アンリオは、1808年創業の由緒あるシャンパーニュメゾン。
オランダ王国やオーストリア・ハンガリー帝国の王室からも御用達を拝命した格式高い最高峰メゾンの一つです。
「家族の名前を冠するからには、その名を汚すようなシャンパーニュはつくらない」という誇りを貫き、良い畑で良いぶどうを育てて丁寧にシャンパーニュに仕上げるという実直なシャンパーニュ造りを200年以上に渡り続けてきました。
そのシャンパーニュ造りの信念は、最もスタンダードで手の届きやすいシャンパーニュにも、格付け畑のぶどうが95%も使われていることによく現れています。
このように、信念に基づいて造られるアンリオのシャンパーニュは、高いシャルドネ比率がスタイルの象徴。
エレガントで「レースのように繊細」な味わいと評判です。
今回は、そんなアンリオというメゾンとそのシャンパーニュについて深堀りしていこうと思います。
ポール・ボキューズやピエール・トロワグロを始めとして、数多くの3ツ星レストランのワインリストでも名前をみることのできるシャンパーニュの魅力をご堪能ください。
「マリアージュ」によって生まれたアンリオのシャンパーニュ
アンリオのシャンパーニュのスタイルは、高い比率で使われる「シャルドネの聖地」コート・デ・ブラン地区シュイィ畑から収穫されるシャルドネとピノ・ノワールの名産地モンターニュ・ド・ランス地区トレパイユ畑から収穫される良質なピノ・ノワールによって成り立っています。
そして、これらの畑は、19世紀末の5代目アンリオ家当主のポール・アンリオとマリー・マルゲ女史の結婚によって実現したものなのです。
現在、アンリオ一族の紋章でもあり、メゾンのロゴマークともなっている、HとMが組み合わされた紋章は、アンリオ家のHとマルゲ家のMに由来しています。
シュイィの最良の畑を所有していたマルゲ家は、結婚に際してこの貴重な畑をアンリオ家に寄贈。
これによって、モンターニュ・ド・ランス地区に素晴らしいピノ・ノワールの畑を所有していたアンリオ家は、最良のぶどうのみを使ったシャンパーニュ造りが可能となったのでした。
現在、アンリオのシャンパーニュは、ほとんどのぶどうを格付け畑から収穫されるぶどうで賄っており、その格付け畑率は多く存在するメゾンの中でも指折りの高さを誇ります。
アンリオのスタイルを象徴する「シャルドネ」
アンリオが手掛けるシャンパーニュの味わいは、エレガントで「レースのように繊細」と評されます。
このアンリオ・スタイルとも言える特徴は、使われるシャルドネ比率の高さに由来するものです。
シャルドネは「白ワインの女王」と呼ばれる品種。
冷涼な土地で栽培されたシャルドネは、すっきりと上品な味わいになると言われます。
そんなシャルドネの産地として特に有名なのが、冷涼で厳しい気候のフランス・シャンパーニュ地方コート・デ・ブランという地域です。
この地域には、シャンパーニュ地方でもひときわ良質のシャルドネを収穫できるぶどう畑が集中しており、シャンパーニュにとっても欠かせない大切な土地。
アンリオは、このコート・デ・ブランのグラン・クリュ（特級畑）格付けのシャルドネを多く使用してシャンパーニュを造っているメゾンなんです。
シャンパーニュは、単一品種のぶどうから造られるワインをいくつかアッサンブラージュ（調合）して造られるのが基本です。
その配合の比率によって、味わいの特徴も決まります。
アンリオのシャンパーニュはシャルドネの配合比率が高く、その特徴を反映した上品な味わいとなっているというわけです。
アンリオのスタイルを完成させる「ピノ・ノワール」
アンリオの上品な繊細さをもたらす「シャルドネ」に加えられ、そのスタイルを完成させているのが、シャンパーニュ造りに使われる3大品種のひとつでもある「ピノ・ノワール」です。
ピノ・ノワールは、赤ワインを造るときにも使われる黒ぶどうであり、その黒い果皮に由来するタンニンが、ふくよかさや力強さ、濃厚な果実味をシャンパーニュに与えます。
そんなピノ・ノワールの素晴らしい産地として知られているのが、シャンパーニュの中心地でもあるランスの郊外に拡がる、モンターニュ・ド・ランス地区。
「ピノ・ノワールの聖地」とも言われ、名だたるメゾンが本処置を構えるアイ村もこのモンターニュ・ド・ランス地区の村のひとつです。
アンリオは、そんなモンターニュ・ド・ランス地区のグラン・クリュ（特級畑）格付けのピノ・ノワールをシャンパーニュ造りに使用しています。
この良質なピノ・ノワールがあるからこそ、良い畑で良いぶどうを育てて丁寧にシャンパーニュに仕上げるという実直なシャンパーニュ造りを可能となっているのです。
アンリオのシャンパーニュは、最高級の「シャルドネ」と最高級の「ピノ・ノワール」で紡がれるこだわりの結晶です。
信念を貫くアンリオのシャンパーニュ造り
「家族の名前を汚すようなシャンパーニュはつくらない」という名のもとに造られているアンリオのシャンパーニュ。
その際立つ特徴は、自社畑率、シャルドネ比率、格付け畑率の高さにあります。
ここで注目したいのは、その自社畑率と格付け畑率について。
詳しく見ていきましょう。
もはやレコルタン・マニピュラン。驚異の自社畑率。
唐突ですが、みなさんは、「ネゴシアン・マニピュラン（NM）」と「レコルタン・マニピュラン（RM）」をご存知でしょうか。
