ロゼ・シャンパン

レストランやパーティーなどで、鮮やかなピンク色をたたえたロゼ・シャンパンがグラスに注がれれば、一気にその場の雰囲気が華やぎますよね。
立ち上る気泡を眺めていれば、気分も高揚し、期待感を高めてくれます。
ご自宅でも、その美しい色調がテーブルに彩を添え、非日常感を演出してくれる名脇役です。

そんな華やかなイメージのロゼ・シャンパンですが、その特徴について知っている方は、あまり多くないのではないでしょうか。
この記事では、ロゼ・シャンパンと普通のシャンパンの違いや独特な製法から、おすすめの商品までご紹介していきます。

ロゼ・シャンパンとは?

ロゼ(Rose)とは、フランス語で「バラ色」を意味し、文字通りシャンパンのを表しています。
パーティーなどのハレの場では、飲む機会も多いかもしれませんが、ロゼ・シャンパンの特徴などには、あまり目が向けられてこなかったように感じます。

そこで、ここではまず、シャンパンの定義からはじめ、ロゼ・シャンパンの特徴や歴史をご説明いたします。

そもそもシャンパンとは?

シャンパンとは、フランスのシャンパーニュ地方で生産されるスパークリングワインのことを指します。
フランスのワイン法で定められたルールがあり、この地域以外で生産されるスパークリングはシャンパンとは名乗れません
その他の決まりを少しあげると、使用できるブドウ品種は7種類と規定され、ほとんどの場合、ピノ・ノワールシャルドネ(ピノ・)ムニエと呼ばれる3種類のブドウから造られます。
そして、これらのブドウから原酒を造り、アッサンブラージュ(=ブレンド)して、シャンパンの原型を製造。
瓶詰めされた後は、シャンパーニュ方式と呼ばれる伝統的な製法を経なければならず、出荷までの瓶内熟成期間も定められています。

※シャンパーニュとは、「Champagne」をフランス語で発音したもの。
この記事では、ワインを指す場合の表記についてシャンパンと統一します。

普通のシャンパンとロゼ・シャンパンの違いと特徴

グラス・ロゼ・シャンパン

普通のシャンパンとロゼ・シャンパンの大きな違いは、まさにその「色」です。
そして、その色の違いを出すために、製造工程が少し異なります。
色の違いを出すには、簡単に説明すると、赤ワインを混ぜ合わせるか黒ブドウ(赤ワインの原料となるブドウ)の色素を抽出して色付けをする方法がります。

結果として、普通のシャンパンに比べ、赤ワインの要素が多くありますので、比較的骨格がしっかりとした味わいとなり、よりベリー系のニュアンスが感じられるのが特徴です。

ロゼ・シャンパンの歴史

これまで、最も古い記録とされていたのは、ヴーヴ・クリコというメゾンが出荷した1775年
ですが、2011年に、1764年にリュイナールが60本の「ウイユ・ド・ペルドリ」と呼ばれるロゼ・シャンパンを出荷したという記録が見つかりました。
ウイユ・ド・ペリドリとは「鳥のヤマウズラの目」のことで、薄くオレンジがかったピンク色を指します。
製造にコストと手間暇がかかるという理由から、多くのメゾンがロゼを本格的に造り始めるのは、20世紀以降となりました。

ロゼ・シャンパンの製法

ワイン圧搾

普通のシャンパンとロゼ・シャンパンの製法の違いについて先ほど簡単に触れましたが、ロゼ・シャンパンを造る方法は下記の3つ。
アッサンブラージュ製法
セニエ方式
直接圧搾法
それぞれに特徴があり、味わいの仕上がりや色調に違いがでてきますので、詳しく見ていきましょう。

赤ワインを混ぜる
「アッサンブラージュ製法」

繰り返しになりますが、アッサンブラージュとは、複数のワインの原酒同士をブレンドすること。
このアッサンブラージュ製法では、原酒を混ぜ合わせたシャンパンの原型の段階で、赤ワインをブレンドし色付けをします。
ワイン法で、通常のワインではこのように混ぜ合わせてロゼを造ることは禁止されていますが、シャンパンのみ許されてます。
軽やかで飲みやすいスタイルのカジュアルなロゼ・シャンパーニュに採用されることが多い製法です。

