画像出典:※Instagram @wsetglobal ​​さんより

ワインの資格と聞いて、まず思い浮かべるのは「ソムリエ」ではないでしょうか。
ワインに興味を持ち始めた方や、資格取得を考えている方なら、ソムリエのほかに、ワインエキスパートワインコーディネーターなどのワイン資格を聞いたことがあるかと思います。

こうした数あるワイン資格の中でもこの数年、日本で注目を集め始めているのが、「WSET」が認定するワイン資格。
簡単に説明すると、ソムリエ資格は飲食従事者を対象としているのに対し、WSETの資格は酒類(ワイン)の流通業者をターゲットとしています。
※日本では、多くの場合「ダブリュセット」と読まれますが、正しくは「ダブリュー・エス・イー・ティー」と発音します。

この記事では、まずWSETの概要について触れ、ソムリエとの違いや資格取得のメリット、そして試験内容資格取得のためのワインスクールまで詳しく解説いたします。

この記事は、ソムリエが執筆・監修を行っています。(最終更新日:2022/02/14)

【関心の高まる国際資格】
WSETとは?

画像出典:※Instagram @wsetglobal ​​さんより

WSETとは、Wine & Spirit Education Trust(ワインとスピリッツの教育企業合同)の略称で、イギリスのロンドンに本部を置く世界最大のワイン教育機関です。

ワインをはじめとする酒類の流通業者の教育を目的として、イギリスのワイン商組合、ヴィントナーズ・カンパニー(Vintners Company)によって1969年に創立されました。
1977年以降は、世界中のワイン教育機関と提携して講座と試験の運営を始め、現在では世界70ヶ国15以上の言語で展開され、認定校の数は800を越えます。

WSETが開催する試験の年間受験者数は約95,000人、資格認定者数は累計50万人を超えるまでになりました。
世界的な認知度から、酒類流通業者だけではなく、ソムリエをはじめとした飲食従事者ワイン愛好家からも注目を集める資格です。

【WSETのメリット】
ソムリエやワインエキスパートとはどう違う?

画像出典:※Instagram @wsetglobal ​​さんより

WSETの資格と日本ソムリエ協会(J.S.A.)のソムリエ資格との大きな違いは、前述の通りもともとの受験者の対象が異なる点です。

前者は、酒類流通業者の教育が目的で始まったのに対し、後者は、日本でのワインの普及と食文化の向上を目指して創設された背景があります。
※日本ソムリエ協会は、1996年に愛好家向けに「ワインエキスパート」という資格を作り、難易度はソムリエと同等です。

試験で問われる傾向も異なっており、WSETで重視されるのは、筆記もテイスティングも論理性
記述式試験では、単に知識を問うだけでなく、その知識を使って「なぜそうなるのか?」の説明が求められます。

また、ソムリエやワインエキスパートは独学でも取得できますが、WSETの場合、認定校で指定の講座を受講しなければ、受験できない仕組みになっています。
現在、日本での認定校は下記の3校です。

キャプラン ワインアカデミー
アカデミー・デュ・ヴァン
わだえみのワイン塾

WSET資格取得のメリット

画像出典:※Instagram @wsetglobal ​​さんより

日本国内での知名度や認知度で言えば、ソムリエやワインエキスパートの方が圧倒的に高いですが、世界的に見るとWSETの方が文字通りグローバルスタンダードと言えます。
上述の通り世界70ヶ国で展開されているWSETは、ワインの流通業者に加え、食従事者やワインジャーナリストにとって、自身のレベルを示す非常に重要な資格とされているのです。

もしワイン業界に従事し、海外と直接やり取りするポジションやバイヤーなどの専門職を目指しているのであれば、WSETの資格は非常に大きなアピールポイントとなります。
また、熱量の高いワイン愛好家にとっても、資格取得を通して得られるのは知識量だけでなく、ワインを論理的に分析・評価できる力で、これまでとは違った視点でワインと接することが可能です。

いずれにせよ、WSETの資格を取得することは、ワイン業界のグローバルスタンダードを習得したということですので、プロ・アマ問わず非常に有益なバックグラウンドとなることは間違いありません。

【レベル別に紹介】
具体的にどんな講座・試験?

画像出典:※Instagram @wsetglobal ​​さんより

WSETの講座、試験のレベルは4段階(Level 1~4)に分かれており、数字が大きくなるほど難しくなります。
難易度で言うと、Level 3に相当するのが、ソムリエやワインエキスパートになります。

前述の通りWSETの試験は、各レベルに該当する講座を受講し、修了後に認定校が定める試験日に受験することになります。
Level 1~3までは、どの段階からでも受講・受験可能ですが、Level 4 Diplomaに関しては、Level 3に合格していることが必須
また、日本語もしくは英語で受験が可能(Level 4は英語のみ)です。

それではさっそく、どのような講座、試験内容なのかを見ていきましょう。

【はじめてワインに触れる方に】
WSET Level 1

ワイン初学者向けの講座、試験。
レストランやワインショップなどで、これからワインに携わっていく方にもおすすめです。
主要なワインやブドウ品種の特徴、テイスティングの基礎を学び、ワインのサービスや料理との組み合わせの提案もできるようになることを目指します。

