日本が世界に誇る街、銀座。
一流の人とモノが集まるこの銀座は、「世界でもっともバーの多い街」と言われており、世界的に見ても、そのレベルはトップクラス。
その中でも、特に飲み手の心を掴んで離さない名店があり、数多くのファンが毎夜銀座へ繰り出していきます。
この記事では、そんな銀座にあってもトップと称されるバーをご紹介いたします。
バーを訪れる前に
銀座のバーというと、どうしても敷居の高さを感じてしまう方も多いかもしれません。
メニューがなかったり、作法がわからないという方もいらっしゃるでしょう。
実際、気が付かずにマナー違反ととられる行動をとってしまっている場合もあると聞きます。
ですが、いくつかのポイントを押さえていれば、あまり神経質になる必要はありません。
せっかくバーを訪れるなら、気持ちよく楽しい時間を過ごしたいですからね。
まず、マナーについて。
漠然としていますが、他のお客様への配慮が大切かと思います。
服装、話し声の大きさ、喫煙者であればチェーンスモーク。
どれも、お店の雰囲気を壊さない、周りの人が不快にならないことに注意すれば、問題ないでしょう。
次に、チャージやサービス料の有無。
銀座のバーでしたら、ほとんどの場合、チャージ(席料)やサービス料が別途必要になります。
おおむねチャージが¥1,000前後、サービス料は10%前後が目安。
不安な場合は、訪問する前に直接店舗へ、大まかな予算も含めて問い合わせるとよいでしょう。
最後に、だらだらと飲まない。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもの。
同伴者と会話が盛り上がっている、バーテンダーともっとしゃべりたいと感じる場面も多くあるかと思います。
ですが、1時間から1時間半程度で退店するのがよいでしょう。
程よい時間、程よい(酔い)加減でお店を後にする方が、バーテンダーからもスマートに見えます。
以上の点に気を付けていれば、あなたはもうバーへ繰り出す準備は出来ています。
あとは、自分の行ってみたいお店を、この記事の中で見つけていきましょう。
※緊急事態宣言は解除されましたが、お店ごとに営業日、時間は通常と異なっている場合がありますので、詳細につきましては直接店舗にお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。
日本でもっとも有名なバー3選
数百軒以上のバーが軒を連ねる銀座。
その中でも、全国にその名をとどろかせる著名なバーがあります。
こちらでご紹介する3軒は、伝説とも言われるバーテンダーたちがシェーカーを振り、本物を知った大人たちを満足させています。
「ミスターハードシェーク」
銀座テンダー
画像出典:※Instagram @ejgreenberg さんより
恐らく、バー好きな人なら知らない人はいないであろう上田和夫氏がオーナーを務める日本でも屈指のバー。
数々のカクテルコンクールで優勝を果たされた上田氏の特徴は、なんといってハードシェークから生み出されるギムレットです。
ハードシェークとは、非常に強くシェーカーを振り、お酒同士をたっぷりの気泡と共に混ぜ合わせる技術のこと。
鬼気迫る雰囲気で振られるシェーカーから注がれるギムレットには、細かな氷片が無数に漂い、その激しさを静かに物語っています。
やや硬派な雰囲気が感じられる店内で、銀座のトップレベルのカクテルを味わってみてください。
「カクテルの王様」マティーニの名手
MORI BAR
画像出典:※Instagram @masakado789 さんより
テンダーの上田氏と並び、日本のバー業界のレジェンドといっても過言ではないバーテンダー、毛利隆雄氏がオーナーバーテンダー。
30年以上前に、ローマで開催されたカクテルの世界大会で、日本人として初めてテイストとテクニック部門で世界一となった実績があります。
その確かな技術から生み出されるカクテルは、バーを訪れる多くの客の心を掴んでいます。
とりわけ、「カクテルの王様」と言われるマティーニの名手と言われ、毎夜数多くのファンが毛利氏のもとに集うのです。
訪れた際には、ラム酒をベースとした名物の「ハバナマティーニ」をぜひオーダーしてみてください。
日本人初の世界一
スタア・バー・ギンザ
後ほどご紹介する銀座を代表する老舗バー「絵里香」で修業された岸久氏が、2000年にオープン。