果皮から色素を抽出
「セニエ方式」

セニエとはフランス語で「血抜き」を意味し、果皮に浸した状態から果汁だけを抽出することから名付けられました。
具体的には、プレスして絞る前の果汁に、潰した黒ブドウを漬け込んで果皮から色素を抽出
適度に色が付いた段階で果汁のみを取り分ける製法です。
とても手間のかかる製法ですが、比較的色調も濃く果実の味わいを深く感じさせるロゼ・シャンパンを生み出します。

穏やかなピンク色
「直接圧搾法」

これは、黒ブドウを収穫後そのまま潰して絞り、その際にわずかに抽出される色素によって色を付ける製法です。
果皮とともに浸して色素を抽出する、上記のセニエ方式よりも淡い色合いのワインとなります。
この製法を採用している造り手はそれほど多くありません。

アッサンブラージュを掘り下げる

3種類のブドウ

より複雑な香りや味わいを求め、アッサンブラージュを用いてワインを造り上げるスタイルは数多くありますが、シャンパンは少し違った背景があります。
ここでは、シャンパンがなぜアッサンブラージュという造り方に至ったのかを見ていきましょう。

アッサンブラージュの理由

霧がかったブドウ畑

シャンパーニュ地方はフランスでのブドウ栽培の最北部といわれ、冷涼でやや不安定な気候が特徴です。
収穫時期の天候不良は、ブドウの成熟度合い収穫量に大きく影響します。

そこで、生産者たちは、収穫時期が少しずつ異なる複数のブドウ品種を栽培することで、不作のリスクを分散させました。
ブレンドされる原酒は、実はその年のものだけとは限らず、リザーヴワインと呼ばれる数年~十数年前のものもあります。
この点が、シャンパンの独自性、他の赤や白ワインとの明確な違いを生み出しています。
ブレンドすることにより、毎年出来上がるシャンパンの質と生産量の両面の安定を図りました。

ちなみに、複数年の原酒が使用されたシャンパンの場合はNV(ノン・ヴィンテージ)、単一年の原酒で造られる場合はVintage(ヴィンテージ)と呼ばれます。
ヴィンテージとは、ブドウの収穫年を指す言葉です。
アッサンブラージュの必要がない、もしくはアッサンブラージュを経ない方が素晴らしく熟成する、と判断された場合にその年のブドウのみを使って造られることが多い「ヴィンテージ」シャンパン。
ラベルにはブドウの収穫年が記載されます。

独自のスタイルを表現

ワイン・バレル

シャンパーニュ地方では、このブレンド(=アッサンブラージュ)という発想は、単に天候不良のリスク回避のためだけではありません。
生産者たちは、異なるブドウ品種や年代の原酒を、独自の比率でブレンドすることで、彼らだけのスタイル(味わい)を表現しようとします。
もっとも有名なシャンパンの一つであるクリュッグは、数百もの品種も年代も異なる原酒から吟味、選定し、その味わいを作り出しています。
このように、この複数年の原酒を混ぜ合わせるアッサンブラージュという行為は、シャンパンにとってはアイデンティティといってもよいかもしれません。

おすすめロゼ・シャンパン10選

ここからは、代表的なものから、こだわりの造り手のロゼ・シャンパンをご紹介してまいります。
ロゼ・シャンパンは、比較的しっかりとした味わいと、溌溂とした果実味が特徴ですので、フレンチやイタリアンにとどまらず、中華やスパイスを使用したオリエンタルなお料理とも相性は抜群です。
食前~食中までしっかりカバーできますので、ご自宅で楽しまれる際も重宝すると思いますよ。

シャンパン最大手が造るスタンダード・ロゼ
Moet & Chandon Rose Imperial NV
モエ・エ・シャンドン  ロゼ・アンペリアル NV

¥8,690 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール / シャルドネ / ピノ・ムニエ

シャンパン最大手のモエ・エ・シャンドン社が造るスタンダードなロゼ・シャンパーニュ。
ピノ・ノワールをメインに、シャルドネ、ピノ・ムニエの3種類のブドウから造られます。
リザーヴワインを全体の20~30%までブレンドし、セラーで21ヵ月間の瓶内熟成を経てからリリースされます。

赤いベリーや花のアロマ、フレッシュな果実味に加え、リザーヴワインによる熟成感のニュアンスが特徴。
食前からからメインのお肉料理まで、シーンを選ばない1本です。

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優良年のみ生産される希少ロゼ
Moet & Chandon Grand Vintage Extra Brut Rose 2012
モエ・エ・シャンドン グラン・ヴィンテージ エクストラ・ブリュット ロゼ 2012

