画像出典:※Instagram @mulongowineands ​​さんより

ブルゴーニュと並ぶ、フランスの銘醸地であるボルドー
ワイン産地として、フランス国内でも最大級の面積を誇ります。

ボルドーには、約8,000の生産者がいますが、その中でも頂点に君臨するのが、「5大シャトー」と呼ばれるトップ生産者
ボルドーに興味を持ったなら方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
世界的に見ても最高品質のワインとされ、ものによっては価格が10万円を超えることも。

この記事では、前提知識として「ボルドーワインの基本」である産地の特徴格付け制度について触れつつ、5大シャトーのそれぞれの歴史特徴をご説明していきます。

そもそも5大シャトーとは?

ボルドー地方では、醸造所がお城(フランス語でシャトー)のような造りだったことから、生産者のことをシャトーと呼びます。
つまり「5大シャトー」とは、フランス、ボルドー地方を代表する「トップ5生産者」を意味します。
また、ボルドー地方では、慣例的にシャトーの名前がそのままワイン名として使われるので、「5大シャトー」という言葉は、このトップ5の生産者が造ったワインを指すこともあるわけです。

下記の生産者が5大シャトーと呼ばれ、その伝統とともに、品質の高さ名声を守り続けています。

シャトー・ラフィット・ロッチルド(ロスチャイルド)
シャトー・ラトゥール
シャトー・ムートン・ロッチルド(ロスチャイルド)
シャトー・マルゴー
シャトー・オー・ブリオン

トップクラスのワインが生まれるメドック地区

ボルドー地方の中でも銘醸地と名高く、5大シャトーも居を構える「メドック地区」について、詳しく見ていきましょう。

水のほとり(Au bordde l’eau)を意味する古語を由来に持つボルドーには、その名の通りガロンヌ川ドルドーニュ川、そしてこの2つが合流するジロンド川が流れています。
ボルドーはこのジロンド川を中心に、東側の右岸西側の左岸に分けられます。

特に高品質のワインが生まれるとされるメドック地区は、左岸の下流に位置。
中でも、サン・テステフサン・ジュリアンポイヤックマルゴーという村からは、5大シャトーを含むトップクラスのワインが生産されています。

また、右岸にはサン・テミリオンポムロールといった名産地があります。
左岸に比べると規模の小さなシャトーが多いですが、こちらでも高品質なワインが数多く生産されています。

メドック格付け

約8,000のシャトーがあるボルドー地方で、5大シャトーをその「頂点」と定めているもの。
それが「メドック格付け」です。
この格付けはボルドー地方独自のものであり、制定のきっかけは1855年のパリ万国博覧会でした。

16世紀の頃には、ボルドー地方の中でも優れたワインを生み出すエリアだと認識されていたメドック地区
パリ万博に向けて、ナポレオン三世は、ボルドー市の商工会議所にメドック地区のワインを、当時の流通価格に基づいて格付けを行うよう命じました。

第1級から第5級まで、合計61のシャトーが選ばれ、最上位の第1級にあたるのが、上記でご紹介した5大シャトーです。
また、17世紀から高い名声を得ていたグラーヴ地区シャトー・オー・ブリオンのみ、唯一メドック地区以外から第1級のシャトーに選ばれました。

なお、現在に至るまでこの格付けの見直しは、1973年に当時第2級だったシャトー・ムートン・ロッチルドが第1級に昇格した以外は行われていません。

品質を支えるセカンド・ワインの存在

セカンド・ワインとは、基本的に樹齢の若いブドウを使用して造られるワインのこと。

ボルドー地方では、各シャトーの最高峰のワインを「ファースト・ワイン」と呼びます。
5大シャトーの流通価格は数万円から、優れたヴィンテージ(収穫年)には十数万円を超えることもあり、品質、価格ともにトップクラスです。

ファースト・ワインは、シャトーが所有する畑のうち、特に優れた区画から、樹齢の高いブドウを選び抜き、造り上げられるのです。
5大シャトーの中には、収穫したブドウのたった1/3程度しかファースト・ワインに使用しないところもあり、いかにブドウの選別に力を入れているかがわかります。
したがって、必然的にファースト・ワインの価格は高価になります。

樹齢の若いブドウや基準に満たないものは、セカンド・ワインの醸造に使用され、場合によってはサード・ワインの生産に回されることも。
このように、妥協のない管理がトップクラスの品質維持を可能にしているのです。

