シェリー酒と聞くと、「食前酒」といったイメージを持たれる方が多いかもしれません。
ですが、シェリー酒の種類はとても多様で、もちろん食前酒にもぴったりですが、食中酒や食後のデザートワインとしても楽しめる万能選手。
大きく10種類ほどのタイプに分けられ、合わせるお料理の幅もとても広いのが特徴です。

この記事では、シェリー酒の基本から、多彩な種類、手軽に楽しめるアイテムまでご紹介いたします。

シェリー酒とは?

シェリー酒とは、スペインのアンダルシア地方ヘレスという地域で造られる酒精強化ワインの一つ。
タイプは白ワインに分類されますが、色調は通常の白ワインの色から琥珀色、味わいは辛口~極甘口まで実に多種多様です。
香りもナッツを思わせる独特なもので、イギリスを中心にヨーロッパで長く親しまれてきた歴史があります。

日本ではシェリー酒と呼ばれるのが一般的ですが、世界には下記のようないくつかの呼び名があります。
(※本記事では、シェリー酒と統一します。)

スペイン語
ビノ・デ・ヘレス
Vino de Jerez
フランス語
ケレス
Xerez
英語
シェリー
Sherry

このように、国によって複数の呼び名がありますが、原産地呼称法と呼ばれるワイン法で定められた名前があり、上記3つの呼び方をつなげた「ヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xerez-Sherry)」が正式名称です。
このワイン法は、特定の地域の名称を保護する目的があるので、他の国や地域において同じブドウ品種を使って同じ製法でワインを造ったとしてもシェリー酒と名乗ることはできません

シェリー酒は酒精強化ワインの一つ

酒精強化ワインとは、醸造の過程でブランデーを添加することによって、アルコール度数を高めたワインのこと。
ワインの酸化を防ぎ、保存性を高める効果があります。
シェリー酒の場合、甘口タイプを除いて、アルコール発酵後にブランデーを添加します。

※甘口タイプの場合、アルコール発酵の途中でブランデーを添加し、発酵を止めることで糖分を残します。

アルコール度数は、シェリー酒の場合、15~22度と通常のワインよりも高いのが特徴
今回ご紹介するシェリー酒に加え、ポートワインマデイラワインも酒精強化ワインの仲間で、この3つはまとめて、「世界3大酒精強化ワイン」と呼ばれます。

シェリー酒の産地

シェリー酒の産地は、スペインの南西部、アンダルシア地方にある下記の3つの街を中心に広がっており、通称「シェリーの三角地帯」と呼ばれています。

ヘレス・デ・ラ・フロンテラ
サンルカール・デ・バラメーダ
エル・プエルト・デ・サンタ・マリア

へレス地方は大西洋側に位置し、ブドウの生育期にはめったに雨は降らず、年間300日以上晴れが続く、非常に乾燥した気候です。
この地域の特徴として、アルバリサという、白く保水力に優れた土壌があり、この地でのブドウ栽培のキーポイントです。
産地全体の90パーセントを占めるこの土壌は、雨季に降った雨を蓄え、夏の雨の少ない生育期に、ブドウ樹へ大切な水分を供給します。

シェリー酒を生みだすブドウ3品種

シェリー酒に使用されるブドウ品種は、全部で3種類。
次の章で詳しくご紹介いたしますが、たった3種類のブドウから10種類ほどのシェリー酒が造られており、多様性に富んでいます。
まずは、ブドウ3品種をご説明いたします。

パロミノ
シェリー酒で使用される3品種のうち、約95パーセントを占めます。
果皮が薄く、香りや酸味も主張が少ないのが特徴で、シェリー造りに適したニュートラルなワインを造ることができる品種。
細かく見ると、パロミノ・フィノとパロミノ・デ・ヘレスの2品種があり、後者の方が希少で、高品質とされています。

モスカテル(マスカット・オブ・アレクサンドリア)
世界中で栽培されているマスカット系ブドウの一種です。
フローラルで、モモなどの果物をイメージさせる香りが最大の特徴。
ペドロ・ヒメネスと同様に、甘口タイプの生産にのみ使用されます。

ペドロ・ヒメネス
ヘレスでの栽培面積はそれほど広くはない品種。
果皮が薄いのを利用して、天日に干し、糖度を凝縮させた干しブドウのようにして、極甘口タイプを造るのに使用されます。

シェリー酒の種類

シェリー酒には、辛口~極甘口までさまざまなタイプがあります。
辛口タイプ (ビノ・へネロソ)、中甘口~甘口タイプ (ビノ・へネロソ・デ・リコール)、極甘口タイプ (ビノ・ドゥルセ・ナトゥラル)の3タイプがあり、下記のように分類できます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

辛口
フィノ
マンサニージャ
アモンティリヤード
オロロソ
パロ・コルタド
中甘口~甘口
ミディアム
ペール・クリーム
クリーム
極甘口
モスカルテル
ペドロ・ヒメネス

