ブルゴーニュと並び、フランスが世界に誇る銘醸地の1つであるボルドー
「ワインの女王」と喩えられるボルドーワインの中でも、シャトー・マルゴーは、エレガンスと力強さを兼備する「ボルドーの宝石」と呼ばれるワインです。
日本では、映画化・ドラマ化もされた小説『失楽園』で登場し一躍有名となりましたが、歴史的に見ても多くの著名人たちに愛されてきました。

では、そのシャトーマルゴーとは、いったいどのようなワインなのか?
そして、どのヴィンテージ(収穫年)がいいのか?
このような疑問を持たれる方も多いと思います。

この記事では、シャトーマルゴーの歴史を簡単に振り返りながら、数あるヴィンテージ(収穫年)の中でも、「今買うべき」ヴィンテージを解説。
続いてソムリエの視点から、現在入手可能、もしくはレストラン・バーなどで出会える可能のある歴史的なヴィンテージ(とっても高いですが…)をピックアップいたします。

そして締めくくりに、シャトーマルゴにまつわる著名人たちのエピソードをご紹介するので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

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※掲載されている価格は2022年05月02日時点のものです。

この記事は、ソムリエが執筆・監修を行っています。(最終更新日:2022/05/02)

【もっとも女性的なワイン】
シャトー・マルゴーとは?

画像出典:※Instagram @chateaumargaux ​​さんより

シャトー・マルゴーとは、現在約8,000あると言われるボルドーのトップに君臨する生産者のひとつ。
非常にエレガントな味わいが特徴で、「5大シャトー」と呼ばれるボルドーのトップ5の生産者の中でも「もっとも女性的」と評されます。

ボルドーには、「メドック格付け」と呼ばれる、いわゆる優良生産者の番付があり、1855年のパリ万博博覧会に合わせて、ナポレオン三世の命により制定。
当時は取引価格をベースに、テイスティングをしてランク付けし、トップの第1級から下は第5級まで、合計61のシャトー(生産者)が選出されました。

最高ランクの第1級に格付けされている5つのシャトーは「5大シャトー」と呼ばれており、そのうちのひとつがシャトー・マルゴーです。
これら5大シャトーは、フランスは言うに及ばず世界的に見てもトップクラスの品質を誇り、多くのワイン愛好家たち垂涎の的となっています。
ちなみに、1855年のメドック格付けの際、20点満点のテイスティングで採点が行われましたが、マルゴーが唯一満点を獲得し、その実力は当時から知られていました。

簡単に振り返るシャトー・マルゴーの歴史

画像出典:※Instagram @chateaumargaux ​​さんより

シャトー・マルゴーは、その起源を12世紀まで遡ることができる長い歴史を持ちます。
もともとは農園でしたが、16世紀の終わりごろからワインの生産が始められました。
その後、数々の所有者の変遷を経ながら、着実に畑を拡大し、高品質なワインを生み出す素地を築いていったのです。

しかしながら、ブドウの病害や世界的な不況の影響もあり、マルゴーは1960年代から1970年代にかけて低迷し、その名声は影をひそめることに。
そこに現れたのが、事業で財を成したギリシャ人のアンドレ・メンツェロプーロス氏
彼がシャトーを買収し、改革へと乗りだします。
ボルドー大学の伝説の醸造学者と呼ばれるエミール・ペイノー氏と共に、栽培方法や熟成方法を見直し、今までの技術を大きく改良。
10年もかからない間に品質はみるみる回復し、マルゴーは再びかつての名声を取り戻しました。

メンツェロプーロスは1980年に亡くなり、その後シャトーは娘のコリーヌ夫妻と総支配人ポール・ポンタリエ氏(2016年逝去)の手によって運営され、現在も世界最高品質のワインを生み出しています。

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画像出典:※Instagram @chateaumargaux ​​さんより