数々の国内カクテルコンペティションで優勝することなんと5回。
岸氏の活躍は国内にとどまらず、1996年には最も権威ある世界カクテル・コンペティションの第21回大会で優勝、日本人として初めて世界一となる偉業を達成。
2004年、東京都知事より東京マイスターに認定、2008年、「現代の名工」をバーテンダーとして初めて受章、さらに2014年には黄綬褒章を受章するなど、名実ともにバー業界を牽引してきました。
提供されるカクテルのレベルは、間違いなく最高レベル。
まずは、スタンダードカクテルをオーダーされてはいかがでしょうか。
銀座の歴史を見守ってきた老舗バー4選
銀座と言えば、歴史と伝統を重んじるイメージがあるかと思います。
こちらでご紹介するバーは、どのお店も銀座の歴史と共に歩んできたと言っても過言ではなく、古き良き伝統を現代に伝える名店です。
80歳を超えてなお現役
絵里香
画像出典:※Instagram @xs1a さんより
絵里香は、昭和43年創業の銀座でも有数のカクテルバー。
オーナーである中村健二氏は、バーテンダー協会の理事長も務めた、バーテンダー歴半世紀を超えるベテランです。
カクテルコンクールでの優勝経験もあり、その腕前は折り紙付き。
上記スタア・バーの岸氏の修行先としても有名で、脈々と銀座の技と伝統が受け継がれています。
驚くべきは、衰えないチャレンジ精神です。
中村氏は、2010年にケンタッキー州で開催されたバーボンを使用するカクテルコンペティションに出場し、なんと優勝。
まったく年齢を感じさせない中村氏は、80歳を超えてもなおカウンターに立ち続け、美しくシェーカーを振り続けています。
多くの文豪たちが愛したバー
銀座・ルパン
画像出典:※Instagram @ginzalupin さんより
1928年に創業した銀座・ルパン。
太宰治がスツールに胡坐をかいて笑っている有名な写真がありますが、その舞台となっているのが、この銀座・ルパンなのです。
開店にあたって、泉鏡花や菊池寛といった当時の文豪たちからの支援が背景にあり、この結果、永井荷風、川端康成などの作家たちをはじめ、藤田嗣治、岡本太郎といった画壇の作家たち、 古川緑波や小山内薫などの演劇界の重鎮たちも常連となりました。
画像出典:※Instagram @ginzalupin さんより
その後、第二次世界大戦の大空襲や、戦後の酒類の販売できない時代をくぐり抜け、現代まで多くの作家や著名人らに愛されてきました。
1928年の開店以来、店主を務めていた高﨑雪子氏は、1995年に88歳で他界。
1951年よりバーテンダーを務めていた弟の武氏も、2008年の開店80周年を目前に他界されています。
現在は、雪子氏の長男である龍彦氏がオーナーとして、銀座の老舗の歴史を守り続けてります。
銀座を見守り続け約100年
Bar 5517
画像出典:※Instagram @bar_5517_official さんより
1925年創業の三笠会館の地下一階に居を構えるBar 5517(ごーごーいちなな)。
店名は、住所の銀座「5丁目5-17」から名付けられました。
100年近くにわたり、銀座という街の歴史を見続けてきた老舗。
時間の経過を感じされるカウンターの質感や内装が、当時の銀座という社交場を彷彿とさせます。
戦後のバー文化を担ってきた稲田春夫氏がチーフバーテンダーを長らく務めてきましたが、残念ながら2013年に85歳で他界されました。
現在は、愛弟子でもある高坂壮一氏が引き継ぎ、古き良き銀座と5517の文化を守っています。
マッカランを日本に広めた名店
Doulton
画像出典:※Instagram @ricky_kokuzawa さんより
「ミスターバーマン」と呼ばれた石澤實(こくざわ みのる)氏が、1968年に創業したダルトン。
常時1000種類以上のお酒を用意し、中でもウィスキーは圧巻の品ぞろえです。
もっとも有名なウィスキーの一つであるマッカランを、初めて日本に持ち込み、根付かせたバーとしても有名。
生涯現役を貫き、他界する一週間前までカウンターに立ち続けた石澤氏に代わり、現在は息子の力也氏がその伝統を受け継いでいます。
しかし残念ながら、入居するビルの建て替えが決まり、創業55周年を目前に2021年末をもって閉店することになりました。
