ムルソーは、ブルゴーニュを代表する白ワインの銘醸地!世界有数の造り手が織りなす名品をご紹介します。

ワインの名前には、地名が含まれることがあります。
あまりワインに詳しくない方も、「シャンパーニュ」や「モンラッシェ」、「シャブリ」といった名前を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
これらの名前は、すべて価値ある銘醸地の名前がワインの種類のように使われているもの。
そして、今回のテーマ「ムルソー」もそんな銘醸地のひとつです。

白ワインの銘醸地として名を馳せるブルゴーニュ地方。
ムルソーは、ブルゴーニュで3本の指に入るほど優良なぶどう畑を持つ一帯の名前です。
グラン・クリュ(特級畑)を持たない地域としては、その評価の高さは例外的で、ムルソーの名を冠する白ワインは、「白ワインの王様」と呼ばれ5つのグラン・クリュを擁するモンラッシェと並ぶブルゴーニュ地方最高峰の銘柄として愛されています。

このように白ワインの銘醸地として名高いムルソーですが、実は、その名が世界に轟くのは1970年以降から。
どんな経緯でムルソーがここまで有名になったのか、ちょっと気になりますよね。

ということで今回は、ムルソーの逸話からスタートし、産するワインの特徴から、代表的な生産者やおすすめのムルソーワイン10選まで網羅的にお伝えします。
早速見ていきましょう!

白ワインの銘醸地としての歴史は1970年代から

現在では、白ワインの銘醸地として世界にその名前を轟かせるムルソー。
しかし、その歴史は意外にも1970年代に幕を開けます。

冒頭でもお伝えしたとおり、ムルソーは、白ワインの銘醸地ブルゴーニュ地方で3本の指に入るほど優良なぶどう畑を持つ地域です。
「グラン・クリュを持たないことが信じられない」とさまざまな場面で目にしますがそれもそのはず。
実は、格付け制度が導入された当時、高額な税金をかけられることになるのを嫌い、グラン・クリュの格付けを拒否していたのです。

しかし、この判断がゆえに、1960年代までは苦難の時代を過ごすこととなりました。
当時ムルソーの生産者たちは、グラン・クリュではないがゆえにぶどうを買い叩かれてしまっていたのです。
1950年代までは、良質なシャルドネの産地であるにも関わらず、販売価格は赤ワインが白ワインを上回っていました。
ムルソーといえば白ワインの銘醸地、と名が通った今では考えられないことです。

アメリカのシャルドネブームに乗って一躍世界のスターに

このように苦難の時代を過ごしてきたムルソーが一躍脚光を浴びることになったきっかけは、1980年代はじめにアメリカで巻き起こったシャルドネブームでした。
こぞってフランスを訪れたアメリカのバイヤーたちは、繊細でエレガント、そしてなんといっても高価な「モンラッシェ」ではなく、ムルソーに目をつけたのです。

当時のムルソーワインの味わいのスタイルは「ふくよか、濃厚、こってり」という言葉がぴったりなオーク樽の香りが良く効いたものでした。
このムルソーワインの味わいは、アメリカの人々の趣向にしっくりとマッチ。
その上手頃な価格ということもあり、ムルソーの名は一気に世界に轟くことになったのでした。

ムルソーの魅力は、熟成とそのギャップ

ムルソーの魅力としてよく言われるのは、若いワインと熟成を経たワインの味わいのギャップです。
若いワインは、華やかな果実味とミネラル感、そしてしっかりとした骨格を感じる芳醇な味わいですが、時を経るごとに芳醇さは柔らかさやまろやかさへと変化し、ボリューム感の中に上品さや繊細さがたち現れるのです。

ちなみに、ムルソーの白ワインは「白ワインの女王」とも言われる繊細でエレガントな味わいが特徴のぶどう品種、シャルドネで造られるワインです。
シャルドネは、その上品さを保ったままで、土地や熟成の個性を見事に反映できるという特徴を備えています。
かつては、そんなシャルドネの特徴を活かし、こってりと芳醇なオーク樽の香りを効かせたワイン造りが主流でしたが、世界的な人気を経て現在では、樽香を控え「繊細で上品なシャルドネならではの魅力」を活かしたワインも造られています。

ムルソーを代表するプルミエ・クリュ(1級畑)

ムルソーの魅力は、なんと言っても非常に質の高い村名ワインにあります。
「村名ワイン」とは、その村や土地にある、複数の畑のぶどうを混ぜて造られたワインのことです。
ムルソーでは、それぞれの畑の質が高いので、村名ワインの質も自然と高くなるんですね。

ブルゴーニュ地方では、ワインの格付けは上から「グラン・クリュ(畑名)」「プルミエ・クリュ(畑名)」「村名」「地区名」「地方名」の順です。
そして、グラン・クリュのないムルソーでは、最上級のワインの名前は「村名+等級(1級)+畑名」で記載されます。