辛口タイプ

この辛口タイプは、スペイン語でビノ・へネロソと呼ばれ、主に食前や食中に楽しまれることが多いタイプです。

フィノ (Fino)
品種:パロミノ
アルコール度数:15〜17%
フロールを残す作り方をしたシェリー酒。
白ワインのような色調で、すっきりとしていてフレッシュさを感じられます。

マンサニージャ (Manzanilla)
品種:パロミノ
アルコール度数:15〜17%
海風のあたる地域で作られたシェリー酒。
そのため、フィノと同じ作り方をしていますが、塩味が感じられる味わいが特徴です。

アモンティリャード (Amontillado)
品種:パロミノ
アルコール度数:16〜22%
ナッティな香りが豊かで、フレッシュなフィノと、厚みのあるオロロソの中間のような味わいがします。

オロロソ (Oloroso)
品種:パロミノ
アルコール度数:17〜22%
濃い琥珀色であることが特徴。
ドライフルーツのような香りが豊かで、厚みのある味わいです。

パロ・コルタド (Palo Cortad)
品種:パロミノ
アルコール度数:15〜22%
香り高くまろやかな味わいが特徴。
フィノにしようとしていたものを、途中からオロロソにしようとしてできたシェリー酒です。

中甘口~甘口タイプ

こちらは、ビノ・へネロソ・デ・リコールと呼ばれる中甘口~甘口のシェリー酒。
食中では、お肉料理やエスニックな感じのお料理と合わせやすいのが特徴。
もちろん、スイーツとの相性もよいです。

ミディアム (Medium)
品種:パロミノ
アルコール度数:15〜22%
アモンティリャードに糖分を加えて甘くしたシェリー酒。
色調は琥珀色をしており、香り高く味わいは軽やかです。

ペール・クリーム (Pale Cream)
品種:パロミノ
アルコール度数:15〜22%
ほどよく酸味も感じられる、白ワイン色をしたシェリー酒。
フィノやマンサニージャに糖分を加えて作られます。

クリーム (Cream)
品種:パロミノ
アルコール度数:15〜22%
オロロソに糖分を加えて作り、濃い琥珀色が特徴。
色だけでなく、厚みのある複雑な味わいもオロロソと似ています。

極甘口タイプ

下記の2種類は、極甘口でビノ・ドゥルセ・ナトゥラルと呼ばれます。
濃い琥珀色が特徴で、食後に単体で楽しむか、アイスクリームなどのシンプルなスイーツと合わせるのがよいです。

モスカテル (Moscatel)
品種:モスカテル
アルコール度数:15〜22%
名前にもなっているブドウ品種、モスカテルを干しブドウにして造られます。
マスカットのような爽やかな香り特徴。

ペドロ・ヒメネス (Pedro Ximenez)
品種:ペドロ・ヒメネス
アルコール度数:15〜22%
モスカルテルと同様に、干しブドウにすることにより、糖度が高く非常に濃厚な極甘口ができます。

シェリー酒独自のソレラ・システムとは?

シェリー酒造りの第一段階は、アルコール発酵の完了した辛口の白ワインに、ブランデーを添加し酒精強化することです。
そして、樽に移し熟成させますが、ここからがシェリー酒独特の造り方となります。

通常は、空気との接触を防ぐために樽いっぱいにワインを入れますが、シェリー酒では7割程度にとどめるのが特徴。
すると、樽内のワインの表面に、産膜酵母フロールと呼ばれる薄い被膜を張ります。
このフロールが空気との接触による酸化を適度に防ぐとともに、フロール香と呼ばれるシェリー酒特有のナッティな風味を与えます。

その後、ワインの入った樽を3~4段に積み重ねますが、上段から下段にいくにしたがって古いものとなるようにします。
瓶詰めする際には、最下段の樽からワインを一部取り出しますが、このとき樽内のワインを3分の2以上残すのがポイント。
取り出された分量を、すぐ上の樽から補充することで、各樽のワインの品質を常に一定に保つことができるのです。
このように、複数の樽のワインをブレンドしながら味わいを保つ方法をソレラ・システムと言います。

シェリー酒の楽しみ方

シェリー酒には辛口~極甘口までさまざまなタイプがありますので、食前、食後に関わらず楽しみ方は実に多彩

フィノマンサニージャなどの辛口のものは、そのまま食前や食中に楽しむのが一般的です。
シェリー酒を使用したカクテルは、シェリー・トニックアドニスと呼ばれるものが有名。

アペタイザーとして、アンダルシア地方の特産品であるイベリコ豚の生ハム(ハモン・イベリコ)に辛口のシェリー酒を合わせるのは王道。
ドングリを食べて育ったイベリコ豚の生ハムは、ナッツの香りが特徴。
シェリー酒特有のナッティなニュアンスと合わせることで、相乗効果が生まれます。

そのほかには、魚介類を使用したお料理との相性がよいです。
また、色が濃いアモンティリーャドオロロソは、中華お肉料理のようなしっかりした味わいのものがよいでしょう。

甘口タイプは、デザートと合わせるのが一般的です。
そこでおすすめなのが、アイスクリームにかける食べ方。
例えば、ペドロ・ヒメネスの濃縮したレーズンのような味わいは、アイスクリームと非常に相性がよく、甘さに深みが加わりリッチなデザートに早変わりします。