<試験内容>
4択マークシート式 30問(45分)

言語:日本語 or 英語
合格ライン:70%以上
受講時間:6時間
学習時間(目安):約6時間

【一歩進んだ知識で中級者へ】
WSET Level 2

Level 1からややレベルが上がり、知識テイスティングの両面で中級を目指す講座、資格。
ワイン産地の気候と土壌、ブドウ栽培や醸造を理解し、これらの要素がワインのスタイルにどのような影響を与えるのかを学びます。

また、世界の主要産地に始まり、スパークリングワインや甘口ワイン、酒精強化ワインなどの製法、フードペアリングまで包括的な知識の習得が求められるレベルです。

<試験内容>
4択マークシート式 50問(60分)

言語:日本語 or 英語
合格ライン:55%以上
受講時間:16時間
学習時間(目安):約28時間(講座含む)

【上級者・プロへの関門】
WSET Level 3

ワイン業界従事者ワインを突き詰めたい愛好家向けの講座、試験。

ワイン生産における重要な要素(産地、ブドウ栽培、ワイン醸造、熟成、瓶詰め)を学び、これらが、世界のスティルワイン、スパークリングワイン、酒精強化ワインにどのような影響を与えるかの理解を深めます。
そして、ワインのスタイルや品質を評価するうえで、習得した知識をいかに活用するかを身につけるのが目標です。

試験内容は、下記2つのユニットに分かれており、両方合格した時点で、資格認定されます。
片方だけ不合格の場合は、そのユニットのみの再受験が可能です。

<試験内容>
Unit 1:4択マークシート式 50問+記述式試験(計120分)
Unit 2:2種類のブラインドテイスティング (30分)

言語:日本語 or 英語
合格ライン:各ユニット55%以上
受講時間:30時間
学習時間(目安):約84時間(講座含む)

【ワインを極めたい専門家向け】
WSET Level 4 Diploma

ワインやスピリッツに精通しているプロフェショナル向けで、WSETの中でも最難関の資格。
資格取得者は、世界で10,000人、日本国内ではわずか59人(2020年1月時点)です。
受験に際しては、Level 3の資格取得が必須となります。

※日本で受験できるのは、キャプラン ワインアカデミーのみ

下記6つのユニットに分かれており、学習、試験はそれぞれユニットごとにわかれて行われます。
全6ユニットに合格した時点で資格認定。

<試験内容>
D1: Wine Production
ブドウ栽培、ワイン醸造に関する記述式試験(90分)。
※すべての受験生は、最初にこの試験を受験することが義務づけられています。

D2: Wine Business
流通やマーケティングなど、ワインビジネスに関する記述式試験(60分)。

D3: Wines of the World
2日間にわたって実施される世界のスティルワインの記述式試験とテイスティング試験。
栽培や醸造、ワイン法などが、ワインのスタイルや品質、価格に及ぼす影響を考察します。

・Day 1 “Theory”:120分の記述式試験+80分の記述式試験
・Day 2 “Tasting”:6種類のブラインドテイスティング試験(90分)を同日に2回実施

D4: Sparkling Wines
スパークリングワイン3種類のブラインドテイスティング+記述式試験(計90分)。

D5: Fortified Wines
酒精強化ワイン3種類のブラインドテイスティング+記述式試験(計90分)。

D6: Research Assignment
3000字のレポート提出形式の試験。
年に2回(1月と7月)試験があり、各テーマは毎年8月1日に発表されます。

言語:英語のみ
合格ライン:各ユニット55%以上
受講時間:116時間
学習時間(目安):約500時間(講座含む)

【世界的な日本酒人気に対応】
WSET SAKE|日本酒資格もある

画像出典:※Instagram @wsetglobal ​​さんより

WSETでは、ワインのほかにSake(日本酒)やスピリッツ(ウィスキーやウォッカなどの蒸留酒)の講座、試験も開催しています。
ここでは、私たちにも馴染み深い日本酒の講座、試験をご紹介します。
海外から見た日本酒の味わいや特徴を学ぶことで、自国で育まれた日本酒を新たな視点で捉えることができるでしょう。

開講されているのは、Level 1Level 3
現在は中間のLevel 2はなく、はじめLevel 3から講座、試験がスタートし、その後入門編としてLevel 1が開講されたためです。

【改めて知る日本酒】
WSET SAKE Level 1

日本酒に興味のある方や、仕事でこれから日本酒に関わる方のための初心者向けの講座、試験。
日本酒の主要なスタイルを学び、風味香りに影響を与える要素について理解を深めることを目指します。

<試験内容>
4択マークシート式 30問(45分)

言語:日本語 or 英語
合格ライン:70%以上
受講時間:6時間
学習時間(目安):約6時間

【より深い理解で上級者へ】
WSET SAKE Level 3

日本酒の知識、テイスティング能力が十分にあるプロ向けの講座、試験。
日本酒の主要成分醸造技術がもたらすスタイルの違いなどを、論理的に説明できるようになることを目指します。