移転先も探されているとのことですが、ぜひ閉店前にカウンターで、マッカランとダルトンの積み重ねてきた歴史をじっくりと味わっていただきたいです。
バー初心者にこそ訪れてほしい
ベテランの安定感に身をゆだねるバー3選
普段バーに行きなれていない方からすると、銀座のバーと聞くと気後れしてしまう方も少なくないかもしれません。
ですが、こちらでご紹介するバーは、初めて訪れたとしても終始リラックスして過ごせ、銀座のバーの魅力を存分に楽しむことができるでしょう。
安心できる懐の深さ
BAR 保志
画像出典:※Instagram @barhoshi さんより
国内外のカクテルコンペティションで優勝経験のある保志雄一氏が経営するバーの本店、Bar 保志。
現在は銀座に6店舗、福島県と栃木県にそれぞれ1店舗展開する有名店です。
保志氏は、「銀座でもっとも成功を収めたバーテンダー」と形容されますが、その真骨頂は確かな技術力と旺盛なサービス精神。
後ほどご紹介するリトルスミス、Bar 東京で長く活躍され、2001年にはカクテルコンペティション世界大会で優勝。
確かな腕で作られるカクテルを求めて、多くの客がお店を訪れますが、保志氏のお人柄も最大の魅力の一つです。
老若男女分け隔てなく、深い懐で接してくれる保志氏の作り出す雰囲気が心地よく、初心者でも安心して訪れることのできるバーです。
コンセプトは「自分が行きたいお店」
BAR オーパ 銀座
画像出典:※Instagram @masakado789 さんより
オーパは、カクテルコンクールで日本一になられた大槻健二氏が1996年にオープン。
「オーパ(Opa)」は、ポルトガル語の「おっ」という感嘆詞で、作家・開高健の「オーパ!」に由来します。
今までにカクテルコンクール日本一に輝いたバーテンダーを、数多く輩出してきたバーとしても有名。
お店のコンセプトは「自分が行きたいお店」で、オーセンティックでありながら、間口が非常に広く、女性の一人客も多くみられるのが特徴です。
オーパの代名詞ともいえるカクテルは、ジントニック。
とてもシンプルなレシピながら、バーテンダーによってその味わいは千差万別で、作り手の力量がわかるとも言われています。
残念ながら、大槻氏は2012年に47歳という若さで他界されましたが、現在でも彼の遺伝子を受け継ぐバーテンダーたちがお店を守り続けています。
抜群の居心地の良さ
バー・フォーシーズンズ
バー・フォーシーズンズは、勝亦誠氏と藤谷寛子氏のご夫婦が2005年にオープンされたバー。
勝亦氏は、上記のダルトン、オーパで長く修行され、2003年にカクテルコンクールで日本一に輝きました。
一方の藤谷氏も、ビーフィーターというジンのカクテルコンペティション世界大会で優勝という経歴。
チャンピョン同士のご夫婦が営むバーですから、期待せずにはいられません。
「一度来ていただいたら常連」とおっしゃる通り、銀座のバーながら、その雰囲気はとてもアットホーム。
トップレベルのカクテルを味わい、ご夫婦の醸し出す居心地の良さに身をゆだねながら、至福の時間を過ごされてください。
しっとりと一人の時間を愉しむバー4選
バーを訪れる理由は人それぞれ。
恋人と、仕事の同僚と、場面によってお店を使い分ける方も多いでしょう。
こちらでは、カウンターで独りグラスを傾け、物思いに耽ったり、自分との対話に沈んでみたりといったシチュエーションにぴったりのバーをご紹介します。
洞窟のような静謐な空間
リトル スミス
1993年創業のリトルスミス。
上記の保志氏や、後ほどご紹介するBar 耳塚の耳塚氏やBar Landscape.の松尾氏といったカクテルコンペティションで日本一に輝いたバーテンダーを輩出した名店です。
地下2階にあるお店に入店すると、そのデザインに驚かされます。
有楽町マリオンや東京オペラシティの設計者として著名な故・柳澤孝彦氏がデザインを手がけ、約4メートルほどある高い天井高のおかげで、地下2階の店舗ながら開放感が感じられます。
洞窟のような静謐な空間で、一人ゆっくりとグラスを傾けるのみおすすめのバーです。
日常を忘れる空間
Bar 東京
Bar 東京の現在のオーナーバーテンダーを務めるのは、八巻博和氏。
上記のリトルスミスでキャリアをスタートさせ、当時在籍していた保志氏のもとで修業されました。