ここからは本題の「今買うべき」ヴィンテージをご紹介いたします。
いきなり結論から書くと、押さえておくべきは最新&直近の2019年2018年

この理由を書く前に知っておかなければならないのが、「ワイン・アドヴォケイト」の存在。
ワイン・アドヴォケイト(略記:WA)とは、弁護士のロバート・パーカー氏(2019年に引退、後進に引き継いだ)が1978年に創刊した、ワイン業界でもっとも影響力があると言われているワイン専門誌です。
世界初となる100点満点方式でのワインの評価や、感情に訴える分かりやすいコメントが人気を博し、あっという間に消費者たちの支持を獲得。
また、広告を一切掲載せず、一貫してワイン業界や生産者からの距離を保ち続ける独立性も共感を呼びました。

「神の舌を持つ男」とも評されるパーカー氏の評価によって、ワインの価格は大きく変動。
100点を獲得したワインの価格は瞬く間に急騰し、コレクターたちのワインセラーへと消えていきます。

こちらでご紹介するシャトー・マルゴーの2019年と2018年は、どちらもワイン・アドヴォケイト(WA)100点を獲得したモンスターワイン。
5大シャトーともなると、近年は10万円前後は当たり前で、数年前のグレートヴィンテージは20万円前後まで上がってし舞うこともざらです。
しかし、現在なら2018年と2018年は、楽天をはじめとしたオンラインショップで7~8万円台(税込)で購入できるので、これを見逃す手はありません。

近年のシャトー・マルゴーは、比較的早いうちから楽しめるスタイルになっていますが、もちろん数十年以上の熟成も可能。
お子様の成人式や、人生の節目となるタイミングまでじっくりと待つこともワインの愉しみのひとつと言えますので、ぜひご自宅のセラーで熟成させてみてはいかがでしょうか。

2019

2019年は、冬は降雨量の多い冬からスタートし、4~5月は天候不順で低い気温が続いたため、ブドウの生育の遅れが懸念されましたが、7月~収穫までの期間は好天が続き、十分な気温と日照量を確保。
そして適度な雨により健全なブドウが育ち、過去5年間を見ても最高峰と呼べるヴィンテージとなりました。

グラン・ヴァン・ド・シャトー・マルゴー 2019は秀逸なヴィンテージと評せるでしょう。2015、2016、2018、そして2019、これまで10年の間にシャトー・マルゴーが生み出したプレシャスなワインたちと肩を並べる仕上がりです。

シャトー・マルゴーにおいては常にカベルネ・ソーヴィニヨンが主役であり、アッサンブラージュの90%を占めています。メルロは7%です。シャトーのシンボル的区画に加えて今年はル・オー・デュ・ジャルダン(Le Haut du Jardin)の区画のメルロを含み、さらなる丸みと優雅さがもたらされています。その他カベルネ・フラン(2%)とプティ・ヴェルド(1%)、以上が今年の品種構成です。シャトー・マルゴーは生産の37%を占めています。
1970年代末、アンドレ・メンツェロプーロスによって2年目の樽貯蔵庫が建設されました。この蔵も近年は老朽化が進み、数年におよぶ改修工事が必要とされました。グラン・ヴァン・ド・シャトー・マルゴー 2019は、新しく生まれ変わった設備を活用した初めてのヴィンテージです。また、アレクシ・レヴェン=メンツェロプーロスをシャトー・マルゴーの一員として迎えるタイミングで彼の祖父の時代に築かれた貯蔵庫の改修が整ったことは、私どもにとりまして望外の喜びです。姉のアレクサンドラ・プティ=メンツェロプーロスとともに、ドメーヌの将来を背負って立つ存在となるべく、ふたりは今後もさらなる研鑽を続けてまいります。

シャトー・マルゴー、2019年
参考価格:¥77,000~(税込) /(750ml)
ワイン・アドヴォケイト (WA): 100

ぶどう品種 品種
カベルネ・ソーヴィニョン 90%
メルロ 7%
プティ・ヴェルド 1%
カベルネ・フラン 2%
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2018