しかし、セカンドやサード・ワインと言っても、同じ技術スタイルで造られますので、各シャトーの個性は引き継がれながらも価格は控えめで、比較的手に届きやすいのが特徴。
長期熟成を前提としたファースト・ワインよりも、早めに飲み頃を迎えるのも魅力です。

5大シャトー

ここからは、5大シャトーを詳しくご説明してまいります。
各シャトーの歴史や醸造のスタイルに始まり、味わいの特徴、オンラインでご購入いただける商品紹介まで行います。

究極のフィネスとエレガンス
シャトー・ラフィット・ロッチルド
Chatea Lafite Rothschild

5大シャトーの筆頭と言われるシャトー・ラフィット。
メドック格付けが制定された当時、もっとも取引価格が高かったことから、5大シャトーの中でも一番最初に名が挙がる名門です。

ラフィットの始まり

「小高い丘」を意味する「ラ・イット(la hite)」が変化し、現在のラフィットとなったと言われています。
文字通り、メドック地区、ポイヤック村の小高い丘に位置し、13~14世紀ごろからブドウ栽培が行われていました。

シャトーとして本格的にワイン造りが始まったのは18世紀、ニコラ・アレキサンドル・ド・セギュール侯爵がオーナーになってからでした。

ニコラ・アレキサンドル・ド・セギュール侯爵は、複数のシャトーを所有し、「葡萄の王子」の異名を持っていました。
ラフィットを取得後、ラトゥールも取得したセギュール候は、ラフィットとラトゥールを併合。
すでにこの頃には、イギリスで高い評価を得ていたと言われています。

また、ラフィットをいたく気に入ったルイ15世やその公妾であるポンパドール夫人も、ヴェルサイユ宮殿の晩餐会でラフィットをたびたびふるまいました。
そして、貴族たちの間でも人気を博すこととなり、「王のワイン」として認められるようになりました。

しかし、セギュール候は跡取りに恵まれず、ラフィットは娘達に分割されることに。
その際、再びラフィットとラトゥールは別々のシャトーとして歩むことになりました。

その後は、競売にかけられたり、何代ものオーナーを経て、1868年にジェームズ・ド・ロッチルド男爵が購入。
そして、最終的に現在の名称である「シャトー・ラフィット・ロッチルド」と改名されました。

苦難からの復活

画像出典:※Instagram @chateaulafiterothschild ​​さんより

その後、フィロキセラやウドンコ病といった病害、大恐慌や第二次世界大戦などの苦難の時期を過ごしました。
第二次大戦では、フランスがドイツ軍によって占領された際に、ラフィットはロッチルド財閥の財産であることを理由に解散させられ、セラーも略奪をされることに。

1945年、エリー・ド・ロッチルド男爵によってラフィットの所有権は取り戻され、そこからシャトーの再生が始まります。
1960~70年代には一時低迷したりもしましたが、1974年にエリーの甥、エリック・ド・ロッチルド男爵が事業を継承。
エリックの努力により品質の回復、向上を成し遂げ、名門として復活を果たしました。
そして、ボルドー第1級の名にふさわしい、素晴らしいワインを安定して産み出しています。

ラフィットのスタイル

ラフィットの畑は、ポイヤック村でもっとも北に位置し、サン・テステフ村との境に面しています。
畑の一部はサン・テステフ村側にありますが、例外的にポイヤック村として扱われています。

平均樹齢は約40年と高樹齢で、収穫されたブドウは、区画毎に別々のタンクで醗酵。
こうすることで、区画毎の特徴を把握することができ、最適なブレンドを可能にします。

熟成を行う樽にもこだわり、ラフィットは自社の工房で樽を製造。
ヴィンテージ(収穫年)や区画ごとに合わせた樽を造り、内側の火入れも細かく変えます。

5大シャトーの筆頭格
Chateau Lafite Rothschild
シャトー・ラフィット・ロッチルド

¥13,2000~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ポイヤック
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / プティ・ヴェルド

5大シャトーの中でも、力強さとエレガントさが非常に高いレベルで両立していると言われる、シャトー・ラフィット。
その味わいは、究極のフィネスとエレガンスと評され、熱狂的なファンが追い求めています。
10年程度の熟成では、タンニンも果実味もまだまだしっかりとしており、なかなか本当の姿を見せてくれません。
本来の姿を見せてくれるまでの時間を楽しむのも、このワインの魅力の一つです。

