ブルゴーニュ・ワインを飲み始めると、「シャンボール・ミュジニー」というワインの名前を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ブルゴーニュで「もっとも女性的」なワインといわれ、繊細でエレガントといった表現がぴったりのワインで、多くの愛好家たちから愛されています。
シャンボール・ミュジニーには、「ミュジニー」、「ボンヌ・マール」というグラン・クリュ(特級畑)の2枚看板に加え、「レ・ザムルーズ」(恋する乙女たち)という素敵な名前のプルミエ・クリュ(1級畑)を擁する銘醸地。
多くのワインラヴァーを惹きつけるシャンボール・ミュジニーの魅力を探っていきましょう。
※この記事は、ソムリエが監修を行っております。(最終更新日:2021/12/14)
シャンボール・ミュジニーはどんなところ?
画像出典:※Instagram @pierre.shanghai さんより
シャンボール・ミュジニーは、コート・ドールの北側、コート・ド・ニュイ地区に位置します。
北側をモレ・サン・ドニ、南側をヴージョに挟まれた非常に小さな村で、生産者も20名程度しかいません。
小さいながらも、ブルゴーニュを代表する「ミュジニー」や「ボンヌ・マール」といった偉大なグラン・クリュ(特級畑)の赤ワインが生まれ、「もっとも女性的」と評されるシャンボール・ミュジニー。
その特徴は、非常にシルキーな口当たりで、エレガントな酸とミネラルが、多くの愛好家たちの心を掴んで離しません。
コート・ド・ニュイ地区のワインは、ジュヴレイ・シャンベルタンなどをはじめ、酸味や渋み(タンニン)の強いタイプが多い中、なぜシャンボール・ミュジニーでは、エレガントなワインが生まれるのか?
さっそくその秘密を見ていきましょう。
女性的な味わいが生まれる秘密
画像出典:※Instagram @muyiwine さんより
シャンボール・ミュジニーのワインが、女性的な味わいと言われる理由の1つに、土壌が挙げられます。
シャンボール・ミュジニーの最大の特徴は、他の村と比べて粘土質が少なく、石灰質を主としたとした土壌。
地中深くまで根を張ったブドウ樹は、石灰質から豊富なミネラル分を吸い上げ、できるワインに繊細さをもたらします。
また、もう1つの要因は標高です。
比較的標高が高く、冷涼な気温で推移するため、ブドウが熟しすぎることなく、十分な酸を保持したまま収穫することができます。
そのおかげで、シャンボール・ミュジニーの特徴である、繊細な酸とミネラルをたたえた、エレガントで洗練されたワインが生まれるのです。
シャンボール・ミュジニーを代表する畑
画像出典:※Instagram @pchienhsingwu さんより
ここからは、シャンボール・ミュジニーを語るうえで外すことのできない畑を、グラン・クリュ(特級畑)とプルミエ・クリュ(1級畑)に分けてご説明いたします。
シャンボール・ミュジニーの2大グラン・クリュ
ブルゴーニュのグラン・クリュの中でも、特別視される「ミュジニー」と「ボンヌ・マール」。
それぞれ村の南側と北側に位置し、同じ村にありながら独自の個性を発揮しています。
✓ミュジニー Musigny
ブルゴーニュの中でも最上の赤ワインのひとつに数えられるグラン・クリュ(特級畑)、ミュジニー。
シャンボール・ミュジニーの南側に位置し、ご説明した通り石灰質がメインの土壌です。
ミュジニーは、非常に繊細でありながら、どこか張り詰めた緊張感を思わせるミネラル感、そして芯の強さが、飲み手の琴線に触れます。
シルクのような舌触りと、いつまでも続く長い余韻は、「もっとも女性的」と例えられるシャンボール・ミュジニーを体現する、偉大なワインを生み出す畑です。
✓ボンヌ・マール Bonnes Mares
ボンヌ・マールは、シャンボール・ミュジニーとモレ・サン・ドニにまたがるグラン・クリュ(特級畑)。
こちらは村の北側にあり、南側と比べるとやや粘土質が多いのが特徴で、より力強いブドウが育ちます。
繊細でエレガントなシャンボール・ミュジニーのワインの中で、もっともしっかりとした骨格を持ち、卓越した熟成のポテンシャルを秘めます。
豊かなボディながら、洗練されたスタイルを失わないワインを生み出す畑です。
代表的なプルミエ・クリュ
シャンボール・ミュジニーには、24のプルミエ・クリュ(1級畑)がありますが、ここでは主要な5つの畑をご紹介いたします。
✓レ・ザムルーズ Les Amoureuses
「恋する乙女たち」を意味する、レ・ザムルーズ。