2018年は、冬~春まで冷たい雨に悩ませられ、「ベト病」と呼ばれるカビの一種が多くの畑で発生。
オーガニック農法などを取り入れているシャトーでは特に苦戦を強いられ、収穫量は例年と比べると大幅にダウンする結果に。
しかし、7月中旬から収穫までは、打って変わって非常に暑く乾燥した天候が続き、収量が減った分、逆に生き残ったブドウに栄養が集中し、結果として傑出したヴィンテージとなりました。

2018年シャトー・マルゴーのグランヴァンは、近年のヴィンテージの中でも最高傑作のひとつに挙げられます。2015年および2016年の記憶がまだ鮮明であるだけに、このパフォーマンスはなおさら圧巻です。

シャトー・マルゴー 2018の魅力はその驚くべき凝縮です。粒サイズは小さく、収量も比較的低く、それが極めて高いタンニン指数の主因と考えられます。それでも、パワフルさを持て余している印象は一切なく、アロマを引き立て、ストラクチュアを支えています。後味の余韻の長さもこのワインの特徴です。
醸造工程のかなり早い段階からタンニン・ポテンシャルの高さを確信し、シャトーの高品質カベルネ・ソーヴィニヨンと比較すると濃度が低くなりがちなメルロの区画に対してさえ、穏やかな抽出を心がけました。カベルネ・ソーヴィニヨンはシャトー・マルゴーに おいては常に主役級の役割を果たし、アッサンブラージュの90%を占めています。これまで紹介してきたような天候のもとでもアルコール度数は14度と、同品種にはアルコール度数の過度な上昇を抑える効果があります。その他、メルロ4%、カベルネ・フラン4%、プティ・ヴェルド2%、以上が同ヴィンテージの品種構成です。シャトー・マルゴーは生産の36%を占めています。

シャトー・マルゴー、2018年
参考価格:¥88,000~(税込) /(750ml)
ワイン・アドヴォケイト (WA): 100

ぶどう品種 品種
カベルネ・ソーヴィニョン 90%
メルロ 4%
プティ・ヴェルド 2%
カベルネ・フラン 4%
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【ソムリエが選ぶ】
歴史的なヴィンテージ5選

画像出典:※Instagram @chateaumargaux ​​さんより

この章では、シャトー・マルゴーにおける歴史的なヴィンテージをご紹介したいと思います。
ワイン・アドヴォケイトに限らず多くのワインジャーナリストが独自の評価を発表していますが、近年は恵まれた天候に加え、最新技術の積極的な採用により、高得点・高評価が連発しています。
そんな中、ソムリエの視点から、WA100を含め、記憶に残る優れたヴィンテージを5つピックアップいたしました。
かなりの高価格帯となりますが、シャトー・マルゴーだけでなく、ボルドー全体にとっても”世紀のヴィンテージ”、”傑出したヴィンテージ”と呼ばれるものですので、もし口にする機会があればこの上ない幸せでしょう。

2015

2015年は、春~夏は気温も理想的で乾燥した天候に加え、適度な雨も得られたことから、過熟することなく小粒で凝縮感のある優れたブドウが得られ、多くの傑出したワインが生まれたヴィンテージとなりました。

また、トップ画像でもご覧いただいた、「メドックのヴェルサイユ宮殿」とも称される美しいシャトー・マルゴーの城(建物)は、1815年に建築されたもので、この2015年は建立200周年を迎えた記念の年。
これを祝して、ボトルには従来のものとは違う斬新なデザインが採用され、大きな注目を集めました。

しかし、運命のいたずらか、1983年から醸造チームを率い、シャトー・マルゴー最大の功労者ともいえる総支配人ポール・ポンタリエ氏がリリース前の2016年に逝去。
奇しくも、シャトー・マルゴーにとって記念碑的なヴィンテージである2015年が、彼が手掛けた最後のヴィンテージとなりました。
ボトルの下部には、ポンタリエ氏への追悼と敬意を表し、「Hommage a Paul Pontallier」とエッチングが施されています。

