ブルゴーニュの名だたるグラン・クリュの中でも異彩を放つ、コルトン・シャルルマーニュ。
黄金色に輝く色調、濃密にして繊細な酸とミネラルを併せ持つこのワインは、世界中の愛好家から愛さています。
モンラッシェやムルソーから離れ、赤ワインの主たる産地にありながら、世界最高峰の白ワインを生み出す重要なグラン・クリュ(特級畑)です。
この記事では、コルトン・シャルルマーニュの成り立ちや特徴に始まり、相性の良い料理、知っておきたい生産者までをご紹介いたします。
コルトン・シャルルマーニュとは?
画像出典:※Instagram @masayo_swiss さんより
コルトン・シャルルマーニュとは、コート・ドール(黄金の丘)の南側、コート・ド・ボーヌ地区に位置するグラン・クリュ(特級畑)であり、そこからから生み出される白ワインのことです。
このグラン・クリュは、ラドワ・セリニィ、アロース・コルトン、ペルナン・ヴェルジュレスの3つの村にまたがり、「コルトンの丘」と呼ばれる標高400メートルほどの丘陵地の斜面上部に約160ヘクタールにわたって広がっています。
ちなみに、これらの村で生産されるワインの大半は赤ワインで、グラン・クリュから造られる赤ワインはコルトンと呼ばれます。
モンラッシェと並び、コート・ド・ボーヌ地区の2大白ワインの1つに数えられるコルトン・シャルルマーニュは、シャルドネ100%から造られ、樽でしっかりと熟成させた重厚なボディが特徴で、10年から20年もの熟成にも耐えられる偉大な白ワインです。
コルトン・シャルルマーニュの特徴
画像出典:※Instagram @mylittleburgundy さんより
「コルトンの丘」上部の斜面は、石灰質を主とする土壌で水捌けもよく、シャルドネの栽培に非常に適した土地。
日中は十分な日照量を確保でき、ブドウが完熟する条件が揃っています。
コルトン・シャルルマーニュの赤?
コルトン・シャルルマーニュは白ワインとご説明いたしましたが、実は少量ながら赤ワインも造られており、違う名称で呼ばれます。
先ほど、コルトンと呼ばれるグラン・クリュの赤ワインがあると述べましたが、コルトン・シャルルマーニュが生まれる畑で赤ワインを造ると、コルトンという違う名称に。
逆に、コルトンの畑で作る白ワインは、コルトン・シャルルマーニュは名乗れず、コルトン・ブランと呼ばれるので、お気を付けください。
コルトン・シャルルマーニュの歴史
画像出典:※Instagram @mmonarchy_or_bustさんより
コルトン・シャルルマーニュの歴史を辿ると必ず出会う人物が、「カール大帝」(フランス語でシャルルマーニュ大帝)です。
中世(9世紀ごろ)のヨーロッパ全土を治めた偉人で、ワインをこよなく愛する人物だったそう。
コルトン・シャルルマーニュにも畑を所有していたと言われています。
真偽のほどは分かりませんが、ここからが面白いエピソード。
カール大帝は、しょっちゅう赤ワインで自慢の髭を濡らしていました。
業を煮やした王妃は、植えてあるピノ・ノワールを引き抜き、白ワイン用のピノ・ブランやアリゴテを植えるよう命じたという逸話が残っており、これがコルトン・シャルルマーニュの始まりと言い伝えられています。
私たちが知っている現在のシャルドネから造られるコルトン・シャルルマーニュは、後ほどご紹介するルイ・ラトゥールという生産者が生み出したと言われています。
19世紀末、世界中のブドウ樹を襲った害虫「フィロキセラ」によって、コルトンの丘のアリゴテやピノ・ノワールは甚大な被害を受けることに。
植え替える際に、ルイ・ラトゥールの4代目当主がシャルドネを植樹したことが始まりでした。
そして、はるか昔にこの地に畑を所有していたカール大帝(シャルルマーニュ大帝)へのオマージュとして、コルトン・シャルルマーニュと名付けられた背景があります。
味わいは?料理との相性は?
