フランス屈指の銘醸地であるブルゴーニュにおいて、最高峰に格付けされるのがグラン・クリュ(特級畑)。
多くのワイン愛好家が追い求めるワインですが、その中でも通好みとされるのが、エシェゾーです。
というのも、エシェゾーは、グラン・クリュの中でも広大な面積で、数多くの生産者がひしめき合い、多種多様な個性を表しているため。
この記事では、エシェゾーの地理や歴史に始まり、おすすめの生産者まで解説いたします。
また、グラン・クリュであるエシェゾーは高価なものが多く、自分で気軽に試すにはハードルが高いワインです。
ですので、記事の終わりでは、グラスでエシェゾーを提供する珍しいお店や、希少なワインを安心して愉しめるレストランもあわせてご紹介しますので、最後までお付き合いいただければと思います。
エシェゾーとは?
画像出典:※Instagram @viamofr さんより
エシェゾーとは、コート・ドール(黄金の丘)の北側、コート・ド・ニュイ地区のフラジェ・エシェゾー村にある畑で、グラン・クリュ(特級畑)に認定されています。
フラジェ・エシェゾー村は、ヴォーヌ・ロマネ村、シャンボール・ミュジニー村、ヴージョ村の3つの村に囲まれたとても優れた立地で、エシェゾーとグラン・エシェゾーの2つのグラン・クリュを擁します。
エシェゾーは、コート・ド・ニュイ地区の中でも、クロ・ド・ヴージョに次ぐ広さのグラン・クリュで、現在は80を超える生産者が畑を分け合っています。
また、エシェゾーの兄貴分と評されるグラン・エシェゾーは、エシェゾーよりも力強い味わい。
エシェゾーとは反対に、面積も小さく単一の畑なので、均整のとれたスタイルが特徴です。
フラジェ・エシェゾーにはアぺラシオンがない?
フラジェ・エシェゾー村には、「ジュヴレ・シャンベルタン」や「シャンボール・ミュジニー」といったアぺラシオンがありません。
少しややこしいですが、上記の通りエシェゾーとグラン・エシェゾーの2つのグラン・クリュがありますが、これらはヴォーヌ・ロマネのグラン・クリュとして認定されています。
フラジェ・エシェゾー村では、これら2つのグラン・クリュ以外の畑でもワインは生産されていますが、それらもヴォーヌ・ロマネやヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュとしてリリースされますので、ご注意ください。
エシェゾーの歴史
画像出典:※Instagram @alecgevaudan さんより
エシェゾーの歴史は12~13世紀まで遡り、畑を開墾したシトー派の修道院をルーツに持ちます。
もともとエシェゾーは、3.5haほどの区画(リュー・ディ)、エシェゾー・デュ・ドシュを指していましたが、1937年のAOCを制定する際に、周辺にある10の区画も含め格付けされたため、現在の11の小区画が特級畑となりました。
<エシェゾー11の区画>
◆レ・トゥルー(Les Treux)4.90ha
◆クロ・サン・ドニ(Clos-St-Denis)1.80ha
◆レ・クリュオ / ヴィーニュ・ブランシュ
(Les Cruots / Vignes Blanches)3.29ha
◆レ・ロアショース(Les Loachausses)2.49ha
◆エシェゾー・デュ・ドシュ
(Echezeaux du Dessus)3.55ha
◆レ・ルージュ・デュ・バ
(Les Rouges du Bas)4.00ha
◆レ・ボーモン・バ(Les Beaux Monts Bas)1.27ha
◆レ・シャン・トラヴェルサン
(Les Champs Traversins)3.59ha
◆レ・プレレール(Les Poulailleres)5.21ha
◆アン・オルヴォー(En Orveaux)5.03ha
◆レ・カルティエ・ド・ニュイ
(Les Quartiers de Nuits)1.13ha
エシェゾーは、標高230~300mの丘の上部から谷間の斜面に位置しており、日照量、水捌けともに優れています。
土壌は、ジュラ紀(1億7500年前)に由来し、小石や泥土、泥灰土などを含み、場所によって複雑なモザイク模様を形成している特徴的なエリアで、個性豊かなエシェゾーを生み出す要因となっているのです。
エシェゾーの特徴
画像出典:※Instagram @jay_park___ さんより
透明感のある深いルビー色の色調で、赤系ベリーのアロマを中心に、鮮やかなスミレやスパイスのニュアンスを感じます。
滑らかなタンニンで、酸や果実味との調和のとれた優れたバンランスが特徴。
熟成が進むと、キノコやなめし革といった野性味あふれる香りが現れます。
エシェゾーの代表的生産者6選
エシェゾーでは、80以上のドメーヌがそれぞれの個性を発揮していますが、その分スタイルや味わいは千差万別。
ですので、生産者選びが重要となってきますが、自分の好みを探し出すのは難しいもの。
そこで、ここではエシェゾーの代名詞ともいえる著名生産者をアイテムとともに6名をご紹介。
トップ生産者とされるドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社から、エシェゾーを知るうえで、ぜひとも押さえておきたい造り手までを解説いたします。
ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ
Domaine de la Romanee Conti
エシェゾー グラン・クリュ 2018
Echezeaux Grand Cru 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ /ヴォーヌ・ロマネ
品種:ピノ・ノワール 100%
世界でもっとも高価とされる「ロマネ・コンティ」を生産する、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社(DRC)の造るエシェゾー。
