ポルトガルで生産されるワインに、ポートワインというものがあります。

もしかしたら皆さんの中には、以前サントリーが販売していた「赤玉ポートワイン」を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれませんが、今回ご紹介するポートワインとは別物です。
※原産地保護のため、現在は「赤玉スイートワイン」として販売されています。

この記事では、ポートワインの基本から楽しみ方、トライしやすいおすすめのポートワインをご紹介いたします。

ポートワインとは?

ポートワインとは、ポルトガル北部のドウロ地方で造られる、酒精強化ワイン(ブランデーを添加したワイン)の一つです。
甘口タイプのワインで、基本的に赤と白があり、赤は輝くルビー色をしていることから、「ポルトガルの宝石」と呼ばれています。

まず初めに、酒精強化ワインとポートワインができるまでを簡単に説明し、続いてポートワインの産地と歴史を見ていきましょう。

ポートワイン=酒精強化ワイン

酒精強化ワインとは、醸造の過程でブランデーを添加することによって、アルコール度数を高めたワインのこと。
ワインの酸化を防ぎ保存性を高める効果があります。

ポートワインの場合、アルコール発酵中にブランデーを添加するので、アルコール発酵が途中で中断
そして、アルコールに分解されなかった糖分が残るので、甘口に仕上がります。

アルコール度数は、ポートワインの場合、一部を除いて19~22度と定められており、通常のワインよりも高いのが特徴。
今回ご紹介するポートワインに加え、シェリー酒やマデイラワインも酒精強化ワインの仲間で、この3つはまとめて、「世界3大酒精強化ワイン」と呼ばれます。

ポートワインの産地

ポートワインの産地は、ポルトガル北部のアルト・ドウロ地区
そこを流れるドウロ川周辺に、約26,000haものブドウ畑が拡がっています。

この地域は、バイショ・コルゴシマ・コルゴドウロ・スペリオールと呼ばれる3つのエリアに大別され、それぞれ下記の特徴があります、

バイショ・コルゴ
バイショ(低い)・コルゴは、3つの中で最も下流に位置し、大西洋側に広がる産地。

シマ・コルゴ
シマ(高い)・コルゴは、最も広いポート生産の中心地で、古くから名声のあるエリア。

ドウロ・スペリオール
ドウロ・スペリオールは、最も東側に位置し、ドウロ川上流に広がる地域。
近年になり、新たに開墾されているポート産地です。

ポートワインの歴史

ポートワインの歴史は、イギリスと共にあったと言っても過言ではありません。

遡ること17世紀末、イギリスとフランスの間で、第二次百年戦争が勃発。
イギリス国内でのフランスワインの需要はとても高いものでしたが、敵国ということもあり、そのフランスワインの輸入が禁止されることに。
困ったイギリスのワイン商は、それに代わるものを探しました。

そこで彼らが目をつけたのが、ポートワイン
酒精強化されたポートワインは保存性が高く、品質を維持したままイギリスまで運ぶことができ重宝しました。
その後イギリスでは、ポートワインの人気が爆発し、現在でも世界最大の消費国と言われています。

ポートワインのブドウ品種

現在は、主に5つのブドウ品種から生産されていますが、使用が認可されているブドウはなんと80種に及びます。
これはドウロ川では伝統的に、20~30のブドウ品種を1つの畑で栽培していた背景があったためです。

主要品種として、下記の5つのブドウが使用されています。

トゥーリガ・ナショナル
小さな果実、厚い果皮と、酸味が特徴。
収量がやや少なく、ドウロ川で最も高品質とされているブドウ品種です。

トゥーリガ・フランカ
トゥーリガ・ナショナルの仲間で、よく似た特徴を持ったブドウ品種。
害虫や病気に対する抵抗力があり、健全なぶどうを収穫できるため収量も多く、ドウロ川で最も広く栽培されています。