画像出典:※Instagram @mwinerinakichi さんより
コルトン・シャルルマーニュの味わいは、グラン・クリュの名にふさわしく、完熟したシャルドネに由来する濃密な味わい。
重厚な骨格に、美しい酸とミネラルが調和します。
モモやリンゴといったフルーツのアロマに、ハチミツや樽熟成からくるブリオッシュなどの香ばしい香りが続きます。
画像出典:※Instagram @mrobuchon_tokyo さんより
合わせる料理は、オマールエビなどの甲殻類を使用した味わいのしっかりしたものがおすすめです。
また、ねっとりと舌に絡みつくフォアグラのポアレも、コルトン・シャルルマーニュの力強い味わいに負けません。
ソース・オランデーズやソース・アメリケーヌといった濃厚なソースを使った料理も好相性です。
主要生産者をご紹介
ここからは、コルトン・シャルルマーニュを知るうえで、必ず押さえてお行きたい生産者をご紹介いたします。
Bonneau du Martray
ボノー・デュ・マルトレイ
コルトン・シャルルマーニュ 2019
生産地:フランス / ブルゴーニュ / コルトン・シャルルマーニュ
品種:シャルドネ 100%
コルトン・シャルルマーニュの代名詞ともいえる生産者、ボノー・デュ・マルトレイ。
ブルゴーニュで唯一、所有する畑はすべてグラン・クリュという稀有なドメーヌです。
生産量に上限を設け、決して営利主義に走らない徹底したスタイル。
現在は、100%ビオディナミ農法を実践し、常に最高品質を追求しています。
Louis Latour
ルイ・ラトゥール
コルトン・シャルルマーニュ 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ / コルトン・シャルルマーニュ
品種:シャルドネ 100%
ブルゴーニュにおいて、最大規模のグラン・クリュを所有する、ルイ・ラトゥール。
約300年近く家族経営を貫いており、ネゴシアン(ワイン仲買商)として創業しましたが、徐々に自社畑を拡充していきました。
ルイ・ラトゥールは、19世紀末フィロキセラ(害虫)によって荒廃した畑にシャルドネを植樹し、現在のコルトン・シャルルマーニュを生み出した背景があり、このグラン・クリュを代表する生産者として名を馳せています。
Domaine Faiveley
ドメーヌ・フェヴレ
コルトン・シャルルマーニュ 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ / コルトン・シャルルマーニュ
品種:シャルドネ 100%
ネゴシアン(ワイン仲買商)としての印象が強いフェヴレですが、8つのグラン・クリュ(特級畑)と15ものプルミエ・クリュ(1級畑)を所有し、ドメーヌもの(自社畑)は全体の7割にも及びます。
フェヴレが所有するコルトン・シャルルマーニュの畑は、約0.6ヘクタールほどしかなく、リリースされるワインは非常に希少。
高樹齢のブドウから生み出されるワインは、凝縮した果実味に加え、非常に複雑味のある香りが特徴。
孤高のコルトン・シャルルマーニュとして、ぜひ一度は口にしたいワインです。
Joseph Drouhin
ジョセフ・ドルーアン
コルトン・シャルルマーニュ 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ / コルトン・シャルルマーニュ
品種:シャルドネ 100%
1880年創業の名門ネゴシアン(ワイン仲買商)、メゾン・ジョセフ・ドルーアン。
ビオディナミ農法100%で栽培された自社畑のブドウを使用し、コルトン・シャルルマーニュのテロワールを最大限に反映させています。
大手らしく安定した品質、完成度が魅力で、贈答にも最適なワインです。
Domaine des Heritiers Louis Jadot
ドメーヌ・デ・エリティエ・ルイ・ジャド
コルトン・シャルルマーニュ 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ / コルトン・シャルルマーニュ
品種:シャルドネ 100%
1859年に創業したルイ・ジャド社は、ブルゴーニュ屈指のネゴシアン(ワイン仲買商)。
畑の所有形態により名称が変わりますが、このドメーヌ・デ・エリティエ・ルイ・ジャドは、ジャド家が代々継承してきた自社畑のもの。
ルイ・ジャド社にとってコルトン・シャルルマーニュの畑は、1914年から所有するもっとも古い畑の1つです。
卓越した品質のグラン・クリュながら、コストパフォーマンスに優れたワインです。
Tollot Beaut
トロ・ボー
コルトン・シャルルマーニュ 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ / コルトン・シャルルマーニュ
品種:シャルドネ 100%
トロ・ボーの歴史は1880年まで遡る、由緒あるドメーヌ。
代々家族経営を続け、ブルゴーニュでいち早くドメーヌ元詰めを始めた生産者の1つです。
所有する畑はコルトンの丘の最上部にあり、絶好の立地を誇ります。
樹齢50年にも達するシャルドネから造られ、生産量も極めて少ない希少なワイン。
芳醇かつ密度のあるスタイルで、長期熟成のポテンシャルを備えています。
終わりに
ブルゴーニュ最高峰の白ワインと言われるコルトン・シャルルマーニュについて、成り立ちや歴史、ぜひ押さえておきたい生産者までを見てまいりました。
コルトン・シャルルマーニュはグラン・クリュとしては広大な面積を誇り、エリアや生産者の違いによって生まれる個性も多種多様。
このような多様性を愛でるのもブルゴーニュワインの醍醐味ですので、ぜひ好みのスタイルや生産者を見つけてお楽しみいただければと思います。
また、ワインの奥深い魅力をもっと知りたい、追及したいという方におすすめしたいのが、「ワインが主役」をコンセプトに掲げるレストラン、レヴェランス R(アール)。
ワインの古酒(20年~30年熟成したもの)に焦点を当て、料理とのマリアージュを提案します。
画像出典:※Instagram @reverence_r_ さんより
なかなか出会うことのできない熟成したワイン1本を、料理と共に時間をかけてじっくりと味わう愉しみ。
レストランでありながら、ワインスクールのように、さまざまなワインの変化を体験できる、稀有な空間です。
熟成したコルトン・シャルルマーニュは、より深い黄金色になり、ハチミツや溶かしたバターのような濃密で官能的な香りが楽しめます。
より深いワインの世界を体験したい、好奇心溢れる方には最適なレストランですので、ぜひ一度訪れてみてください。