ということで、ムルソーワインのなかでも特に美味しいワインに出会いたい!という方向けに、代表的な6つのプルミエ・クリュ(1級畑)をご紹介します。

ペリエール
最も高く評価されているムルソーの銘醸畑。長期熟成にも適し、柔らかさを力強さを併せ持つ。
ジュヌヴリエール
世界的に人気の高い銘醸畑。
ブシェール
日照に恵まれており、凝縮感のある果実味がふくよか。濃厚な味わいと柔らかな印象があります。
ポリュゾ
繊細でありながら芯がしっかりとしたミネラリーな味わい。
シャルム
ムルソーで最も大きいプルミエ・クリュ(1級畑)。ふくよかで肉感的と言われる芳醇な味わいが特徴的。
ブラニー
ピュリニー・モンラッシェに隣接。ミネラル豊富で酸がしっかりと感じられる爽やかさが魅力。

ムルソーを代表し、双璧をなす2大生産者

ムルソーには、双璧をなす大変有名な造り手がいます。
「コント・ラフォン」と「コシュ・デュリ」です。
ここからは、そんな2大シャトーをご紹介します。

「ムルソーのスペシャリスト」コント・ラフォン

コント・ラフォンといえばムルソー、ムルソーといえばコント・ラフォン。
白ワインの造り手として特に有名で、ムルソーを語る上で書くことができない存在です。
ムルソーのスペシャリストととも呼ばれ、そのワイン造りの技術の高さは同業者からも手放しで称賛されるほど。
ムルソーの白ワインを飲んでみたいならまず始めに検討したいシャトーです。

「ムルソーの神様」コシュ・デュリ

コント・ラフォンやルフレーヴ(ブルゴーニュを代表する白ワインの造り手。ピュリニー・モンラッシェ村を本拠地とする)と共に、「世界最高の白ワイン生産者」として必ず挙がるのが、コシュ・デュリです。
いち早く樽香を控えた白ワインを造り始めたことでも有名で、生産本数の少なさから、最も手頃な村名ワインでも5万円近くする大変人気な造り手となっています。
なかでも、コシュ・デュリの手掛けるコルトン・シャルルマーニュは幻のワインとも呼ばれ、ロマネ・コンティのモンラッシェとも並び称される正真正銘の「白ワインの最高峰」です。

ムルソーのおすすめワイン5選

さて最後に、おすすめのムルソーワインを5銘柄、ご紹介します。
村名ワインを始め、今回の記事でご紹介したプルミエ・クリュのワインもピックアップしましたので、参考にしてみてください。

【コント・ラフォン】ムルソー


ムルソーを代表する「コント・ラフォン」が手掛ける、村名ワイン。
プルミエ・クリュであるジュヌヴリエールやシャルム、グット・ドールなどの若樹から収穫されるぶどうも使われています。
参考価格:¥19,000~

【コント・ラフォン】ムルソー プルミエ・クリュ ペリエール


コント・ラフォンが手掛ける「ムルソー プルミエ・クリュ ペリエール」は、”最も優れたムルソー”とも称されるプルミエ・クリュ「ペリエール」から収穫されるぶどうで造られる珠玉の銘品。
「ペリエール」とは「石切り場」という意味。
ミネラルが豊富な土壌で生育するペリエールのぶどうは長期熟成にも適し、柔らかさを力強さを併せ持つ味わいを愉しむことができます。
参考価格:¥40,000~

【コント・ラフォン】ムルソー・プルミエ・クリュ・ジュヌヴリエール


「ジュヌヴリエール」は、”最も優れたムルソー”とも称されるプルミエ・クリュ「ペリエール」のすぐ隣に位置する畑です。
コント・ラフォンが「ジュヌヴリエール」のぶどうで手掛ける「ムルソー・プルミエ・クリュ・ジュヌヴリエール」は、熟した果実のような芳醇さとミネラル感がエキゾチックな魅力を持つ白ワインに仕上がっています。
参考価格:¥34,000~

【ドメーヌ・ルフレーヴ】ムルソー プルミエ・クリュ スー・ル・ド・ダ-ヌ


ドメーヌ・ルフレーヴは、ピュリニー・モンラッシェに本拠地を置く、名門ドメーヌです。
白ワインの造り手として非常に高く評価されています。
ピノ・ノワールからシャルドネに植え替えたという異色の経歴を持つプルミエ・クリュ「スー・ル・ド・ダ-ヌ」のぶどうで造られる「ムルソー プルミエ・クリュ スー・ル・ド・ダ-ヌ」。
華やかなアロマと果実味にしっかりと酸とミネラルが感じられる、濃厚な味わいです。
参考価格:¥23,000~

【ピエール・モレ】ムルソー プルミエ・クリュ ペリエール


ピエール・モレは、コント・ラフォンやコシュ・デュリとも並び称されるムルソーの偉大な造り手。
ムルソーで最も高く評価されているプルミエ・クリュ、ペリエールの畑から収穫される力強いミネラル感が魅力の逸品です。
参考価格:¥21,500~

世界に誇るブルゴーニュの最高峰白ワイン「ムルソー」で乾杯!

ムルソーの白ワインは、その品質に対して手の届きやすい価格の銘柄が多いのが嬉しいところです。
飲んでみたいな、と思っていただけたなら、ぜひご自身の予算にあうワインを生産者や畑の名前で探してみてください。

皆さんがもっと白ワインを好きになるひとつのきっかけとなれていましたら幸いです。
ムルソーワインと素敵な時間が過ごせますように!