商品紹介

ここからは、スペインを代表する生産者のさまざまなタイプのシェリー酒をご紹介いたします。
価格も非常にお求めやすいアイテムを揃えましたので、もし気になるシェリー酒がありましたら、ぜひお試しいただければと思います。

世界で最も有名なシェリーメーカー
Gonzalez Byass Tio Pepe
ゴンザレス・ビアス ティオ・ペペ

¥1,395 (税込)/750ml 

生産地:スペイン / アンダルシア州 / ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ地区
品種:パロミノ

1835年の創業以来、ヘレスの町で最も大きいシェリーメーカー。
このティオ・ペペは、イギリスへ初輸出以来、160年以上に渡って愛され続けている1本。
現在でも、辛口シェリーの代名詞的存在で、世界100ヶ国以上の人々に愛飲されています。

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13世紀から続く家族経営
Valdespino Deliciosa Manzanilla
バルデスピノ デリシオーサ マンサニージャ

¥2,119 (税込)/750ml 

生産地:スペイン / アンダルシア州 / サンルーカル・デ・バラメダ
品種:パロミノ

へレスで最も歴史あるシェリーメーカーのひとつ、バルデスピノ社。
13世紀からワイン作りを始めて以来、何世代にもわたる家族経営によって育まれた個性と品質は、移り行く時の流れの中でも変わることはありません。

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「これ以上は無い」という意味のシェリー酒
Sanchez Romate Amontillado NPU 15y
サンチェス・ロマテ アモンティリャード ノン・プリュ・ウルトラ 15年

¥2,475 (税込)/750ml 

生産地:スペイン / アンダルシア州 / ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ
品種:パロミノ・フィノ

サンチェス・ロマテ社の創業は古く、1781年まで遡ります。
その長い歴史に裏打ちされた伝統的な手法を現在でも守り続けています。

NPU(ノン・プリュ・ウルトラ)=「これ以上は無い」という意味をつけられたシェリー酒。
厳選したフィノを15年以上熟成させ、同社の中でも最高峰に位置づけられるアモンティリャードです。

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重厚な味わい
Osborne Bailen Oloroso 7y
オズボーン バイレン ドライ・オロロソ 7年

¥2,791 (税込)/750ml 

生産地:スペイン / アンダルシア州 / プエルト・デ・サンタマリア
品種:パロミノ

オズボーン社は1772年、イギリス出身のトーマス・オズボーン・マン氏によって設立されました。
この年、トーマス氏の友人であるジェームス・ダフ氏がカディスの英国大使館大使に就任。
彼の名前のもと、シェリー酒の輸出が開始され、その貿易会社として起こったのがオズボーン社でした。
以来、英国王室やベルギー王室、ロシア宮廷から注文を受けるまでに発展したシェリーメーカーです。

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Gonzalez Byass Leonor Paro Cortado
ゴンザレス・ビアス レオノール パロ・コルタド

¥3,080 (税込)/750ml 

生産地:スペイン / アンダルシア州 / ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ地区
品種:パロミノ

ゴンザレス・ビアス社の造るパロ・コルタド。
樽熟成に由来する心地よい香ばしさが心地よい1本。
非常に力強い味わいで、長い余韻が楽しめます。

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和・洋・中を選ばない万能シェリー酒
Osborne 10RF Medium
オズボーン 10RF ミディアム

¥2,648 (税込)/750ml 

生産地:スペイン / アンダルシア州 / プエルト・デ・サンタマリア
品種:パロミノ / ペドロ・ヒメネス

オズボーン社のミディアム・タイプのシェリー酒。
オロロソをベースに、極甘口のペドロヒメネスを少量ブレンド。
和・洋・中を選ばず、エスニック料理など、スパイスのきいたものにもよく合います。

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なかなか見かけない希少なモスカテル
Valdespino Moscatel Promesa
バルデスピノ モスカテル プロメサ

¥2,944 (税込)/750ml 

生産地:スペイン / アンダルシア州 / ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ
品種:モスカテル

モスカテルは元々リリース自体が非常に少なく、この商品のようなスタンダードタイプでも非常に貴重。
レモンティーを思わせる上質でソフトな酸と甘みのバランスが特徴。
見つけたらぜひトライしていただきたい1本です。

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12年熟成の極甘口
Valdespino El Candado Pedro Ximenez 12y
バルデスピノ エルカンダド ペドロヒメネス 12年

¥2,599 (税込)/750ml 

生産地:スペイン / アンダルシア州 / ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ
品種:ペドロ・ヒメネス

エル・カンダドとは「南京錠」の意味で、ボトルキャップに南京錠が使用された、とてもユニークなボトルでリリースされています。
12年に及ぶ熟成で、ドライフルーツを思わせる複雑な香りが特徴の1本。
凝縮したレーズンのような甘みは、アイスクリームとの相性が抜群です。

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さまざまなタイプのシェリー酒を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?

色調も味わいもまちまちで、楽しむシーンを選ばない万能選手のシェリー酒。
ぜひお好みのタイプを見つけて、普段の生活に取り入れてみてください。