みなさんは「テイスティング」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
グラスに入ったお酒の香りを嗅いだり、味わってみたりする光景が浮かぶ方が多いかもしれません。
言葉の意味としてのテイスティングとは、下記のことを指します。
「ワインやウィスキー、日本酒などの味を鑑定すること」
「試飲や試食といった、飲食物の味聞きをすること」
この記事では、ワインにおける「テイスティング」にフォーカスし、「分析」のためのテイスティングと、「レストラン」でのテイスティングを詳しく解説いたします。
2種類あるワインのテイスティング
ワインにおけるテイスティングには、「ワインの味わいや香りを評価する」ためのものと、「レストランでの状態確認」のためのホストテイスティングと呼ばれるものの2種類があります。
ワインを評価するためのテイスティング
画像出典:※Instagram @societyofwineeducators さんより
1つ目は、純粋にワインを分析するためのテイスティングです。
ワイン雑誌などで見られる、香りや味わいについてのコメントが、これにあたります。
色合いや香り、味わいを客観的に捉え、第三者にも伝わるように表現することを目的とします。
レストランでのホストテイスティング
画像出典:※Instagram @vin_amour さんより
ホストテイスティングとは、レストランで注文したワインの銘柄と状態を、ホストが確認することを指します。
レストランでは、お客様を「ホスト(招待する側)」と「ゲスト(招待される側)」に分けて考えます。
中世ヨーロッパでは、客人に対して毒がないことを示す「毒見」として行われていましが、現代では、ワインの状態確認として行われています。
ちなみに、味わいがイメージと違ったり、好みに合わなかったとしても、ワインに問題がなければ交換はできませんので、ご注意ください。
ワインを評価するためのテイスティング3つのポイント
テイスティングにおけるポイントは3つ。
「外観」、「香り」、そして「味わい」です。
これらの要素を押さえることで、ブドウ品種や生産された地域、造られた年代など、ワインの素性や特性を正しく把握することができ、よりワインを楽しむことができますので、1つずつポイントを見ていきましょう。
外観
画像出典:※Instagram @academieduvintokyo さんより
外観で見るべきポイントは、ずばり「色調」です。
色から得られるワインの情報量は多く、まず赤、白、ロゼといったタイプ分けができます。
また、色の濃淡で、ブドウ品種や産地、熟成度合いなどの類推が可能に。
そして、ワインがどれくらい澄んでいるか(清澄度=せいちょうど)も重要で、澄んでいるものほど高品質なワインとされます。
香り
画像出典:※Instagram @academieduvintokyo さんより
ワインの香りには3つの種類があります。
グラスに注いだ時に立ち上る香りを第一アロマと呼び、ブドウ由来の、柑橘やベリー系といった果実の香りを指します。
続いては、第二アロマ。
ワインか造られる過程(発酵や醸造)に由来する香りで、例えば、ボジョレー・ヌーヴォーに感じられるキャンディーのような甘い香りです。
最後は第三アロマで、ブーケとも呼ばれます。
ワインが、熟成を経ることによって獲得する香りです。
具体的には、キノコや腐葉土といった土っぽい湿ったものや、熟成がさらに進んだ場合には、ドライフルーツ、タバコの葉などのやや乾燥したものへと移り変わっていきます。
味わい
最後に味わいですが、注目するポイントは、「果実味」、「酸味」、「渋み」、「アルコール」の4つ。
高品質なワインほど、上記4つのバランスが優れており、長期熟成にも向くとされています。
一般的に、豊かな果実味やアルコール感は、優良ヴィンテージや温かい地域のワイン、鋭い酸味は冷涼な地域のワインを示すとされており、味わいからワインの素性を知るヒントが得られます。
ホストテイスティングの作法
レストランでワインを注文すると、ホストテイスティングと呼ばれるワインの状態確認を、ソムリエから求められることがあります。
慣れていないと、デートや接待などの場面では、非常に緊張するのではないでしょうか。
ですが、これからご説明する「銘柄」→「外観」→「香り」→「味わい」の確認ステップを踏めば、誰でも正しく行うことができますので、心配はご無用です。
さっそく見ていきましょう。
ワインがオーダーした銘柄かチェック
ソムリエが、注文したワインのラベルを見せながらプレゼンテーションしてくれるので、銘柄とヴィンテージ(収穫年)を確認します。
問題がなければ、ソムリエがワインを抜栓し、あなたのグラスに少量注いでくれます。
外観をチェック
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ホストテイスティングにおける外観の確認は、ワインに異物が混入していないか、濁りがないかをチェックするためのものです。
赤ワインの場合はグラスを45度ほど傾け、ワインの淵(グラスとの境目)を、白ワインの場合は、グラスを傾けずに真横から見ます。
白いテーブルクロスなどを背景にすると、色調がはっきりと確認出来て便利です。
香りのチェック
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色調に問題がなければ、続いて香りのチェックに進み、異臭がないかを確認します。
具体的には、ブショネと呼ばれる、コルクの欠陥に由来するカビのような香りや、劣化によるヴィネガーのような酸っぱい香りです。
まず、グラスに鼻を近づけてそのままの香りを嗅ぎ、続いてワインと空気を触れさせるために、2~3回グラスを軽く回します(=スワリング)。
空気と触れることによって、香りがとりやすくなり、味わいにも変化が生じます。
この際、右利きの場合は反時計回り、左利きの場合は時計回りに回しましょう。
うまくスワリングできるか不安な場合は、テーブルに置いたまま、グラスの脚を持って回しても問題ありません。
味わいのチェック
最後に味わいの確認です。
ワインを少量口に含んだら、舌の上で少し転がします。
異常な酸味や渋味がなければ、そのまま飲み込み、「大丈夫です」や「お願いします」とソムリエに伝えます。
もしくは、ソムリエに向かって軽く頷くだけでも問題ありません。
この際、ワインの色調や味わいについて、コメントする必要はありませんし、ホストテイスティングそのものをスキップして、ソムリエにお任せしてしまってもまったく問題ありません。
接待など、時間的な制約がある場合は、状況に応じて臨機応変に対応しましょう。
画像出典:※Instagram @societyofwineeducators さんより
また、デキャンタージュや温度の調整についても、このタイミングでソムリエと相談するとよいでしょう。
※デキャンタージュとは?
デキャンタージュとは、熟成の過程で発生する沈殿物である澱(おり)とワインを分離させるために、別のガラス容器に移し替えること。
また、比較的若いワインを空気に触れさせ、香りを開かせるために行う場合もあります。
好みに合わなくても交換はできない
上記ステップの中で、ワインに異常や欠陥がある場合は交換可能ですが、香りや味わいが好みでなかった場合は、残念ながら交換できません。
ご説明した通り、ホストテイスティングとは、ワインが健全であるかどうかの確認だからです。
オーダーの際には、ゲストや自分の好み、苦手なタイプを、ソムリエにできるだけ具体的に伝えましょう。
また、ワインの表現方法を少し身につけるだけで、好みのワインを見つけやすくなり、失敗もぐんと減ります。
簡単なワイン入門書で十分なので、ご興味のある方は、一度読まれることをお勧めいたします。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
ワインにおける2種類のテイスティングを見てまいりました。
特に、ホストテイスティングについては、多くの方が心理的なハードルを感じていたのではないかと思います。
ですが、記事内でご説明した通り、テイスティングにおける3つのポイントと、正しい流れを押さえていれば、問題なくクリアできるでしょう。
レストランでも気後れすることなく、存分にワインとお食事をお楽しみください。