画像出典:※Instagram @chateaumargaux ​​さんより

2015年はシャトー・マルゴーにとって、まさに文字通り、歴史的なヴィンテージです。1815年に建築された建物の200年を祝うとともに、ノーマン・フォスター卿によって建設、修復された新たな建物の落成式を行ないました。私たちがどれほど2015年のヴィンテージに期待を寄せていたか、すぐにご想像できるでしょう!

このような結果が得られた一因は、ブレンド時の決断が何度も吟味されたことであるのは間違いないでしょう。グラン・ヴァン用にリザーブされているのは全生産のわずか35パーセントで、最高峰のヴィンテージの中では、最も厳選した年と言えます。例年同様、根底を成すカベルネ・ソーヴィニヨンがブレンドの87パーセントを占め、今年はさらに濃厚さと繊細さを兼ねそろえ、活力と強さは例年以上になりました。メルロも、特に偉大な区画は期待を裏切ることなく、グラン・ヴァンの中でも8%を占めています。カベルネ・フラン(3パーセント)、プティ・ヴェルド(2パーセント)も、選りすぐられたブレンドの中で、それぞれ重要な割合を占めています。そして偉大なヴィンテージは全般的に、各品種の持つ真髄を表現できることを示してくれました。
では2015年ヴィンテージは、これまでのヴィンテージと比較して、どのように位置づけられるのでしょう?特に偉大なヴィンテージにおいては、この質問にお答えするのは難しく、ほぼ不可能です。もちろん類似点や近似点はありますが、同時に私たちの想像を超えるいくつかの相違点もあるのです。とはいえ、2005年の力強さと2009年の肉付きのよさ、2010年の緻密さを同時に思い起こすかもしれません。そして何より、シャトー・マルゴーの比類ない魅力もあわせ持っています。
ポール・ポンタリエが手がけた最後のシャトー・マルゴーです。もちろんマルゴーの魅力の全てが詰まっています。2015年のグラン・ヴァンには特別なデザインの製作を決定しました。いつものエチケットの代わりに、シルクスクリーンで直接ボトルを美しく装飾したオリジナルなデザインです。ボトルだけでなくワインも、永遠に生き続けるつくりのヴィンテージです。(2018年10月)

ワイン・アドヴォケイト (WA): 99
参考価格:¥248,000~(税込)/(750ml)
ぶどう品種 品種
カベルネ・ソーヴィニヨン 87%
メルロ 8%
カベルネ・フラン 3%
プティ・ヴェルド 2%
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2005

フランス全体で高い評価となった2005年ですが、特にボルドーでは「世紀のヴィンテージ」と呼ばれます。
冬の冷涼な気候で始まった年でしたが、温暖な春、暑く乾燥した夏となりましたが、適度な降雨に恵まれ、収穫期には完熟・凝縮した理想的なブドウとなり、長期熟成に適した偉大なヴィンテージに。
2000年ごろから価格高騰が続き、当時”ボルドー・バブル”と言われていたワイン市場でも史上最高クラスの高値を叩き出し、ワイン愛好家たちを熱狂の渦へと巻きこみました。

2005年はシャトー・マルゴーの真の偉大なヴィンテージです!