なんともロマンティックな名前で、日本でも高い人気を誇ります。
ミュジニーの畑に隣接しており、ミュジニーと同じく繊細で優美な味わいが特徴です。
✓レ・シャルム Les Charmes
レ・ザムルーズに次ぐプルミエ・クリュ(1級畑)で、場所も隣に位置します。
「シャルム」はチャーミングという意味で、名前の通り果実味も酸も丸みを帯びた親しみやすい味わいが特徴です。
✓レ・サンティエ Les Sentiers
ボンヌ・マールに隣接。
粘土質の多い土壌で、力強く凝縮した味わいが特徴です。
✓レ・クラ Les Cras
とりわけ石灰質が多く、より繊細でミネラルを感じられるワインを生み出す畑です。
✓レ・フュエ Les Fuees
ボンヌ・マールに隣接し、しっかりとした骨格が特徴。
シャンボール・ミュジニーにあって、野性味あふれる味わいが魅力です。
優良生産者の造るシャンボール・ミュジニーをご紹介
こちらでは、シャンボール・ミュジニーを代表する優良生産者を解説しながら、彼らの造るアイテムをご紹介いたします。
掲載ワインに加え、他のラインアップがある場合は、別リンクにてご紹介しております。
グラン・クリュやプルミエ・クリュは、やはり高価格になりますが、それ以外の村名ワインなどは、比較的リーズナブルにお求めいただけますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
Musigny Grand Cru V.V. 2017
ミュジニー グラン・クリュ ヴィエイユ・ヴィーニュ 2017
生産者:コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ Comte Georges de Vogue
生産地:フランス / ブルゴーニュ / シャンボール・ミュジニー
品種:ピノ・ノワール 100%
シャンボール・ミュジニー最高の生産者と言われる、コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ。
その歴史は1450年まで遡り、ミュジニー最大の所有者としても有名な老舗ドメーヌです。
樹齢25年以上の古樹しか使わず、ワイン名にある「V.V.(ヴィエイユ・ヴィーニュ)」=古樹が示す通り、樹齢への強いこだわりが感じられます。
ヴォギュエの造るミュジニーは、「究極のエレガンス」とも評され、世界中のコレクターが追い求めるワインです。
Bonnes Mares Grand Cru 2018
ボンヌ・マール グラン・クリュ 2018
生産者:ローラン・ルーミエ Laurent Roumier
生産地:フランス / ブルゴーニュ / シャンボール・ミュジニー
品種:ピノ・ノワール 100%
ヴォギュエと同様、シャンボール・ミュジニーでトップ生産者とされる「ジョルジュ・ルーミエ」を祖父に持つ、ローラン・ルーミエ。
1994年の設立から、ルーミエ家の長所をうまく取り入れながら、独自のワイン造りを推し進めてきました。
生産量が少ないのが難点ですが、価格の高騰が続くブルゴーニュ・ワインの中でも、まだ常識的な値段で購入することができる数少ない生産者の1人です。
Chambolle Musigny 1er Cru Les Amoureuses 2018
シャンボール・ミュジニー
プルミエ・クリュ レ・ザムルーズ 2018
生産者:ロベール・グロフィエ Roberet Groffier
生産地:フランス / ブルゴーニュ / シャンボール・ミュジニー
品種:ピノ・ノワール 100%
レ・ザムルーズ最大の所有者である、ロベール・グロフィエ。
本拠地はお隣の村モレ・サン・ドニですが、シャンボール・ミュジニーを代表する畑を多く所有しています。
平均樹齢50年の古樹から造られるレ・ザムルーズは、華やかな果実とスミレの香りと共に、果実味と酸、ミネラルが混然一体となった魅惑的な味わいが特徴です。
Chambolle Musigny 1er Cru Les Charmes 2018
シャンボール・ミュジニー
プルミエ・クリュ レ・シャルム 2018
生産者:G. ロブロ・マルシャン G. Roblot Marchant
生産地:フランス / ブルゴーニュ / シャンボール・ミュジニー
品種:ピノ・ノワール 100%
1910年から、シャンボール・ミュジニーでブドウ栽培を営むロブロ家の3代目ジェラール・ロブロと、ジュヴレ・シャンベルタンを代表する栽培家一族であるマルシャン家出身のコレット・マルシャンの結婚によって、1978年に誕生したドメーヌ。