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ラフィットのフィネスを感じるセカンド・ワイン
Carruades de Lafite
カリュアド・ド・ラフィット

¥49,500~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ポイヤック
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン

収穫されたブドウのうち、ファースト・ワインに使用されるのが約3割。
さらに残りのうちの約4割まで選び抜き、このカリュアド・ド・ラフィットが造られます。
ファースト・ワインに比べると軽やかなスタイルですが、ラフィットの片鱗を十分に感じられる完成度です。

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偉大なる塔
シャトー・ラトゥール
Chateau Latour

名前の通り、ラベルに大きく描かれた「塔=ラ・トゥール(la tour)」が目を引くシャトー・ラトゥール。
5大シャトーの中で、もっとも筋肉質なワインと言われ、その圧倒的な重厚さと凝縮した果実味が飲み手の心を掴んで離しません。

ラトゥールの歴史

17世紀には一部の畑でぶどう栽培をはじめていたラトゥールですが、醸造まで取り組むようになったのは、ニコラ・アレキサンドル・ド・セギュール侯爵がオーナーとなった18世紀に入ってからのことでした。

すでにシャトー・ラフィットも所有していた当時のセギュール侯は、ラトゥールをラフィットと統合
優れたワインを生産するようになり、たくさんの愛好家から認知され、その評判は世界中へと拡散していきました。

1755年、ニコラ・アレキサンドル侯爵の死をきっかけに領地は分割され、ラフィットの一部であったラトゥールは、独立したシャトーとして経営されていくことに。
すでにワイン造りにおける技術や設備は備わっていたため、独自の路線を進むことになります。

その後、第3代アメリカ大統領のトーマス・ジェファーソンから絶賛されたこともあり、当時のボルドーワインと比較して20倍もの価格がつけられるほどでした。

ラトゥールのスタイル

シャトー・ラトゥールは、メドック地区、ポイヤック村のもっとも南に位置し、ジロンド川沿いに多くの畑を所有。
ジロンド川からの放射熱や、日中にたっぷりと熱を吸収した砂利質土壌のおかげで、霜の被害を最小限に留め、良質なぶどうがしっかりと成熟されていきます。
収穫時期の雨や、冷夏といったオフ・ヴィンテージにも強いと言われる所以です。
総面積約93haある畑のうち、丘の上部にあたる中心部約47haを占める「ランクロ」と呼ばれる特別なエリアのブドウが、ファースト・ワインに用いられます。

2010年には、ランクロの区画をビオディナミに転換し、2016年からは所有畑全体をオーガニックに転換。
そして2018年、格付第1級シャトーで初めてエコセールのビオロジック認証を獲得ました。

ラトゥールは早くから近代化されたシャトーとしても知られており、1960年代からは、周囲に先駆けて、当時管理が難しいとされていたステンレスタンク発酵を取り入れ、区画ごとに分けて発酵。
収穫量に応じたさまざまなサイズや形状のタンクは、ラトゥール用に特別に作られたもので、室温やタンクの温度コントロールなどは完璧で、24時間の管理体制を敷いています。
現在では、所有する畑全体を衛星写真で撮影し、細かく土壌の分布を分析し、100以上の区画に分割する徹底ぶりです。

圧倒的な重厚感
Chateau Latour
シャトー・ラトゥール

¥103,400~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ポイヤック
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン / プティ・ヴェルド

5大シャトーの中でも、ラトゥールは、もっとも男性的で、長期熟成に向いているワインです。
10年程度の熟成では、タンニンも果実味もまだまだ溌溂としており、なかなか本当の姿を見せてくれません。
その重厚なボディを造るタンニンと、凝縮した濃密な果実味から、筋肉質でパワフルな味わいが広がっていきます。

ヴィンテージによっては、50年以上の熟成に耐えられるとも言われる、ラトゥール。
まさに、世界最高峰のワインと言っても過言ではありません。

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セカンド・ワインとは思えないクオリティ
Les Forts de Latour
レ・フォール・ド・ラトゥール

¥44,000~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ポイヤック
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / プティ・ヴェルド

ランクロの区画を囲む畑で育つ、樹齢40年を超えるブドウを贅沢に使用。
ファースト・ワインとの醸造の違いは、新樽の使用率のみという圧倒的な品質です。
セカンド・ワインとは思えない重厚感と凝縮した果実味をお楽しみいただけます。