まず崇高とされる要素のすべてが整っています。香りのフィネス、優美さ、深みは他に類を見ない品質。これはテロワール独自のものであり、夢のようなヴィンテージ数点にしか認められない特性です。またアルコールの力強さもあります。凝縮性も素晴らしく、2000年、いいえ、2003年にさえ優るレベル!まず、色調にその凝縮性の高さをうかがい知ることができます。前代未聞の力強い色。また、味わいに関しては、並外れた濃密さと余韻を有しています。それでもたくましさがむやみに主張するわけではなく、美味しさや調和が生きています。このバランスの良さは無論カベルネ・ソーヴィニヨン(アッサンブラージュの85パーセント)によるものです。カベルネは、アルコール度数は13度を超す事はなく、それでいて申し分ない熟度に実りました。唯一ブレンドに加えられたメルロ(アッサンブラージュの8パーセント)は、すべて度数が14度に達しなかったものです。
永遠に生き続けるつくりのワインです。最初のボトルを開けるのもさらに数年待つことをお勧めします。(2018年10月)

◆ワイン・アドヴォケイト (WA): 98
参考価格:¥157,300~(税込)/(750ml)
ぶどう品種 品種
カベルネ・ソーヴィニヨン 85%
メルロ 15%
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2000

2005年に匹敵するヴィンテージと言われる2000年。
夏までは、雨が多く曇りがちで日照量も十分とは言えなかったため、不安視されることもありましたが、8月~収穫期までは好天候に恵まれ、理想的に完熟したブドウが得られました。
また、節目の”ミレニアムヴィンテージ”として需要も非常に高く、価格も高い水準で推移しています。

これほどまでの凝縮感を、特にカベルネが発揮するのは非常に珍しいです。その例外がおそらく2010年でしょう。1986年や1995年と言った歴史的記録をも塗り替えるレベルです。また、味わいにはエレガンスと柔和さを兼ね備え、これもまた1990年や1996年を彷彿とさせます。思えば2000年は少なくともスタイルという意味で、これまでにないレベルの基準を打ち立てたのかもしれません。以上の初印象はその後も裏切られることはありませんでした。テクスチュアは少々詰まった感じですが、後味の柔和さは健在で、とにかく余韻が長く、終わりが来ないかのようにさえ感じます。2年間の育成・熟成後、2002年11月にボトリングを終えました。これほど長期にわたる育成・熟成は一般的ではないけれど珍しくもなく、すなわち多くの偉大なるヴィンテージの特徴です。我々の忍耐力が試されますが、さらに数年飲むのを待つことをお勧めします。最悪、飲む数時間前にはデカンターしてください。永遠に生き続けるためのつくりのワインです。(2018年10月)

ワイン・アドヴォケイト (WA): 99
参考価格:¥201,300~(税込)/(750ml)
ぶどう品種 品種
カベルネ・ソーヴィニヨン 90%
メルロ 10%
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1996

フランス全土で天候に恵まれた素晴らしいヴィンテージ、1996年。
ボルドーでは、8月までほぼ理想的な天候が続き、グレートヴィンテージへの期待感が高まってましたが、9月のまとまった雨のせいで、ブドウの成熟が危ぶまれることに。
しかし、生産者の想いが通じたのか、それ以降は乾燥した気候が続き、理想的なコンディションのブドウとなり、多くの卓越したワインが生まれました。

困難続きだったこの年からも多くの教訓が得られるはずです。偉大なるヴィンテージと呼ばれる年の、過度にシンプルにまとめられがちなクラシカルなプランからはかなり逸脱したヴィンテージでしたし。例えば9月末の激しい降雨。心配とは裏腹に、むしろカベルネ・ソーヴィニヨンの成熟にとっては好都合に働きました。1995年も同様の状況だったと言えます。

いずれにしても、結果として、時代を画するクラシシズムと純粋な魅力を持つワインが誕生しました。カベルネ・ソーヴィニヨンがこれほどまでに完璧なスタイルに仕上がり、これほどまでのバランスが得られると言うのはたしかに稀な状況です。さらに言うと、ブレンドされたばかりの出来立てのワインが、これほどまで感動的で心に響くレベルのピュアな果実と濃厚なテクスチュア、そして調和を含んでいるというのは、本当にめずらしいことです。飲まないように我慢するのが難しい、夢のようなマルゴー。しかし熟成のポテンシャルは壮大です。(2018年10月)