ネゴシアン・マニピュランとは、原料となるぶどう仕入れてきてシャンパーニュの生産を行い瓶詰めしているメーカーのことであり、多くのシャンパーニュが、このネゴシアン・マニピュランによって造られています。
ぶどうの出来に左右されず、比較的安定して高品質のシャンパーニュを提供できるという特徴があります。
一方、レコルタン・マニピュランとは、ぶどう栽培者自らがシャンパーニュの生産から瓶詰めまでを行っている形態を指します。
つまり、自社の畑で採れたぶどうのみを使ってシャンパーニュを造っているシャンパーニュメゾンであり、メジャーではなく本数も少ない傾向があるため希少価値のある場合も。
大手のメゾンの安定と対極にあり、個性的なシャンパーニュを造っているメゾンも多く、多くの愛好家を虜にしています。
ネゴシアン・マニピュランに分類されるアンリオの自社畑は115haあり、シャンパーニュ造りに必要となるぶどうの約90%を自社畑で賄っていると言います。
これはもはや、ネゴシアンというよりもレコルタンに近い、と言っていいほどの自社畑率なのです。
銘醸畑で良いぶどうを育て、丁寧に良いシャンパーニュを造る、という哲学が貫かれた一つの結果といえます。
銘醸畑のぶどうへのこだわりが現れる格付け畑率
次に注目したいのは、その格付け畑率の高さ。
最も手に取りやすい価格帯のスタンダードなシャンパーニュでさえ、使われるぶどうの95%以上がグラン・クリュ（特急畑）かプルミエ・クリュ（1級畑）から収穫されたもので賄われています。
そして、90%という自社畑率を維持しながら、この格付け畑率を両立できているのは、メゾンが素晴らしいぶどう畑を所有しているからこその特権でもあります。
アンリオというメゾンの本領が発揮される数字だと思いませんか。
アンリオのラインナップ
さてここからは、そんなアンリオについて、そのラインナップをご紹介していきます！
実際に飲んでみたいとなった時、いちばんに気になるのは価格とラインナップですよね。
さっくりとした説明とともにまとめましたので参考にしてみてください。
ブリュット・スーヴェラン
スーヴェランとは、「至高の、最高の」という意味のフランス語。
シャルドネ50%、ピノ・ノワール45%、ピノ・ムニエ5%の比率で造られるアンリオの最もスタンダードなシャンパーニュです。
画像出典：※Instagram @tomo_hime さんより
参考価格：6,060円
ブラン・ド・ブラン
シャルドネ100%で造られる、アンリオを代表するシャンパーニュ。
3年から5年の瓶内熟成を経て出荷されます。
画像出典：※Instagram @champagnehenriot さんより
参考価格：6,270円
ロゼ・ブリュット
ピノ・ノワール50%、シャルドネ40%、ピノ・ムニエ10%で造られる、アンリオのノン・ヴィンテージ ロゼ・シャンパーニュ。
35%はリザーヴワインを使用し、3年の瓶内熟成を経て出荷されます。
ピノ・ノワールを主体とした、力強く凝縮感のある果実味が魅力です。
画像出典：※Instagram @champagnehenriot さんより
参考価格：7,538円
キュヴェ・エメラ 2006
キュヴェ・エメラは、現在では手に入れることが非常に難しいキュヴェ・デ・アンシャンテルールの後継銘柄。
ギリシャ神話の昼の光の女神である「エメラ」にちなんで名付けられた、メゾンを代表するプレスティージュ・キュヴェ（最高級品）です。
ぶどうの出来がとびきり良かった年にだけ造られ、12年の熟成を経て出荷されます。
2018年のファーストリリースキュヴェ・エメラ2005に続き、2作目としてキュヴェ・エメラ2006が発表されています。
ピノ・ノワール50%、シャルドネ50%で造られる作品です。
画像出典：※Instagram @champagnehenriot さんより
参考価格：24,349円
アンリオのシャンパーニュで上質なおうち時間を愉しもう！
アンリオというメゾンの魅力は、なんといってもそのぶどうの品質の高さ。
最も手頃なブリュット・スーヴェランなどは、同じ価格帯では使われていないような最高品質のぶどうで造られるシャンパーニュとなっており、コストパフォーマンス抜群です。
また、非常に丁寧な造りでどんな贈り物にももちろん自信を持っておすすめできるアンリオのシャンパーニュですが、落ちいついたボトルデザインなので、華やかな場にはより華やかなボトルのシャンパーニュが登場することが多いもの。
アンリオを愉しむ場面は、どちらかと言うと、しっとりと上質なものを愛でるような場面かもしれません。
気の置けない仲間とのゆったりとっしたおうち時間を彩る際に、これほどぴったりなシャンパーニュはあまりないかと思います。
ぜひ、そんな場面にアンリオのシャンパーニュで乾杯されてみてはいかがでしょうか。
すてきなおうち時間となりますように！
いちご大福
「マリアージュ」を研究するレストラン“レヴェランス”で生まれた、いちご大福の中にモエ・エ・シャンドンのジュレを忍ばせたレストランデザートです。
フレンチシェフの遊び心から生まれた、シャンパン好きなら楽しくてたまらなくなるような逸品です。Bon appétit !