現在は、4代目のフレデリック氏がドメーヌを率い、除草剤や殺虫剤の使用をやめ、ブドウと畑にとって極めて自然な環境でワイン造りに取り組んでいます。
樹齢40年を超える古樹から造られるワインは、凝縮感がありながらも、繊細さを失わないエレガントな仕上がりです。
Chambolle Musigny 1er Cru Les Sentiers 2018
シャンボール・ミュジニー
プルミエ・クリュ レ・サンティエ 2018
生産者:フランソワ・フュエ Fraocois Feuillet
生産地:フランス / ブルゴーニュ / シャンボール・ミュジニー
品種:ピノ・ノワール 100%
創立は1991年と、比較的若いドメーヌ。
アウトドア用品メーカーのトリガノ社の最高責任者である、フランソワ・フュエ氏がオーナーを務めます。
フュエ氏は、ワイン好きが高じてブルゴーニュに畑を購入し、ワイン造りを開始しました。
有機栽培を採用し、ワインの味わいは非常にナチュラル。
過度な抽出はせず、果実味、タンニン(渋み)、酸のバランスが整ったエレガントなワインです。
Chambolle Musigny 1er Cru Les Cras 2019
シャンボール・ミュジニー
プルミエ・クリュ レ・クラ 2019
生産者:ユドロ・バイエ Hudelot Baillet
生産地:フランス / ブルゴーニュ / シャンボール・ミュジニー
品種:ピノ・ノワール 100%
1981年の創業以来、ネゴシアンへのブドウの販売がほとんどでしたが、1998年より自社で瓶詰めを開始しました。
リュット・レゾネと呼ばれる農薬や化学物質に頼らない栽培を実践し、ブドウや土地が持つ本来の個性を表現しています。
Chambolle Musigny 1er Cru Les Fuees 2017
シャンボール・ミュジニー
プルミエ・クリュ レ・フュエ 2017
生産者:ジスレーヌ・バルトー Ghislaine Barthod
生産地:フランス / ブルゴーニュ / シャンボール・ミュジニー
品種:ピノ・ノワール 100%
現当主のジスレーヌ・バルト女史の祖父にあたるマルセル・ノエラ氏が、1925年に設立したドメーヌ。
所有する畑は6.5ヘクタールと小規模ですが、1999年からジスレーヌ女史一人で栽培、醸造を行っています。
しっかりとした果実味が感じられますが、酸やミネラルとも調和したバランスのよい仕上がり。
フランスの三ツ星レストランでもオンリストされており、そのクオリティは折り紙付きです。
Chambolle Musigny 2017
シャンボール・ミュジニー 2017
生産者:ディジオイア・ロワイエ Digioia Royer
生産地:フランス / ブルゴーニュ / シャンボール・ミュジニー
品種:ピノ・ノワール 100%
1930年設立されたドメーヌ、ディジオイア・ロワイエ。
これまでは、ネゴシアンへの販売がメインでしたが、1999年、3代目ミッシェル氏に代替わりしたのを機に、本格的に自社での瓶詰めを開始しました。
シャンボール・ミュジニーらしい柔らかいスタイルに、樹齢50年を超える古樹に由来する複雑な香りが合わさり、村名ワインとは思えない完成度の高いワインです。
終わりに
「もっとも女性的」なブルゴーニュ・ワインと言われるシャンボール・ミュジニーを、土壌や気候、そして畑の特性を通して見てまいりました。
ミュジニーやボンヌ・マールといったグラン・クリュや、そのほかのプルミエ・クリュに注目が集まりますが、村名ワインである「シャンボール・ミュジニー」でも十分にその魅力を感じられるので、こちらからトライしてみるのもおすすめです。
多くのワイン愛好家たちに親しまれるシャンボール・ミュジニーの魅力が、少しでも伝わりましたら幸いです。
また、ワインの奥深い魅力をもっと知りたい、追及したいという方におすすめしたいのが、「ワインが主役」をコンセプトに掲げるレストラン、レヴェランス R(アール)。
ワインの古酒(20年~30年熟成したもの)に焦点を当て、料理とのマリアージュを提案します。
画像出典:※Instagram @reverence_r_ さんより
なかなか出会うことのできない熟成したワイン1本を、料理と共に時間をかけてじっくりと味わう愉しみ。
レストランでありながら、ワインスクールのように、さまざまなワインの変化を体験できる、稀有な空間です。
より深いワインの世界を体験したい、好奇心溢れる方には最適なレストランですので、ぜひ一度訪れてみてください。