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非常に希少なサード・ワイン
Pauillac de Latour
ポイヤック・ド・ラトゥール

¥16,500~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ポイヤック
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン

生産量は、シャトー・ラトゥールの1/10というとても希少なワインとされています。
サード・ワインという位置づけながら、ワイン専門誌からは高評価を獲得している実力派。
ラトゥールのスタイルを感じられながら、早くから楽しむことができる優秀な1本です。

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格付けを覆した唯一の城
シャトー・ムートン・ロッチルド

毎年ラベルのデザインが変わることで有名なシャトー・ムートン・ロッチルド。
非常にスケールの大きなワインで、長期熟成を経て初めて本領を発揮する男性的なワインです。

不変だったメドック格付けを覆す

このシャトーを語るうえで外せないのが、メドック格付けを覆した唯一のシャトーということです。

1853年、イギリスの大実業家であるロッチルド家(ロスチャイルド家)が買収したシャトー・ムートン・ロートシルトは、第1級に格付けされたラフィットと同程度の価格で取引されていたにもかかわらず、第2級に格付けされる結果に。

ひどくショックを受けた当時の当主フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵は、「1級にはなれないが2級には甘んじれぬ、ムートンはムートンなり」と言い、醸造技術や熟成方法など様々な改良を重ね、昇格を目指したゆまぬ努力を続けました。

画像出典:※Instagram @chateaumoutonrothschild_ ​​さんより

そして制定後、100年以上の間不変であったメドック格付けをついに覆し、悲願であった昇格を達成することになりますが、4世代に渡る努力の道のりは並大抵のことではなかったと言われています。
その時、フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵が残した「われ1級になりぬ、かつて2級なりき、されどムートンは昔も今も変わらず」という名句はあまりにも有名です。

フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵の功績

こうしたムートンの歴史における偉業の裏には、先ほどのフィリップ・ド・ロスチャイルド男爵の優れた手腕とたゆまぬ努力がありました。
フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵がシャトーを引き継ぐことになったのは、若干20歳の時でした。

彼が一番最初に取り組んだのは、長い歴史の中で慣習とされてきた中間業者による瓶詰めの廃止
現在では当たり前に行われているシャトー元詰めですが、当時としては革新的で、ワインの質が向上し、他のシャトーも倣うようになりました。

また、セカンド・ワインの原型とも言われる「ムートン・カデ」を生み出し大成功をおさめました。

世界へ飛び出したムートン

フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵は、1960年代にその卓越したビジネス感覚を働かせアメリカカリフォルニアを目指しました。
カリフォルニア・ワイン界の重鎮であったロバート・モンダヴィとのジョイントベンチャーで、新旧による傑作を生み出したのです。
それがオーパス・ワンです。
リリース以来世界中のワインファンの注目と熱狂を集め、世界屈指のプレミアムワインとしての地位を確立しました。

その後も、チリで最大かつ最高峰のワイナリー、コンチャ・イ・トロ社と組み、1998年に新たなプレミアムワインとしてアルマヴィーヴァを世に放ちました。
グローバルなワインビジネスを展開、ワイン業界の既成概念を打ち破り、ムートンはゆるぎない第1級としてのブランドを確固としたものにしたのです。

ラベルデザインにもこだわる

画像出典:※Instagram @chateaumoutonrothschild_ ​​さんより

毎年デザインの変わるラベルも、ムートンの魅力の一つ。
これまでにシャガールピカソウォーホールらといった著名な画家たちがそのデザインを担ってきました。

シャトー元詰め開始を記念した1924年のラベルは、ポスター作家ジャン・カルリュが担当。
その後、時を空けて、第二次世界大戦が終わった1945年、連合軍とフランスの勝利を祝し、VictoryV字がラベルを飾りました。
そして1946年から現在まで、途切れることなく毎年異なった芸術家がラベルのデザインを手掛けて、アートコレクターたちの関心をも魅了し続けています。

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Chateau Mouton Rothschild
シャトー・ムートン・ロッチルド

¥99,000~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ポイヤック
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン / プティ・ヴェルド

カベルネ・ソーヴィニョン由来のたっぷりとしたタンニンがボディを支え、凝縮した果実味が後に続きます。
ラトゥールと並び、非常に力強く、長期熟成を経て本領を発揮するスケールの大きなワインです。

