「ソムリエ」と並び、近年注目を集める資格、ワインエキスパート。
ワインに興味を持ち始め、自宅やレストランでも日常的に楽しまれる方なら、もっと知りたい、体系的にワインを学びたいという思いが芽生えると思います。
そんな方にぴったりなのが、このワインエキスパート資格。
ソムリエ資格と同等の難易度とされ、試験突破のハードルは決して低くはなく、非常に広範囲の試験勉強をこなさなければなりません。
ですが、毎年3,000名を超えるワイン愛好家がチャレンジしており、その価値は十分にあります。
「合格」という結果だけではなく、勉強を通して得られる知識、テイスティングの経験は、あなたのワインライフを劇的に向上させてくれるでしょう。
この記事では、ワインエキスパート資格の成り立ちから、試験内容や受験対策まで詳しく解説していきます。
ワインエキスパートはどんな資格?
まず初めに、ワインエキスパート資格が誕生した背景から、受験を見据えた試験のスケジュールやかかる費用までを詳しく解説していきます。
歴史
ワインエキスパートとは、日本ソムリエ協会(J.S.A.)が、1996年からスタートしたワイン愛好家向けの資格。
ソムリエ資格は、飲食従事者のプロを対象として作られましたが、アマチュア向け、愛好家向け資格の創設を望む声から生まれました。
ソムリエ資格は受験の際に3年の実務経験(日本ソムリエ協会正会員の場合は2年)に加え、現職であることが必要ですが、ワインエキスパートの場合、満20歳以上であれば、誰でも受験することができます。
現在では、ワインエキスパート資格保有者は累計18,500名(2021年1月時点)に達し、認知度も非常に高くなっています。
試験の概要
ワインエキスパートの試験は、第一次試験(筆記試験)と第二次試験(テイスティング実技)の2部構成。
一次試験をパスした受験生のみ、二次試験に進むことができます。
※ソムリエ資格の場合、さらにデキャンタージュと呼ばれる、ワインを抜栓し別のガラス容器に移し替える三次試験(実技審査)が加わります。
受験の申し込みは、毎年3月上旬~7月中旬ごろまで。
受験と同時に日本ソムリエ協会へ入会する場合は、入会金(10,000円)が半額となり、受験料も会員価格で申し込みが可能です。
例年、7月下旬~8月下旬ごろまでに一次試験が開催され、任意で2回まで受験可能(受験料が異なる)。
全国47都道府県の約250の会場で開催され、申し込み時に会場と日時をオンラインで予約します。
ワインエキスパート | 税込金額 | ||
正会員 / 賛助会員 | 一般 | ||
一次試験 | 1回受験 | 20,380円 | 29,600円 |
2回受験 | 25,220円 | 34,440円 | |
二次試験のみ | 7,300円 | 14,210円 |
入会金 + 受験料 | ||||||
ワインエキスパート | 3月入会 | 4月入会 | 5月入会 | 6月入会 | 7月入会 | |
一次試験 | 1回受験 | 37,880円 | 36,630円 | 35,380円 | 34,130円 | 32,880円 |
2回受験 | 42,720円 | 41,470円 | 40,220円 | 38,970円 | 37,720円 | |
二次試験のみ | 24,800円 | 23,550円 | 22,300円 | 21,050円 | 19,800円 |
二次試験は10月中旬ごろに行われ、試験会場は下記の16都市で開催されます。
二次試験に不合格の場合、翌5年間のうち3回まで、一次試験免除で受験が可能です。
北海道・東北地方 | 関東・中部地方 | 近畿地方 | 中国・四国地方 | 九州・沖縄地方 |
札幌 盛岡 仙台 |
東京 金沢 長野 名古屋 |
大阪 京都 神戸 |
岡山 広島 高松 |
福岡 鹿児島 那覇 |
それでは、ワインエキスパートの試験内容は、いったいどのようなものなのか?
次の章で、実際に見ていきましょう。
どんな試験内容?難易度は?
ご説明した通り、試験は筆記の一次試験とテイスティングの二次試験。
それぞれどのような内容で行われるのか、最終的な合格率もあわせて詳しく見ていきましょう。
一次試験
画像出典:※Instagram @academieduvintokyo さんより
現在は、コンピューターを使用したCBT方式の試験で、選択肢から正解を選ぶ択一方式。
試験時間70分で平均120問に回答しなければならない、時間的に非常にタイトな内容です。
合否はその場で判明します。
※2回受験で申し込み、1回目で合格した場合でも、受験料の差額は返金されません。
筆記試験は、受験申込者全員に送付される「日本ソムリエ協会教本」の内容から出題され、フランスをはじめとしたヨーロッパの国々中心に、世界のワインの知識を広く浅く問われます。
出題内容は、ブドウ栽培や醸造、気候の特徴に始まり、世界のワイン法など、近年はかなり踏み込んだ問題も見受けられ、過去問や問題集を中心に試験対策を行わなければ、一次試験突破は厳しいでしょう。
二次試験
画像出典:※Instagram @lecoleduvin_official さんより
二次試験のテイスティングは、銘柄がわからないブラインドの状態で行われます。
スティルワイン(非発泡性ワイン)4種類、スティルワイン以外のアルコール飲料1種類が出題され、50分でそれらの特徴や素性を回答します。
スティルワインは、外観、香り、味わいに関して、語群から適切な表現を選択し、コメントを完成させます。
また、品種や収穫年、生産国についても選択肢から回答しなければなりません。
スティルワイン以外のアルコール飲料については、選択肢から銘柄を選ぶだけですが、こちらも専門的に学習していなければ正解にたどり着けないものです。
難易度は?
