しむ際に、この記事が参考になれば幸いです。