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セカンド・ワインながらパワフルなボディ
Le Petit Mouton de Mouton Rothschild
ル・プティ・ムートン・ド・ムートン・ロッチルド

¥41,800~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ポイヤック
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン

主に若樹のブドウを使用しますが、その中でも厳しい選果をくぐりぬけたものだけを使用。
ファースト・ワインと比べるとメルローの割合が高く、パワフルなボディながら果実味と酸のバランスが優れています。

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5大シャトーの中でもっとも女性的
シャトー・マルゴー

1855年のメドック格付けの際、20点満点のテイスティングで採点が行われましたが、マルゴーが唯一満点を獲得したというエピソードがあり、その実力は当時から知られていました。
非常にエレガントな味わいが特徴で、5大シャトーの中でももっとも女性的とされます。

マルゴーの歴史

シャトー・マルゴーが歴史の中で初めて文献に登場するのは、12世紀。

当時は「ラ・モット・ドゥ・マルゴー」と呼ばれる農園で、多くの貴族の手に渡りましたが、16世紀にピエール・ド・レストナックという貴族が所有者となったことが一つの転機となりました。
メドック地区がワインの産地として適していると考えたド・レストナックは、シャトーの穀物畑を縮小してブドウ畑を増やし、ワイン生産に注力して現在の原型を築いたのです。

1934年、マルゴーはボルドーのネゴシアンであるジネステ家の所有となり、セカンド・ワインの導入やブドウ畑を拡大醸造設備への投資にも熱心に取り組みました。
しかしながら、マルゴーは1960年代から1970年代にかけて低迷し、その名声は影をひそめることに。

1976年、各国での事業で財を成したギリシャ人のアンドレ・メンツェロプーロスがジネステ家からシャトーを買収、改革に乗りだします。
ボルドー大学の醸造学者エミール・ペイノーと共に、栽培方法や熟成方法を見直し、今までの技術を大きく改良し、マルゴーは再び名声を取り戻しました。
メンツェロプーロスは1980年に亡くなり、その後シャトーは娘のコリーヌ夫妻と総支配人ポール・ポンタリエ(2016年逝去)の手によって運営され、最高品質のワインを生み出しています。

マルゴーのスタイル

画像出典:※Instagram @chateaumargaux ​​さんより

2012年からビオロジックでブドウ栽培を行っており、マルゴーにしか表現できないテロワールを追い求めています。

収穫における選果もいっそう厳しくし、ファースト・ワインに使用されるブドウは全体量の僅か35%前後
これほどまでの選果を可能にするのは、80区画まで細分化された畑です。
区画ごとの特徴を把握し、適切に醸造、熟成させることで、より完成度の高いワインを作り出すことを可能にしています。

また、マルゴーの特徴として、区画を固定せず、ヴィンテージごとにブレンドの比率を決めるのが特徴。
毎年1月にすべての区画のワインをテイスティングし、ファースト・ワインのブレンドを決定します。
通常、セカンド・ワインに使用するブドウは、樹齢の若い区画のものであったりしますが、マルゴーでは、同じ区画であっても、ヴィンテージによっては、ファースト・ワインに使用されたり、セカンド・ワインにブレンドされたりします。

その時々に収穫できるブドウの品質や特徴にあわせて、18~24ヶ月の期間、100%フレンチオークの新樽で熟成されています。
シャトー・マルゴーでは、樽がワインに与える多様性を重要視しており、オーク樽の自社生産を行っているのです。

エレガンスの極み
Chateau Margaux
シャトー・マルゴー

¥132,000~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / マルゴー
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン / プティ・ヴェルド

しっかりとしたボディながら、口当たりの滑らかさでシルクのような繊細な味わい。
並外れたタンニンは、非常にしなやかで、長い余韻が続きます。
5大シャトーの中でも、マルゴーは「最も女性的なワイン」とも称され、重厚ながらもふくよかさもあり、たいへん官能的な1本です。

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マルゴーのDNAをしっかり受け継ぐセカンド
Pavillon Rouge du Ch. Margaux
パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー

¥40,700~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / マルゴー
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン / プティ・ヴェルド