世界中のワインラヴァー憧れの銘柄の1つであり、最高峰のエシェゾーと言えます。
果実味と酸、タンニンが高次元で調和しており、非常に高価なワインですが一度は体験してみたい1本です。
モンジャール・ミュニュレ
Mongeard Mugneret
エシェゾー グラン・クリュ 2019
Echezeaux Grand Cru 2019
生産地:フランス / ブルゴーニュ /ヴォーヌ・ロマネ
品種:ピノ・ノワール 100%
18世紀まで歴史を遡る由緒ある、家族経営のドメーヌ。
ヴォーヌ・ロマネを本拠地とし、エシェゾーとグラン・エシェゾーの名手としてもっとも有名な生産者の1人です。
価格の高騰が続くブルゴーニュにあって、伸ばせば手の届く価格でグラン・クリュを販売している数少ないドメーヌでもあります。
ダヴィッド・デュバン
David Duban
エシェゾー グラン・クリュ 2018
Echezeaux Grand Cru 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ /ヴォーヌ・ロマネ
品種:ピノ・ノワール 100%
非常に丁寧な畑仕事から生み出されるピュアな味わいが特徴の、ダヴィッド・デュバン。
農薬や化学肥料を減らし、できる限り自然に近いワイン造りを目指しています。
先代の頃から名声を得ていましたが、現当主の息子の代でその評価は、さらに高いものとなりました。
今やフランスの数々の三ツ星レストランにオンリストされており、日本でも注目を集める実力派の生産者です。
アンヌ・グロ
Anne Gros
エシェゾー グラン・クリュ レ・ロアショース 2018
Echezeaux Grand Cru Les Loachausses 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ /ヴォーヌ・ロマネ
品種:ピノ・ノワール 100%
19世紀初頭から続くヴォーヌ・ロマネの名門、グロ一族。
現在ドメーヌは4人の子供たちに引き継がれ、そのうちの1人がアンヌ・グロです。
所有するエシェゾーは、以前は親族のグロ・フレール・エ・スールに貸していましたが、2007年よりアンヌ・グロの名前でリリースするようになりました。
小区画(リュー・ディ)であるレ・ロアショースの名を冠したこのエシェゾーは、濃密で複雑な香りとしっかりとした骨格が特徴です。
ジャン・マルク・ミヨ
Jean Marc Millot
エシェゾー グラン・クリュ 2019
Echezeaux Grand Cru 2019
生産地:フランス / ブルゴーニュ /ヴォーヌ・ロマネ
品種:ピノ・ノワール 100%
ニュイ・サン・ジョルジュに本拠地を置きますが、このドメーヌのフラッグシップはエシェゾーとグラン・エシェゾー。
どちらのワインも高い評価を受けており、近年注目を集める生産者の1人とされています。
収量を減らし、エキスの凝縮したブドウから造られるワインは、香り高くシルクのような舌触りが特徴です。
ジャック・カシュー
Jacques Cacheux
エシェゾー グラン・クリュ 2018
Echezeaux Grand Cru 2018
生産地:フランス / ブルゴーニュ /ヴォーヌ・ロマネ
品種:ピノ・ノワール 100%
「神に愛された村」と評されるヴォーヌ・ロマネに本拠地を置く老舗ドメーヌ、ジャック・カシュー。
やや地味な造り手ながら、コストパフォーマンスに優れた良質なワインを生産しています。
ぎりぎり1万円台で購入できる貴重なワインで、エシェゾーを初めて試してみたい方に、ぜひおすすめしたい1本です。
エシェゾーを愉しむレストラン2選
一般的なワインと比べると、グラン・クリュのワインはどうしても高価格となってしまいますし、自分で抜栓するのも少し不安ですよね。
そんな時は、レストランでプロの手に委ねてしまうのが一番です。
こちらでは、気軽にワインバー使いできるカジュアルなスタイルのお店と、オーセンティックな大人の雰囲気が漂うレストランをそれぞれ1軒ずつご紹介いたします。
エシェゾーを体験するならまずこのレストラン
au comptoir ECHEZEAUX
(オ・コントワール・エシェゾー)
画像出典:※Instagram 公式アカウント @aucomptoirechezeaux さんより
五反田駅からほど近いビルの地下にひっそりと佇む、オ・コントワール・エシェゾー。
店名の通り、エシェゾーをメインに扱う珍しいレストランです。
グラス、ボトルともにブルゴーニュを中心としたラインナップで、グラスワインだけでも気軽に楽しめるカジュアルなスタイル。
入荷によっては、エシェゾーをバイ・ザ・グラスで提供することもあるので、まずはエシェゾーに触れてみたいという方にお勧めです。
JR「五反田駅」西口から徒歩2分
最高峰のマリアージュを体験
レヴェランス R(アール)
画像出典:※Instagram 公式アカウント @reverence_r_ さんより
銀座・並木通り沿いに佇む、レヴェランス R(アール)。
こちらは、ワインの古酒(20年~30年熟成したワイン)を主役としたレストラン。
長期の熟成を経たワインは、時間と共に香りも味わいも変化し、合わせる料理によっても異なる表情をを見せてくれます。
レヴェランス Rは、エシェゾーをはじめとしたブルゴーニュトップクラスのワインと料理の究極のマリアージュを体験できる稀有な空間です。
終わりに
エシェゾーについての基本や優良生産者、エシェゾーを愉しむおすすめのレストランまでご紹介してまいりました。
銘醸地ブルゴーニュの中でも最高峰のグラン・クリュ、エシェゾーの魅力を感じていただけましたでしょうか。
ふだん気軽に楽しむには、高価なワインですが、記念日やとっておきの場面で、お楽しみいただければと思います。