ティンタ・ロリス
スペイン原産のテンプラニーリョというブドウ品種の別名。
ポートワインで使用されるブドウ品種の中ではタンニンが控えめで、ブレンドに使用することでエレガントなワインに仕上がります。

ティンタ・バロッカ
成熟が早く、糖度が上がりやすいブドウ品種で、冷涼な気候でも栽培可能なブドウ品種。
南アフリカでも、このブドウ品種からポートスタイルのワインが造られています。

ティント・カン
収量がとても少なく、栽培面積も小さく稀少なブドウ品種。
タンニンや酸のバランスがよく、長熟に向くとされています。

ポートワインの種類

ポートワインというとルビー色をイメージされますが、実はや、近年ではロゼも開発されています。

赤のポートワインは、大きく2種類あり、ルビー・タイプトゥニー・タイプの2つに分類。

それでは、それぞれのタイプを詳しく見ていきましょう。

ホワイト (White)

ホワイト・ポートは、3~5年熟成を経て出荷される、白のスタンダード品。
ホワイト・ポートだけは、最低アルコール度数が16.5度まで認められています。
品種の説明では触れませんでしたが、ホワイト・ポートには、ゴウベイオマルヴァジアヴィオシンホといったブドウ品種が使用されています。

ルビー・タイプ

ルビー・タイプは、通常のワインと同じように、短期間の樽熟成を経て出荷。
さらに下記の3つに分類することができ、それぞれ造り方や熟成年数によって名称が異なります。

ルビー (Ruby)
平均3年程度の樽熟成で出荷される赤のスタンダード品。
熟成期間は特に規定はなく、比較的に短期間で出荷されます。

レイト・ボトルド・ヴィンテージ (Late Bottled Vintage / L.B.V.)
単一収穫年のブドウを使用し、高品質なブドウが収穫された年に製造。
ラベルには、ヴィンテージ(収穫年)が記載されます。
出荷後すぐに飲めるようにするために、4~6年ほどの長めの樽熟成を行ってから瓶詰め。

熟成の過程で発生する澱(ワインの成分が沈殿したもの)を濾過してから瓶詰めされているため、そのままグラスに注いで飲むことができます。

ヴィンテージ (Vintage)
極めて優れた年のブドウだけを用いて造られます。
2~3年の樽熟成を経て瓶詰めされ、ラベルにはヴィンテージ(収穫年)が記載。
この時、澱を取り除いていないので、飲む際にはデキャンタージュと言って、別の容器に移し替える必要があります。
非常に長寿と言われており、20年以上熟成してようやく飲み頃を迎えるものや、100年以上の熟成に耐えられるものもあると言われる最上級品です。

トゥニー・タイプ

こちらのタイプは、長期間の樽熟成を行い、ルビー・タイプと比べると、意図的に酸化熟成させています。
トゥニーとコルヘイタの2つがあり、それぞれ下記のような特徴があります。

トゥニー (Tawny)
トゥニー・ポートは、10~40年にもおよぶ長期間の樽熟成を行い、琥珀色になってから瓶詰されるタイプ。
ラベルには、”トゥニー+10年”といったように、ブレンドされたポートワインの平均熟成年数が表記されます。

コルヘイタ (Colheita)
単一年から造られるトゥニーポートで、通常のワインと同じようにヴィンテージ(収穫年)を表示しています。

ポートワインの愉しみ方

ポートワインは、甘口ながら食前・食後問わず楽しめるワインです。
ここでは、代表的な食べ物とのペアリングや、葉巻と相性をご紹介します。

ホワイト・ポートでしたら6~10℃、ルビーやトゥニー・タイプなら、12~16℃程度の温度がよいでしょう。
熟成年数が長いほど、熟成香の複雑さが感じられますので、やや高めの温度がおすすです。

