バーテンダー日本一。
その響きから、どのようなバーテンダーの方を想像するでしょうか?
職人のような気難しい人、華やかなオーラを纏った人。
また、日本一と聞いて、少し敷居の高さを感じる方も少なくないかもしれません。
ですが実際に訪問してみると、高い技術に裏打ちされたカクテルの美味しさは言うに及ばず、サービスの心地よさに驚きます。
初心者にとっても、バーで飲みなれた方とっても、程よい緊張感に包まれながら気持ちよく過ごせる空間が、そこにはあります。
日本一だからこそ作り出せるカクテルと空間があるのでしょう。
この記事では、日本一に輝いた4名のバーテンダーたちをご紹介してまいります。
最高峰の戦い|全国バーテンダー技能競技大会
国内には、サントリーなどのメーカー主催のカクテルコンクールが数多くありますが、その中でももっとも争いの厳しいコンクールがあります。
それは、「全国バーテンダー技能競技大会」です。
ただカクテルを作るだけでなく、筆記試験やフルーツカットの技術も問われるハードルの非常に高い大会。
日本一の称号を懸けて、毎年数多くのバーテンダーたちがしのぎを削ります。
さっそくその最難関と言われる大会の内容を見ていきましょう。
どのような大会か?
全国バーテンダー技能競技大会とは、一般社団法人日本バーテンダー協会(NBA)が主催する、国内でもっとも権威あるバーテンダーの技能競技大会。
まず、各都道府県での予選、地方ブロック予選を通過したバーテンダー20名が、全国大会へと進むことができます。
下記の4部門からなり、バーテンダーとしての総合力を競う非常に熾烈なコンクールです。
優勝者には厚生労働大臣賞、開催地知事賞及び市長賞の授与など、最高の栄誉が与えられます。
・学科試験部門
「NBAオフィシャルカクテルブック」という本から、バーテンダーとして必須の知識や衛生に関する問題が出題されます。
・フルーツ・カッティング部門
フルーツカットの実技。
制限時間は10分で、盛り付けるお皿の大きさや、使用してよいナイフの種類、フルーツのス類など、すべて規定されています。
・課題カクテル部門
毎年決められたスタンダードカクテルを、制限時間4分で、5杯分作成します。
使用するお酒のメーカー、分量、器具、作成の手順から動作に至るまで細かく決められています。
・創作カクテル部門
材料のアルコールは協賛各社のものを使用することが決まっていますが、そのほかはバーテンダーの自由でオリジナルのカクテルを、制限時間6分で5杯分作成します。
優勝者は日本代表としてへ世界大会へ
優勝者は、翌年に開催される国際バーテンダー協会(IBA)主催の世界大会であるワールド・カクテル・チャンピオンシップへ、日本代表として出場。
毎年開催国は変わりますが、60ヶ国近い加盟国から代表選手が集まり、技術、カクテルのテイストを競い合います。
直近の日本一は銀座の山崎氏
画像出典:※Instagram @js_junjun さんより
2020年は、残念ながら新型コロナウィルスの影響により、技能競技大会は開催されませんでしたが、最新の2019年の大会で見事日本一に輝いたのは、銀座6丁目にあるバー・ゴヤの山崎剛氏。
銀座でもトップとされるスタア・バー・ギンザで約13年修行され、2018年に独立されました。
スタア・バー・ギンザの伝統を踏襲しながらも、作るカクテルはオリジナリティを感じさせるもの。
スペインのシェリー酒にも精通しており、店名の”ゴヤ”は、18世紀のスペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤに由来しています。
画像出典:※Instagram @rikotaka07 さんより
優勝した際のカクテルは、「ファミーユ」。
ウォッカをベースに、エルダーフラワーとパッションフルーツの香りが上品な一杯です。
素敵な笑顔で出迎えてくださる山崎氏の、バー・ゴヤ。
今後がますます楽しみなバーの一軒です。
著名な日本一のバーテンダー3名
こちらでは、歴代の大会優勝者の中から、特に著名な3名をご紹介いたします。
エリアは、銀座、渋谷、そして赤坂。
日本を代表的する繁華街に居を構える日本一のバーテンダーたちのお店を、さっそく見ていきましょう。
Bar 保志
保志 雄一氏
画像出典:※Instagram @barhoshi さんより
国内外のカクテルコンペティションで優勝経験のある保志雄一氏。
銀座の名店、リトルスミス、Bar 東京で長く活躍され、現在は、銀座に6店舗、福島県と栃木県にそれぞれ1店舗展開する有名店のオーナーバーテンダーです。
画像出典:※Instagram @bar_hoshi_iris さんより
保志氏は1998年の大会で優勝を果たします。
その際の優勝カクテルは、「フォーリング・スター」。
訳すと、「流れ星」。
保志氏自身が、優勝したいというと願いを込めて作成したカクテルで、なんともロマンチックなエピソードですね。
老若男女分け隔てなく、深い懐で接してくれる保志氏の作り出す雰囲気が心地よく、初心者でも安心して訪れることのできるバーです。
Bar 石の華
石垣 忍氏
画像出典:※Instagram @ishinohana_bar さんより
Bar 石の華は、石垣忍氏が2003年に渋谷にオープン。
もともと接客業、対面式の仕事に魅力を感じていた石垣氏。
トム・クルーズ主演の映画「カクテル」に魅せられて、バーテンダーの道へ進むこととなります。
石垣氏は、2002年の大会で「ポーラ・スター」というカクテルで優勝。
じゃがいもの蒸留酒であるアクアビットをベースにした、淡い緑色が美しいカクテルです。
その後も勢いは止まらず、2005年、イタリア、トリノで開催されたIBA(国際バーテンダー協会)公認の世界大会、第40回バカルディ・マルティーニ・グランプリにて、最も権威あるシニア部門(29歳以上)で、東洋人として大会史上初となる優勝を飾りました。
下記が、世界一に輝いたカクテル、「クラウディア」。
などとしても活躍の幅を広げています。
画像出典:※Instagram @foodguide_tokyo さんより
現在は、石垣氏自身、バーカウンターに立つ傍ら、カクテルのレシピ制作やプロデュース、イベント講師として活躍の場を広げています。
旬のフレッシュフルーツをを使用したカクテルがおすすめで、色彩豊かなお酒がカウンターを彩ります。
ノンアルコール・カクテルのレパートリーも豊富なので、あまりアルコールに強くない方でも安心して訪れることができます。
バー・ティアレ
水澤 泰彦氏
画像出典:※Instagram @chise_san_ さんより
バー・ティアレは、オーナーバーテンダーの水澤泰彦氏が、2009年に赤坂の地にオープン。
多くのバーテンダー日本一を輩出している名店、バー・オーパの門前仲町で店長として長く活躍されました。
店名は、タヒチの国花「ティアレ」という白い花にちなみます。
首飾りにも使われ、タヒチでは幸せを運ぶという、素敵なエピソードも。
画像出典:※Instagram @masa.shigeoka さんより
2004年の大会で優勝した際のカクテルは、「スプリング・ヒル」。
ホワイト・ラムをベースとしたカクテルで、サクラリキュールを使用した淡いピンク色が美しい一杯。
すでにベテランの域ながら、身近な距離感の接客が心地よく、何度でも通いたくなるバーです。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
日本一のタイトルを持つバーテンダーたちをご紹介してまいりました。
極上のカクテルだけではなく、一流の接客を、ぜひ一度訪問して堪能してみてください。