その後リトルスミスのオーナーが、同じビルの一階にBar 東京をオープンするに至り、こちらに移籍、その後店を預かることとなりました。
保志氏のもとで学んだカクテルの腕は言わずもがなで、舌の肥えた銀座の客を今宵も満足させています。
国内外のウィスキーも充実していますが、ぜひカウンターで熟練バーテンダーの生み出すカクテルをゆっくりと味わってください。
シカゴが発祥の老舗
ガスライト 銀座
ガスライトの源流は、シカゴで1953年にオープンした会員制バーである「ガスライトクラブ」にあります。
禁酒法時代から初代オーナーBarton Browne Founder氏が自宅で隠れ酒場として開業したことが始まりです。
絶頂期にはパリやニューヨークにも出店し、その流れで昭和30年代初頭に、現在の麻布台にも会員制レストランバーという業態で支店がオープンすることになりました。
オーナーの交代もあり、昭和63年に閉店することになりましたが、平成元年にバーの業態のみを残し、霞ヶ関にリニューアルオープン。
その後は、四ツ谷店、銀座に2店舗を展開することとなり、上記の毛利氏をはじめ数多くのコンクール優勝者を輩出することになります。
現在のオーナーは、井口法之氏。
2007年にカクテルコンクールで日本一となり、世界大会でも3位に入賞するなど、多くの実績を残されています。
背筋の伸びる雰囲気の中でカクテルグラスを傾け、大人の時間を過ごされてはいかがでしょうか。
やわらかい接客が魅力
Bar 耳塚
画像出典:※Instagram @otokuniget3448 さんより
上記リトルスミスで約17年にわたり修行された耳塚史泰氏が、2014年にオープン。
例にもれず耳塚氏も、2011年にカクテルコンクールで日本一になり、その後の世界大会でも、「アフターディナー部門」で優勝を飾りました。
耳塚氏が柔和な笑顔で出迎えてくれ、こちらの緊張はいつの間にかどこかへ消えてしまいます。
自分の好みを伝えながら、バーテンダーとの会話を愉しむのにぴったりのバーです。
デートにおすすめのバー2選
デート利用の場合、大切になるのは雰囲気と接客かと思います。
こちらでご紹介するのは、お店のムード、サービスの距離感、ともにぴったりの2軒です。
テーマは「シャーロック・ホームズ」
銀座 Bar Sherlock
バー・シャーロックは、オーナーバーテンダーの吉本武史氏が、2016年にオープン。
吉本氏は、約10年にわたって上記バー・フォーシーズンズで活躍され、2014年にカクテルコンクールで日本一になりました。
店名が表す通り、シャーロック・ホームズのテイストが、お店の隅々にまで感じられます。
日本一に輝いたオリジナルカクテルの名も「シャーロック」、コースターにもシャーロック・ホームズのシルエットが描かれています。
英国調の雰囲気が、程よい緊張感を保ってくれますが、女性一人でも訪れやすい接客が魅力です。
16時からオープンしており、ディナー前にカップルで訪れて軽く一杯いただくのも、おすすめです。
スタイリッシュな空間でカクテルを愉しむ
Bar Landscape.
画像出典:※Instagram @bar_landscape さんより
バー・ランドスケープは、松尾一磨氏、民子氏のご夫婦が2019年にオープン。
一磨氏はリトルスミス、民子氏はオーパで修行された経歴を持ちます。
加えて、一磨氏は2013年、民子氏は2016年にカクテルコンクールで日本一になられています。
入店すると、リトルスミスを彷彿とさせる開放感のある高い天井、ゆるく弧を描くカウンターが出迎えてくれます。
スタンダードカクテルの安定感に加え、季節のフレッシュフルーツを使用したカクテルもおすすめです。
銀座でありながら、敷居の高さを感じさせないスタイリッシュな空間が魅力。
恋人同士で訪れて、銀座の夜を満喫するのに最適なバーです。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
一流を知る大人たちが集う銀座。
その中でも、バーという非日常の空間で過ごす時間は、銀座という街を愉しむ醍醐味の一つと言えるでょう。
10月に入り、徐々に銀座の街にも灯りが戻り始めました。
このようなコロナ渦で、私たち、飲食店の方々双方にとって、まだまだ制約が多いのが現状ですが、もしこの記事で行ってみたいと思うバーがありましたら、ぜひ機会を見つけて伺ってみてください。