ワイン・アドヴォケイト (WA): 100
参考価格:¥164,800~(税込)/(750ml)
ぶどう品種 品種
カベルネ・ソーヴィニヨン 82%
メルロ 12%
カベルネ・フラン 2%
プティ・ヴェルド 4%
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1990

フランスのみならず、ヨーロッパ全体で当たり年となった1990年。
ボルドーでは、理想的な天候が続き、収量面でも例年以上となりました。
長期熟成に適した凝縮した果実味と豊富なタンニンが特徴で、WA100をはじめ、ワインの歴史に名を残すワインが多く生まれた偉大なヴィンテージ

収穫は丸ひと月続きました。理由はカベルネの成熟スピードがメルロよりも明らかに遅かったからです。カベルネが熟するのを待つために、9月の終わりには10日間収穫を中断せざるを得ませんでした。その間、素晴らしい天候に恵まれたのは本当にラッキーでした。1990年は、1988年、1989年とともに連続する三大ヴィンテージのひとつ。クラシカルな1988年の後に、ふくよかでおおらかな1989年。1990年はその魅力、極めて秀逸なフィネスで我々をすぐさま魅了して見せました。かなり似ている環境で生まれたふたつのヴィンテージ1989年と1990年が、これほどまでに異なるスタイルのワインになろうとは!それでも、一見似ているように見えるそれぞれの環境も、実際のところはそれほどでもないのです。数日厳しい暑さが続いたら、時期外れの雨や長すぎる雨不足、それらがどれほどの影響をもたらすのでしょうか?1990年の場合、メルロ、カベルネ、プティ・ヴェルドはいずれも最初から並外れた品質で、魅力的で、芳醇で、柔和で、きめ細かく、心を奪われる果実味が印象的でした。ワインの中には1989年に匹敵するたくましさが包み隠されており、香りと味わいを形成する要素の全てがその中に完璧に溶け込んで、完全なる調和を奏でているようです。瓶詰め後まもなくでも美味しく飲めたように、今飲むこともできますし、20年、30年と待って、さらなる喜びを噛み締めながら味わうこともおそらく可能でしょう。(2018年10月)

ワイン・アドヴォケイト (WA): 100
参考価格:¥198,000~(税込)/(750ml)
ぶどう品種 品種
n/a
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【番外編】
伝説的ヴィンテージ 1900

文字通り”伝説的”なヴィンテージである1900年。
非常に暑く乾燥した夏となり、適度な雨にも恵まれ、品質と収穫量の両面で卓越した年となりました。
ロバート・パーカー氏がテイスティングをして100点をつけたのは、このワインが生まれてから1世紀近くたった1996年ということを考えると、シャトー・マルゴーの1900年がいかにケタ外れのワインかがお分かりになるでしょう。

画像出典:※Instagram @chateaumargaux ​​さんより

1900年は神話的ワインです!新しい世紀は量、質ともに並外れた収穫で幕を開けました。

1900年と言えば、まず記録的なワイン生産量です。同レベルの生産は1982年まで経験することはありませんでした!それ以前の豊作年としては、1896年と1893年が挙げられます。
1900年の特徴は、とにかくその伝説的品質です!
記録的生産量にもかかわらず、風味のたくましさ、凝縮性を持っています。たちまち熱狂を巻き起こし、想像を絶する1899年をも凌駕しました。この感動は2000年を迎えるまで出逢うことはありませんでした。実に比類なき品質。
シャトー・マルゴー1900年は、今日でもそのみずみずしい風味を保っています。我々がこれまで試飲したボトルの中でも最高ランクに位置するボトルのひとつです。ブーケには類まれなフィネスがあり、そしてみずみずしい果実の見事なノートを感じます。アタックには、想像を絶する豊潤さや心地よさがあります。後味の余韻は長く、みずみずしい風味が残り、とにかく美味。まさに逸品。