ワインエキスパート | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
合格率 | 38.2% | 33.1% | 32.8% | 44.2% | 43.3% | |
合格者数(女性人数) | 1,238 (656) | 1,051 (562) | 1,054 (546) | 1,437 (719) | 1,390 (705) | |
受験者数(女性人数) | 3,238 (1,637) | 3,174 (1,552) | 3,214 (1,535) | 3,249 (1,575) | 3,213 (1,525) |
直近5年間では、上記のように受験者数や合格率の推移が推移しています。
合格率は、およそ3~4人に1人の割合で、難易度はやはり高めです。
これから本格的にワインの勉強を始められる場合は、最低でも1年の準備期間を設けた方がよいでしょう。
資格取得のメリットは?
試験の範囲も広く、受験準備には膨大な時間がかかります。
大変な思いをするなら、事前に資格取得のメリットも確認しておきたいのではないでしょうか。
ここでは、資格取得の利点を2つご紹介いたします。
ソムリエと同じ知識レベル
ご説明した通り、ワインエキスパートの難易度はソムリエとほぼ同等です。
なので、試験に合格することは、ワインのプロであるソムリエと同じレベルの知識とテイスティング能力を身につけているということです。
日常生活でワインを楽しむのであれば、専門的な知識がなくても十分に思われるかもしれません。
ですが、ある一定以上の知識、テイスティング能力があれば、ワインに接した時に感じ取れる情報量が圧倒的に違います。
レストランやワインショップでソムリエの方と話す時間が、とても有意義なものとなるでしょう。
ワイン検定の講師ができる
ワインエキスパートは愛好家向けの資格とご説明しましたが、ソムリエと同じように活躍できる場面があります。
それは、「ワイン検定」の認定講師です。
ワイン検定とは、ソムリエ協会が認定するワイン初心者向けの資格。
協会が開催する、ワイン検定認定講師セミナーを受講することで、自分で会場を用意し、事前講習や認定試験を実施することができます。
また、趣味が高じてワイン業界へ転職する方や、ワイン販売のパートで働き始める方もいらしゃるようで、愛好家向けといえども、プロと同等の力を証明する価値ある資格です。
受験対策は?独学 or スクール?
まったくの独学でワインエキスパートの試験を突破される方も、もちろんいらっしゃいます。
ですが、試験範囲は前述の「日本ソムリエ協会教本」。
これは800ページを超える参考書で、市販の問題集などを併用して勉強を進めることは可能ですが、とてもつらい道のりとなり、時間も非常にかかります。
そこで、おすすなのが、受験対策に特化したワインスクールに通うこと。
試験の傾向や出題ポイントを押さえたテキスト、授業をうまく活用すれば、とても効率的に試験突破を目指せます。
こちらでは、日本を代表するワインスクール、「アカデミー・デュ・ヴァン」と「レコール・デュ・ヴァン」をご紹介。
30年以上の歴史を誇る
アカデミー・デュ・ヴァン
画像出典:※Instagram @academieduvintokyo さんより
フランスはパリ発祥のワインスクール、アカデミー・デュ・ヴァン。
国内で30年以上の歴史を誇る、国内最大手のスクールです。
ソムリエやワインエキスパートの資格対策講座に加え、研究科と呼ばれるさらに踏み込んだクラスも多数用意されており、知的欲求を満たしてくれる充実の内容です。
日本のトップソムリエをはじめ、ワイン業界の第一人者と呼ばれる講師から学べる環境も魅力の一つ。
無料体験授業も多く開催されているので、気になる方はぜひ参加されてはいかがでしょうか。
高い合格率が魅力
レコール・デュ・ヴァン
画像出典:※Instagram @lecoleduvin_official さんより
アカデミー・デュ・ヴァンと並び、実績、知名度ともに抜群のレコール・デュ・ヴァン。
資格試験の合格率の高さに定評がありますが、趣味・教養のコースも充実しており、知識を深めながら楽しく学べる環境が魅力。
定期的なクラス会やワイン会も開催されており、ワインを通した出会いが豊富で、より豊かなワインライフのきっかけになる最適なスクールです。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
ワインエキスパート資格の基本に始まり、試験内容や試験対策におすすめのワインスクールまで見てまいりました。
愛好家向けと言っても、内容はソムリエ資格と同じ難易度。
資格取得の道のりは、決して平たんではありませんが、合格の先に広がるのは、今までとは違ったワインの景色です。
試験に少しでも興味を持たれている方は、ぜひ一歩を踏み出してみてください。