¥11,990 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール(42%) / シャルドネ(35%) / ピノ・ムニエ(23%)

こちらは、ブドウの出来が良かった優良年のみ造られる希少なロゼのシャンパーニュ。
ピノ・ノワールを中心に、シャルドネとピノ・ムニエの3種類のブドウを使用し、5年もの瓶内熟成により生まれる、きめ細かな泡とデリケートな余韻が魅力です。
かなり辛口に仕上げており、瑞々しい果実味とエレガントな酸が見事に調和し、食中に最適な1本です。

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最高品質を追い求める老舗メゾン
Veuve Clicquot Ponsardin Rose Label NV
ヴーヴ・クリコ・ポンサルダン ローズ・ラベル NV

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¥9,240 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール / シャルドネ / ピノ・ムニエ

モエ・エ・シャンドン社に並んで最も有名なヴーヴ・クリコ・ポンサルダン社。
このローズ・ラベルは、スタンダード・キュヴェのイエローラベルのように、広く愛されるロゼを造りたいという信念のもとに造られた1本。
世界に先駆けて、日本で2004年春から発売されたエレガンスと趣を兼ね備えた豊かな味わいが魅力のシャンパーニュです。

約50~60の異なるリザーヴ・ワイン使用しており、ピノ・ノワールを主体に、シャルドネとピノ・ムニエをブレンド。
さらにリザーヴワインを30~45%加えることでワインに深みを与え、約12%の赤ワインを加えることで果実味を豊かにしています。

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世界でもっとも有名なシャンパン
Moet & Chandon Dom Perignon Rose 2006
モエ・エ・シャンドン  ドン・ペリニヨン ロゼ 2006

¥48,290 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール(56%) / シャルドネ(44%)

「最高のワインを造る」という理念のもと、17世紀より歴史を持つメゾン。
優良年に収穫されたブドウのみが使われ、常に最高のヴィンテージだけが、ドン・ペリニヨンであることを許されます。
ピノ・ノワールとシャルドネが、ほぼ半分ずつブレンドされ力強い味わいとシルキーな美しい余韻が特徴です。

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シャンパンの帝王クリュッグ
Krug Rose NV
クリュッグ  ロゼ NV

¥47,520 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール / シャルドネ / ピノ・ムニエ

最高品質と卓越性をもったシャンパンのみを造り続けているメゾン。
このクリュッグ・ロゼはピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエの3種類のブドウと、幅広いヴィンテージのワインをブレンドして造れられる同社の最高峰のシャンパンです。
厳選された多くのリザーヴワインをブレンドし、5年の最低熟成期間により生まれる、繊細な泡と独自の優雅な余韻が印象的なシャンパンを生み出します。

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シャルドネの名手が手掛けるロゼ
Ruinart  Rose NV
ルイナール  ロゼ NV

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¥12,210 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール(55%) / シャルドネ(45%)

世界で初めてのシャンパーニュ・メゾンとして1729年に誕生した歴史ある名門。
このロゼ・シャンパンは、他では見られないシャルドネの比率の高さを誇り、シャルドネの名手と言われるルナールならではの1本です。
シャルドネ由来のエレガントな味わいと、ピノ・ノワールの赤ワインをブレンドすることにより生まれる骨格が絶妙に調和しています。

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英国王室御用達の名門メゾン
Laurent Perrier  Rose NV
ローラン・ペリエ  ロゼ NV

¥16,170 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール(100%)

英国王室御用達の名門シャンパーニュ・メゾン。
非常に手間がかかることから、大手メゾンではあまり採用しないセニエ法で仕立てるロゼ・シャンパーニュです。
丁寧に醸造され最低4年の瓶内熟成を経てからリリースされるこのキュヴェは、メゾンのポリシーである”フレッシュ”、”エレガント”、”バランスのよい味わい”を体現します。

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幻のシャンパン・メゾンが造るロゼ
Henri Giraud  Rose Dame-Jane NV
アンリ・ジロー  ロゼ ダム・ジャンヌ NV

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¥12,100 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール(70%) / シャルドネ(30%)