また、ポートワインはご説明した通りアルコール度数が高く保存性が高いので、冷蔵庫に入れておけば、栓を開けてから1ヶ月程度なら品質に問題なくお楽しみいただけます。

もっとも代表的なペアリングとしては、イギリスで生産される世界3大ブルーチーズの一つ、スティルトンとの組み合わせ。
ブルーチーズ特有のクセ塩気が、ポートワインの甘さをグッと引き立てます。

もちろん、食後のデザートとの相性は言わずもがなです。
特に赤いベリー系を使用したケーキタルトだと、ポートワインのブドウの果実味酸味と相まって、味わいが増幅されます。

熟成したポートワインからは、アーモンドなどのナッツ類ドライフルーツの、少し枯れたニュアンスが感じられますので、葉巻と組み合わせることで共通する香りを愉しむことができます。
レストランで食事を終えた後、バーへ移動して葉巻とポートワインでリラックスするのも、贅沢な時間の過ごし方でしょう。

おすすめのポートワイン6選

ここでは、代表的な生産者を中心に、ご説明した各タイプのポートワインをご紹介いたします。
比較的リーズナブルなものもございますので、トライしやすいかと思います。

英国王室御用達ブランド
Sandeman  White Port
サンデマン ホワイト・ポート

¥1,310 (税込)/750ml 

生産地:ポルトガル / ドウロ

サンデマン社は、1790年にジョージ・サンデマンが創設したポートワインやシェリーの老舗。
200年以上に渡り、高品質なポートワインを造り続けており、イギリス王室御用達のブランドとしても有名です。
膨大な原酒のストックを誇り、安定した品質を高いレベルで維持しています。

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クオリティ重視の家族経営メーカー
Niepoort Ruby Port
ニーポート ルビー・ポート

¥2,800 (税込)/750ml 

生産地:ポルトガル / ドウロ

ニーポートは、1842年創業の歴史あるポートワインメーカー。
生産量を抑えた品質重視のスタイルにこだわり、家族経営を貫いています。
ワインスペクテイターやアドヴォケイト誌など多くのワイン誌で高評価を獲得していながら、非常にコストパフォーマンスのよいポートワインを生み出す優良生産者です。

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三世紀以上の歴史を持つ老舗
Taylor’s Late Bottled Vintage Port 2016
テイラー レイト・ボトルド・ヴィンテージ 2016

¥2,475 (税込)/750ml 

生産地:ポルトガル / ドウロ

テイラーは、ポルトガル最古の家族経営ポートハウスで、3世紀以上の歴史を持ちます。
長い年月をかけて、テイラーは一流のヴィンテージポートの生産者としてだけでなく、樽熟成のトウニーポートの主要生産者としても名声を確立しててきました。
近年では、国王エリザベス二世に献上する英国王室御用達のポートワイン業者に任命された証として、ロイヤルワラントを拝受しています。

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世界が認めるポートワインの代名詞
Graham’s Tawny Port 10 years
グラハム トゥニー 10年

¥4,155 (税込)/750ml 

生産地:ポルトガル / ドウロ

グラハム社は、1820年の創業。
最高品種のぶどうと、優れた技術を誇る同社は、これまでアルト・ドウロで最も豊かな甘味を持つ数々のポートワインを生産してきました。
安定した品質と幅広いラインナップが特徴で、リーズナブルなものから熟成年数が40年に及ぶ貴重なポートワインも取り揃えています。

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通好みのポートワイン
Warre’s Vintage Port 2003
ワレ ヴィンテージ・ポート 2003

¥10,978 (税込)/750ml 

生産地:ポルトガル / ドウロ

ワレ社は、創立から300年以上の歴史を誇り、上記のグラハムと並びビッグネームとして高評価を獲得しています。
もっとも有名なワインジャーナリストの一人、ロバート・パーカーもワレ社を絶賛しており、特に、この2003年のポートワインに対して、92~93点を与えるほど。
通好みのポートワインとして、愛好家の間で楽しまれています。

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いかがでしたでしょうか。

イギリスで古くから楽しまれてきたポートワイン。
深い香りと甘美な味わいをぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。