フランスの東部、スイスとの国境に隣接するジュラ地方
ワイン産地としてはマイナーなエリアと思われていますが、銘醸地ブルゴーニュ地方からは約100kmほどの距離
ブルゴーニュの影響がありながらも、ジュラ地方独自のワインを生み出してきました。
この記事では、ジュラ地方で生産される「ヴァン・ジョーヌ」という一風変わったワインをご紹介したいと思います。

ヴァン・ジョーヌとは?

ジュラ地方で、最も有名なワインが、ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)です。
直訳すると「黄色いワイン」
文字通り、濃い黄色みを帯びた白ワインでナッツ類の香りが特徴です。
ワインの中でも、あまり馴染みがないかもしれませんが、味わいだけでなく、その造り方も独特なものですので、さっそくご説明します。

ブドウ品種

ヴァン・ジョーヌで使用されるブドウ品種は、サヴァニャン
ほぼジュラ地方でのみ栽培されている土着品種で、果皮が非常に厚いのが特徴です。
成熟までにとても時間のかかる品種で、12月ごろまで収穫を待つことも。
酸も糖度も高く、長期熟成に向く特性を備えています。

ヴァン・ジョーヌの産地

フランスのワイン法で、ヴァン・ジョーヌの生産が認められているのは、ジュラ地方の中でも下記4つの生産地

シャトー・シャロン
アルボワ ヴァン・ジョーヌ
コート・ド・ジュラ ヴァン・ジョーヌ
ヴァン・ジョーヌ・ド・レトワール

これらヴァン・ジョーヌの産地の中でも、最上と称される銘醸地が、シャトー・シャロン
フランスの5大白ワインの一つに数えられ、品質管理も非常に厳格なことで知られています。
ブドウの出来が悪いとされた1974、1980、1984、2001年は、シャトー・シャロンは生産されませんでした。

ヴァン・ジョーヌの造り方と熟成

ヴァン・ジョーヌを造る際に、完熟したサヴァニャンを使用し、途中までは通常の白ワインと同じ工程で造られます。
前述のとおりサヴァニャンは糖度が高めですが、ほとんどの糖分をアルコール発酵で分解してしまうので、極辛口のワインに。

アルコール発酵後、木樽で熟成させますが、ここからがヴァン・ジョーヌ特有の造り方になります。

通常のワインとは違い、木樽をワインで完全に満たさずに、空気と接触させるスペースを確保
すると、酵母(産膜酵母)の働きにより、ワインの表面には被膜が形成され、ワインは通常よりもゆっくりとした熟成を経ることになります。
この膜は、フルール・デュ・ヴァン(ワインの花)と呼ばれ、アーモンドやナッツクルミなどの香ばしい香りをワインに付与し、ヴァン・ジョーヌの特徴が生まれるのです。

この木樽での熟成は、ワイン法の規定で6年3ヶ月にも及びます。
当然この間、蒸発によって目減りしますが、補充は禁止されており、熟成と共に発生した澱(ワインの成分の沈殿物)を取り除くこともできません。
最終的には、最初の全体量の6割程度の量まで減ってしまうことに。
こうした被膜との長期熟成により、ワインはその名の通り、徐々に深い黄色になり、シェリー紹興酒のような香りへと変化していきます。

ボトルも特徴的で、通常ならば750mlのサイズですが、ヴァン・ジョーヌはクラヴランと呼ばれる620mlの瓶に詰められます。

料理との相性

ここまで見てきた通り、かなり個性的なヴァン・ジョーヌ。
しかし、他のワインと同様、お料理とのペアリングは、大きな楽しみの一つです。
ヴァン・ジョーヌのとの相性を考えるとやはり同郷のもがよいでしょう。

一番お手軽に試すことのができるのが、コンテ・チーズ
フランスで最も多く生産されているチーズで、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
ジュラ地方で生産されており、ナッツなどの香りが特徴で、ヴァン・ジョーヌとの相性もよいです。

また、秋~冬にかけて登場するモン・ドールもおすすめです。
ウォッシュタイプのチーズで、ややクセがありますが、茹でたてのジャガイモと、とろとろに熟成したモン・ドールをあわせるだけで、あっという間にご馳走になりますし、ヴァン・ジョーヌの最高のお供にお供になりますよ。

もしくは、イベリコ豚の生ハムも相性がとてもよいです。
ドングリを食べて育ったイベリコ豚は、ナッティな香りが特徴ですので、共通するフレーバーがお互いを引き立てます。

ジュラ地方の郷土料理では、鶏肉をヴァン・ジョーヌで贅沢に煮込んだ料理コック・オー・ヴァン・ジョーヌもおすすめです。
煮込み料理というとハードルが高そうに聞こえるかもしれませんが、レシピ自体はシンプルですので、ご自宅でもトライしやすいかと思います。

おすすめヴァン・ジョーヌ6選

ここからは、代表的な生産者に始まり、ジュラ地方を代表する生産者、オススメのヴァン・ジョーヌをご紹介いたします。
ご説明した通りヴァン・ジョーヌができるまでに、長い時間がかかるため価格としては、比較的高めのものが多くなります。