ワイン・アドヴォケイト (WA): 100
ぶどう品種 品種
n/a

【どれもハイレベル】
その他のラインナップ

歴史的ヴィンテージを振り返った後は、シャトー・マルゴーが展開するその他のラインナップを見ていきましょう。
フラッグシップのシャトー・マルゴー以外では、セカンドワインやサードワインと呼ばれる”弟分”にあたる赤ワインが2種類と白ワインが1種類。
とは言っても、品質が劣るということではなく、シャトー・マルゴーに使用されなかったブドウから造られたものなので、並みのボルドーでは太刀打ちできないほどのクオリティを誇ります。
種類は少ないですが、その分”これだけ覚えれば”、シャトー・マルゴーについてはばっちりですので、ぜひ頭の片隅に入れておいてください。

セカンドワインとは?
セカンドワインとは、文字どおり”2番手”のワインのこと。
ワイナリーにおけるトップのワインには使用されないブドウ(樹齢の若いものや品質基準に満たないもの)から造られます。
決して”格落ち”というわけではなく、栽培や醸造などは同じワイナリーが行いますし、比較的リーズナブルな価格でその造り手のスタイルを楽しめるので、逆に狙い目のワインでもあります。
サードワインは、セカンドのさらに下にあたるもの。

【マルゴーの片鱗を感じる】
パヴィヨン・ルージュ・デュ・
シャトー・マルゴー 2018

参考価格:¥28,300~(税込) /(750ml)
セカンドワインにあたる、パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー
ファーストのシャトー・マルゴーに比べてメルロの比率が高く、新樽の使用も控えめ(50%)なので、よりしなやかで親しみやすく、早いうちから楽しむことができます。
しかしセカンドと言っても、シャトー・マルゴーに使用されるブドウとは区別なく栽培されたブドウから造られているので、非常にレベルの高い完成度です。
けっして安い価格帯ではありませんが、ファーストの半額以下で入手できるので、まずはその片鱗を感じてみたい方におすすめです。

詳細情報
ぶどう品種 品種
カベルネ・ソーヴィニョン 69%
メルロ 19%
プティ・ヴェルド 9%
カベルネ・フラン 3%
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【王妃に例えられる気品ある白】
パヴィヨン・ブラン・デュ・
シャトー・マルゴー 2018

参考価格:¥35,800~(税込) /(750ml)
年間約10,000本程度しか生産されない希少なパヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー
ソービニヨン・ブラン100%とは思えないほどの濃密な果実味とボリューム感がありますが、エレガンスに満ちたまとまりを感じさせます。
30年の熟成にも耐えうるポテンシャルがあり、赤ワインと同様じっくりと寝かして楽しむのも一興。
”パヴィヨン”と名がついていますが、この上のランクの白は造られておらず、実質的にこちらが白ワインのトップキュヴェにあたります。

詳細情報
ぶどう品種 品種
ソービニヨン・ブラン 100%
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【見つけたら即買いのレアアイテム】
マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー

画像出典:※Instagram @chateaumargaux ​​さんより

参考価格:¥15,000程度(税込) /(750ml)

シャトー・マルゴーのサードワインとして誕生した、マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー
ファーストヴィンテージは2009年。

リリース当初は、特定のレストランのみに卸すという特殊な販売体制を敷いていましたが、徐々に小売店でも購入が可能に。
ですが、出回るのはごく限られた数量なので、あっという間に完売となってしまうレアアイテムです。
年によって比率は異なりますが、カベルネ・ソーヴィニョンを主体に、メルロをブレンド。
リリース直後から楽しめるしなやかなタンニンと、密度の濃い果実味が魅力です。

ファーストワインのシャトー・マルゴーであれば、最低でも7万円前後を覚悟しなければなりませんが、こちらのサードワインは、通常1万5千円程度で購入が可能ですので、見つけたら即購入をお勧めします。