試験内容は、下記2ユニットに分かれており、両方合格した時点で資格認定されます。
片方だけ不合格の場合は、そのユニットのみの再受験が可能です。

<試験内容>
・Unit 1:4択マークシート式 50問+記述式試験(計95分)
・Unit 2:2種類のブラインドテイスティング (計30分)

言語:英語のみ
合格ライン:各ユニット55%以上
受講時間:16時間
学習時間(目安):約42時間(講座含む)

【安心と信頼の実績】
受験を考えているならこの2校

現在、日本でのWSET認定校は、上記でご説明した3校。
もし受験を考えているなら、「キャプラン ワインアカデミー」「アカデミー・デュ・ヴァン」がおすすめです。
過去の実績や蓄積されたノウハウに加え、振替受講などのフォローアップ体制も非常に整っています。

こちらでは、各スクールが開催する資格取得のための対策講座とその費用をご紹介。
その他オンライン講座なども用意されているので、さらに詳しく知りたい方は、公式ページへのリンクも合わせてご参照ください。

【日本最大の認定校】
キャプラン ワインアカデミー

画像出典:※Instagram @sarasa_suzuki ​​さんより

JAL客室乗務員が教える「空とぶワイン教室」として1995年に開校した、キャプラン ワインアカデミー
2000年にWSETと提携し、日本における認定試験の実施数、資格取得者数ともにトップを誇る、日本最大のWSET認定校であり、日本で唯一Level 4 Diplomaの試験を実施しているスクールです。

また、講師陣の多くがLevel 4 Diploma資格を取得しており、WSETの試験に精通した彼らの授業を受けられるが最大の魅力と言えます。

※講座を初めて受講される方は、入会金5,500円(税込)が別途必要となります。

【WSET Level 1~4】
・WSET Level 1 <ビギナーコース>
1 Dayクラス(7時間):31,900円(税込)

・WSET Level 2 <べーシックコース>
全9回(各回2時間 / 6ヶ月):89,100円(税込)

・WSET Level 3 <アドバンスコース>
全17回(各回2時間 / 6ヶ月):177,650円(税込)

・WSET Level 4 Diploma in Wines Online Course
ディプロマ受験に際し、約2年間に及ぶこのオンライン講座の受講が必須。
また、この講座には、全ての受験生が最初に受験が義務付けられているD1の試験に加え、ディプロマ試験のガイダンスにあたる、試験準備対策や試飲を含めた2日間のTutorial Programmeが設定されています。
※D1の結果が合格、不合格に係わらず、その後は他のUNITを受験することができます。

・登録料:55,000円(税込)
※3年間有効(3年ごとに再登録料24,200円(税込)がかかります。)
※登録料にはDiploma Study Materials(テキスト代)も含まれます。

・オンライン受講料(2年間):264,000円(税込)
・D1受験料:23,650円(税込)
・Tutorial Programme受講料(ガイダンステイスティング):66,000円(税込)

その他に、D2~D6までの受験料が別途必要となります。

各ユニット受験料
D1:23,650円(税込)
D2:23,650円(税込)
D3:89,650円(税込)
※再受験(Theoryのみ):34,100円(税込)
D4、D5:各30,250円(税込)
D6:26,950円(税込)

【WSET SAKE Level 1 / 3】
・WSET SAKE Level 1 <ビギナーコース>
1 Dayクラス(7時間):31,900円(税込)

・WSET SAKE Level 3 <Advanced Course>
全9回(各回2時間15分 / 6ヶ月):77,220円(税込)

さらに詳しく知りたい方はこちらから

【30年以上の歴史を持つ】
アカデミー・デュ・ヴァン

画像出典:※Instagram @academieduvintokyo ​​さんより

パリ発祥で、国内で30年以上の歴史を持つワインスクール、アカデミー・デュ・ヴァン
開校以来、アジア随一のワイン教育機関としてその役割を担ってきました。

アカデミー・デュ・ヴァンで受講できるのは、Level 2Level 3の2コース。
ソムリエ資格をはじめ、長年にわたって蓄積された試験対策のノウハウが活かされています。

※はじめてお申し込みの場合は、登録料として5,500円(税込)、翌年以降は、年間更新料が2,200円(税込)が別途必要となります。

・WSET®Level 2 Award in Wines~ラベルを読み解く(日本語)
全9回(各回2時間 / 3ヶ月):85,800円(税込)

・WSET®Level 3 Award in Wines~スタイルと品質をひも解く~(日本語)
全16回(各回2時間15分 / 4.5ヶ月):152,900円(税込)

さらに詳しく知りたい方はこちらから

【国際資格で広がる視野】
新たな視点でワインを理解

いかがでしたでしょうか。

この記事では、WSETの成り立ちやその試験内容、受験する際のおすすめのワインスクールまでご紹介してまいりました。
ソムリエやワインエキスパートも十分に価値のある資格ですが、国際資格であるWSETのレベル別資格にチャレンジすることで、より広い視野でワインを理解できるきっかけになると思います。

ワインを突き詰めたい方にはぴったりの資格だと思いますので、ぜひトライしてみてください。