フランス国内でほとんどが消費される
Domaine Philippe Vandelle Vin Jaune L’Etoile 2014
ドメーヌ・フィリップ・ヴァンデル ヴァン・ジョーヌ エトワール 2014

¥6910 (税込)/620ml 

生産地:フランス / ジュラ
品種:サヴァニャン

1883年からレトワール村に続く生産者の6代目おフィリップ・ヴァンデルが、シャトー・ド・レトワールから独立し、2001年に自身のドメーヌを設立。
農薬や化学肥料を極力使わない栽培を目指し、収量もできる限り抑えています。

ジュラ地方特有の酸化のニュアンスは控えめで、ミネラル豊かでとてもピュアな味わいが特徴です。

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ジュラ地方最大
Henri Maire Chateau Chalon 2011
アンリ・メール シャトー・シャロン 2011

¥9755 (税込)/620ml 

生産地:フランス / ジュラ
品種:サヴァニャン

1632年に創業のアンリ・メールは、現在自社畑は300ヘクタールを超え、家族経営としてはフランス最大規模を誇ります。
1937年からシャトー・シャロンの製造が始まり、自他ともに認めるのこの地方で最高峰の造り手です。
アンリ・メールの特徴は、貯蔵場所にあります。
湿度のある低温の地下室や高温になる貯蔵所があり、ワインはそれぞれ微妙に違う熟成を経ます。
そして、これらをテースティング、ブレンドすることによりさらに複雑なヴァン・ジョーヌができあがるのです。

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ジュラ地方を代表する生産者
Stephane Tissot Vin Jaune La Mailloche 2012
ステファン・ティソ ヴァン・ジョーヌ ラ・マイオッシュ 2012

¥16800 (税込)/620ml 

生産地:フランス / ジュラ
品種:サヴァニャン

1962年に設立したこのドメーヌは、現在3代目のステファン氏が後を引き継き、運営にあたっています。
海外のワイナリーへ渡ったり、ブルゴーニュでも5年に渡り醸造に携わるなど、幅広い経験があります。

蔵を引き継いだ際、彼が目指したのがビオディナミの導入でした。
もともと彼の父の代まで、化学物質を使用しない農業を行っていましたが、1999年それを大きく進めて、ジュラの大地と気候が生み出すワインを追求し始めました。

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家族で造るシャトー・シャロン
Domaine Berthet Bondet Chateau Chalon 2011
ドメーヌ・ベルテ・ボンデ シャトー・シャロン 2011

¥12540 (税込)/620ml 

生産地:フランス / ジュラ
品種:サヴァニャン

ベルテ・ボンデ夫妻が、1984年にシャトー・シャロンに移り住み、ドメーヌの歴史が始まりました。
シャトー・シャロンの丘陵地から少しずつ畑を買い足していき、現在はラヴィニー村やルヴェルノワ村の周辺の畑を合わせて15haを所有するまでに。

1990年代の半ばから草生栽培を進め、除草剤の使用を徐々に削減。
2010年から有機栽培へ転換を行い、2013年にはアグリキュルチュール・ビオロジックの認証を取得しました。

2013年には現当主ベルテ・ボンデ氏の娘エレーヌ女史もドメーヌに参画。
親子で力を合わせて、精力的にワイン造りを行っています。

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抜群の安定感
Domaine Rolet Pere & Fils Arbois Vine Jaune 2011
ドメーヌ・ロレ ペール エ フィス アルボワ ヴァン・ジョーヌ 2011

¥8338 (税込)/620ml 

生産地:フランス / ジュラ
品種:サヴァニャン

1942年、デジーレ・ロレがアルボワでワイン造りを始め、ドメーヌがスタートしました。
現在は、息子のベルナールとギイが畑の管理と醸造を担当し、収量をできる限り抑えた生産を行っています。

全体を通して、ヴィンテージによらず品質が安定しており、ドメーヌ・ロレの大きな特徴。
価格の割に、評論家たちの評価も高く、とてもコストパフォーマンスのよいワインを生み出し続けています。

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ジュラ地方の奇才
Anne & J.F Ganevat Arbois Vin Jaune 2007
アンヌ エ ジャン フランソワ ガヌヴァ アルボワ ヴァン・ジョーヌ 2007

¥14980 (税込)/620ml 

生産地:フランス / ジュラ
品種:サヴァニャン

2013年、ドメーヌ・ガヌヴァで働くジャンフランソワの妹・アンヌと立ち上げたネゴシアン部門です。
ジュラの土着品種に注目、ビオディナミまたはオーガニックで栽培された葡萄のみを購入するこだわり。
自社畑を含むジュラの葡萄と、他地域の葡萄とのブレンドによって造られるワインは、ドメーヌものに匹敵する品質で、ジャーナリストやワイン雑誌での評価は、年々高まっています。

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いかがでしたでしょうか。

ワインとしては、ややマイナーなヴァン・ジョーヌ
ですが、その特徴的な製法から生まれる味わいは、ワインに興味を持たれた方には、ぜひ試していただきたいワインです。
チーズや生ハムなど、簡単に準備できるおつまみとの相性も抜群ですので、ご自身の好きな生産者を見つけて、ご自宅でお楽しみいただければと思います。