【美しい女性は引く手あまた?】
多くの著名人に愛されたマルゴー

ワインにまつわるエピソードには、多くの著名人が登場しますが、このシャトー・マルゴーも例外ではありません。
古くはルイ15世の治世、寵愛を受けたデュ・バリー夫人は、宮殿ではもっぱらシャトー・マルゴーを愛飲していたとか。
この章では、シャトー・マルゴーをめぐる歴史上の人物の逸話を、いくつか見ていくことにしましょう。

まず最初は、トーマス・ジェファーソン
第3代アメリカ合衆国大統領となったジェファーソンはかなりのワイン愛好家で、とりわけ筋金入りのラフィット好きで知られていました。
ラフィット(=シャトー・ラフィット・ロートシルト)とは、5大シャトーの筆頭格とも言われるワインで、その味わい・品格ともに群を抜く存在。
公使としてフランスに滞在していた期間、彼は立場を利用してちゃっかりラフィットを何樽も購入していたというのは有名な話です。
しかし一方で、彼は「シャトー・マルゴーに勝るボルドーはない」と言いう言葉も残しています。
ラフィットという“本命”がいるというのに、アメリカ合衆国の礎を築いた偉人も、マルゴーという妖艶な美女には骨抜きにされてしまったのかもしれません。

次に、偉大な社会学者であり、永遠の名著『共産党宣言』を著したフリードリヒ・エンゲルス
友人のマルクスの娘から「あなたにとって幸福とは?」と聞かれ、「シャトー・マルゴー 1848年」と答えたそうです。
私たちを取り巻く社会を深く鋭く考察した知の巨人の辿り着いた真理は、ワインボトルの中にあったということですね。

最後にご紹介するのは、『老人と海』の著者として有名で、ノーベル文学賞受賞も受賞したアーネスト・ヘミングウェイ
シャトー・マルゴーの熱心なファンとして知られ、シャトーを訪問して宿泊するほど惚れ込んでいました。
そしてついには、「シャトー・マルゴーのように女性らしく美しく育つように」と、自分の孫娘の名前を”マーゴ”(マルゴーの英語読み)と付けてしまったほど。
彼女は、のちにモデルや女優として活躍した、あのマーゴ・ヘミングウェイです。

このような著名人たちに愛されたシャトー・マルゴーには華やかなイメージがありますが、実は少し”影”を感じさせるエピソードも。
マルゴーを愛したアーネストも、マルゴーにちなんで名づけられたマーゴも自殺というかたちで生涯を閉じます。
そして、2人が命を絶ったのはなんと同じ日付だったのですが、単なる偶然ではない、なにか因縁めいたものを感じられずにはいられません。

また、『失楽園』では、2人の主人公が心中する際に、最期に口にするワインが、このシャトー・マルゴー。
そして、「私の血はワインでできている」とは、かなりのワイン通として知られ、ドラマ『失楽園』に主演された女優、故・川島なお美さんの言葉ですが、彼女もシャトー・マルゴーをこよなく愛したひとりでした。

なんだか、「もっとも女性的」と評されるシャトー・マルゴーには、ミステリアスな雰囲気、もっと言えば「魔性の女」ともいえる、抗えない危険な魅力があるように感じられますね。

終わりに

5大シャトーの一角をなす、シャトー・マルゴーの歴史にはじまり、今買っておくべき当たり年やマルゴーの中でも記念碑的なヴィンテージ、そしてマルゴーにまつわる逸話までを見てまいりました。
多くの著名人に愛されてきましたが、長い歴史の中でスポットライトを浴びるだけでなく、低迷期を経験する時もあったシャトー・マルゴー。
知名度や味わいだけでなく、こうした背景にある物語も含めて楽しみたいものですよね。

なかなか気軽に口にすることのできる価格帯ではありませんが、特別な記念日やご夫婦やご家族にとっての節目で飲む際に、ぜひこの記事を思い出していただければ幸いです。