ルイ13世統治下の1625年より歴史を持ち、ごく一部の愛好家にひっそりと愛されてきた“幻の”シャンパーニュ・メゾン。
テラコッタと呼ばれる陶器製の樽で熟成させた珍しいロゼ・シャンパーニュです。
グラン・クリュ(特級)の樹齢70年の古樹から取れたピノ・ノワールがブレンドされた贅沢な仕上がりとなっています。

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ピノ・ノワール最高の造り手
Egly Ouriet  Brut Rose Grand Cru NV
エグリ・ウーリエ  ブリュット ロゼ グラン・クリュ NV

¥14,960 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール(60%) / シャルドネ(40%)

エグリ・ウーリエは、1930年創業と歴史は古く、ピノ・ノワールで有名なアンボネイ村に本拠地を置きます。
自家栽培ブドウのみで、少量生産を行うレコルタン・マニピュランと呼ばれる作り手の中でも、トップクラスの評価を受ける実力派。
特にピノ・ノワールの品質に定評があり、このロゼは、そのピノ・ノワールを贅沢に使用した1本です。

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シャンパンの次世代を担う造り手
Bereche et Fils Campania Remensis Rose Extra Brut
ベレッシュ・エ・フィス カンパニア・レメンシス ロゼ エクストラ・ブリュット 2016

¥11,000 (税込)/750ml 

生産地:フランス / シャンパーニュ
品種:ピノ・ノワール(60%) / シャルドネ(30%) / ピノ・ムニエ(10%)

1847年に設立されたメゾンで、現在の主は5代目のラファエル・ベレッシュ氏。
1982年生まれという若い当主で、良い伝統は守りつつ、新しい流れも柔軟に取り入れています。
畑では、除草剤や殺虫剤に頼ることなく、また廃棄物も再処理するなどの対応をしていて、環境への配慮を重視しているメゾン。
上質な赤ワインがブレンドされたこのロゼ・シャンパンは、ピノ・ノワール由来の骨格のしっかりとした味わいで、食中酒に最適な1本です。

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これまでのアッサンブラージュを越えて

ここからは、少し余談となりますので、ご興味のある方だけ読み進めていただければと思います。

今まで見てきたこのアッサンブラージュは、瓶詰めされる前に行われます。
では、瓶詰め後に混ぜ合わせることはどうなのでしょうか?

通常、シャンパンに限らず、完成したワインをブレンドするということはしませんし、むしろ一部ではタブー視されています。
生産者が造ったワイン=作品に手を加えることは、彼らへのリスペクトがないと考えられているからです。

少し話は逸れますが、リコルクという言葉をご存じでしょうか。
瓶詰めから数十年を経たワインは、一部が蒸発して目減りし、コルクも劣化しています。
そこで、プロの手によって一度栓を抜き、減った分を補充して、新しいコルクに交換。
これをリコルクと呼びます。
この作業で、補充するワインは同一のワインが理想とされますが、多くの場合は同じ銘柄でも違う年のものが使用されることも。
ある意味、これもブレンドと同じことですね。
実際、ワイン愛好家の中では、同様の理由でリコルクされたワインを敬遠される方が多くいらっしゃいます。

では、瓶詰め後に専門家がアッサンブラージュを行ったらどうでしょうか?
味わいの変化を緻密に予測しながらブレンドを行うことによって、新たなワインへと昇華できるかもしれません。

もしくは、ブレンドされることを前提に造られたワインがあるとしたら、もっと面白いかもしれません。
生産者が、ある段階まで余白を残して造り、その後のブレンドや熟成をプロや消費者自身に委ねるというスタイル。
実際、シャンパンのブレンドに携わっている専門家の中で、こういった試みにトライしてみたいと言っている方がいるのも事実です。

アッサンブラージュという技術が、先人たちが積み上げてきたワインの歴史の結果だとしたら、このような発想は私たちに新たな視点をもたらすでしょう。
シャンパンに限らず、ワインの醸造やその消費という観点において、これまでの常識とされていたことは、大きな転換を迎えるかもしれません。

・・・

いかがでしたでしょうか?
最後は少し脱線しましたが、普通のシャンパンとロゼ・シャンパンの製法や特徴の違いに始まり、シャンパンの本質であるアッサンブラージュ、そしておすすめの商品までをご紹介してまいりました。

製法や造り手によって、さまざまな表情を見せてくれるロゼ・シャンパン。
ワインライフの幅もいっきに広がりますので、お好みのタイプ生産者を見つけて、ぜひレストランやご自宅でお楽しみいただければと思います。