パヴィヨン・ルージュは、マルゴーと比べるとメルローの比率が高く、芳醇で、より柔らかいスタイルに仕上がっています。
また、マルゴーの新樽使用率が100%なのに対し、パヴィヨン・ルージュは50%に抑えられており、比較的早くから楽しめる1本です。
もっとも有名なワインジャーナリストの一人であるロバート・パーカーも、1980年代の頃からこのパヴィヨン・ルージュに対する評価はとても高く、長期にわたって品質を維持し続けています。

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貴族的な風格
シャトー・オー・ブリオン

グラーヴ地区から唯一第1級に選出された異例のシャトー。
17世紀から高い名声を確立しており、当時のボルドーワインの中でももっとも高価なワインの一つとして認識されていました。

オー・ブリオンの歴史

シャトー・オー・ブリオンの名前の由来はケルト語の「丘」を意味する「Briga」から来ています。
一番古い文献として残っているのは、1426年のもので、ヨハンナ・フォーレという女性が、亡くなったヨハン・ダルティグアメルという神父のために、現在のシャトーに近い場所にブドウを植えたのが起源と考えられています。
1525年、オー・ブリオンの領地を所有していたリブルヌ市長の娘である、ジャンヌ・ド・ベロンとジャン・ド・ポンタックが結婚。
1533年に邸宅を含む現在の農地を購入し、シャトー・オー・ブリオンが誕生し、1549年から本格的なシャトーの整備が始まりました。
その後は、数々のオーナーに移り渡りましたが、1934年からはアメリカ人銀行家のクラレンス・ディロンが買収し、現在に至ります。

フランスを救った?オー・ブリオン

オー・ブリオンの有名なエピソードのひとつに、「ウィーン会議」での出来事があります。
フランスがナポレオン戦争に敗れ、敗戦国の処遇を決める1814年のウィーン会議。
当時の外務大臣タレイランは、一流の料理シャトー・オー・ブリオンを供し、連日連夜各国の代表をもてなしたと言います。
このことがきっかけで各国の代表者たちの態度が軟化し、負けたにも関わらずフランスが領土をほとんど失わずに済んだ、とさえ言われているのです。

オー・ブリオンのスタイル

オー・ブリオンが所有する畑は、南東向き、土壌は小石を含む河川礫層で構成されています。
ボルドー市の南西、ペサック村の周りに広がっており、平均気温が周辺の畑に比べ高めで、ブドウが早く熟します。
畑は51haにおよび、そのうち48haで黒ブドウ品種を栽培しており、ブドウの平均樹齢は約35年と高めです。

収穫は区画毎に、個々のブドウを熟知したチームが手摘みで収穫。
ヴィンテージに応じて、新樽比率70~80%のフレンチオークで約20~24ヵ月間熟成させます。

グラーヴから唯一選出
Chateau Haut-Brion
シャトー・オー・ブリオン 

¥104,500~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ペサック・レオニャン
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン

他の5大シャトーと比べると、メルローの比率が高いのが特徴。
やや近寄りがたい雰囲気をまとっていながらも、味わいは芯の通ったボディながらもしなやかさを併せ持っています。
果実味ととともにミネラルもしっかりと感じられ、ノーブルな印象の強いワインです。

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セカンド・ワインながらブドウの質は圧倒的
Le Clarence de Haut-Brion
ル・クラレンス・ド・オー・ブリオン

¥28,600~ (税込)/750ml 

生産地:フランス / ボルドー / ペサック・レオニャン
品種:カベルネ・ソーヴィニョン / メルロー / カベルネ・フラン / プティ・ヴェルド

2006年までは、シャトー・バーン・オー・ブリオンとしてリリースされていたセカンド・ワイン。
翌年より、「クラレンス・ド・オー・ブリオン」としてリニューアルされました。

こちらは、セカンド・ワインと言いながらも、使用されるブドウは、すべてファースト・ワインと同じ畑で収穫されたもの。
違いは樹齢だけで、そのほかの醸造や管理については、オー・ブリオンと同じ工程をたどります。

長期熟成も可能な、大変コストパフォーマンスのよい1本です。

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終わりに

いかがでしたでしょうか?

フランスにとどまらず、世界的に見てもトップクラスの品質と言われる5大シャトーを見てまいりました。
どのシャトーも長い歴史の中、さまざまな困難をくぐり抜けながら品質名声を守り続けています。

気軽にトライできる価格帯ではありませんが、もしその機会がありましたら、その歴史に思いを馳せながらお楽しみいただければ幸いです。